1073のプリアンプ部分をモジュール化した1073LBは、さまざまな現場で活用されている。ここでは、1073LBを愛用するエンジニア/クリエイターの谷川充博、a2c(MintJam)、toku(GARNiDELiA)、染野拓にアンケートを実施。プロがこぞって実戦に導入する理由を紐解いていこう。
谷川充博が語るAMS NEVE1073の魅力
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コンディションを気にせず現場で安心して使える
Q. 1073LBを導入したきっかけ
NEVE系のマイクプリが欲しいと思っていて、複数台を持ち運ぶことも多いので、コンパクトな500シリーズの1073LBを購入しました。
Q. 使用するパートとセッティング
ドラム(キック、スネア、タム)やボーカルなど、ほとんどのパートで使っています。マイクプリを選ぶとき、まず、1073LBでやってみて決めるという感じで、今、私の中では、1073LBが基準になっています。マイクプリなのでセッティングはシンプルですが、ゲイン・ノブ(5dBステップ)のほか、トリム・コントロールが付いているので、レベルの調整がやりやすいです。
Q. AMS NEVE製品の魅力
太いところと、倍音が豊かなのにうるさくならないところが気に入っています。ビンテージのものと違うとは思いますが、十分、NEVEらしさを感じます。現行機種ということで、コンディションなどを気にせず、現場で安心して使えるのも魅力です。
a2c(MintJam)が語るAMS NEVE1073の魅力
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音像が大きく説得力がある音になる
Q. 1073LBを導入したきっかけ
約10年前、レコーディングのワーク・フローにマイク以外のマテリアルの選択肢を増やすためにAPI 500シリーズのマイクプリを導入しようと思い立ち、定番機種からそろえていこうと考えて1073LBを購入しました。
Q. 使用するパートとセッティング
主にアコギ、バイオリン、ビオラなどのアコースティック楽器やコーラスなどの声素材の収録に使います。アコギはマルチマイクでの収録が多く、1073LBとAUDIO-TECHNICA AT5040を組み合わせてホール付近の鳴りの成分を拾うのが基本になっていて、ディープな鳴りを使いやすい形で収音できます。
Q. AMS NEVE製品の魅力
1073LBで録ると、エッジがあるのに柔らかく、温かく張りがあり、ほかのマイクプリより音像が大きく説得力のある音になる印象です。特有の倍音感やザラ付き感が付加され、オケに埋もれにくくなります。特に繊細なアコースティック楽器の録音においては“1073LBで録っておけば失敗しない”という安心感があります。また、レスポンスも良く、レコーディングのモニター時に楽器が弾きやすく感じます。
toku(GARNiDELiA)が語るAMS NEVE1073の魅力
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スタジオで選びたい“アレ”が、自宅にあるのは幸せ
Q. 1073LBを導入したきっかけ
API 500のランチ・ボックス導入時に、ボーカル・レコーディングやシンセ・ダビング用途に購入しました。
Q. 使用するパートとセッティング
最近では、主にハードウェア・シンセのダビング時やソフト・シンセのトリートメント、DI兼プリアンプとして使うことが多いです。楽曲に合う場合には、ギターやベースの入力時にも選びます。フロントにXLR/フォーン・コンボ入力やLo-Zスイッチがあって入力ソースを選ばないですし、MARINAIRトランス搭載で、その色付けが重宝しています。
Q. AMS NEVE製品の魅力
オールマイティでありながらAMS NEVEのキャラクターが見える機材なので、その音色が欲しいときに選びたくなります。自宅で楽器ダビングをすることが多くなった現在、スタジオで選びたい“アレ”が、自宅にあるのは幸せかなと思ったりします。特にVPR500のシリーズでも、見た目も操作感もしっかりAMS NEVEだと分かりますし、長年人気を維持していることがうなずける魅力的な機材です。
染野拓が語るAMS NEVE1073の魅力
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高域が伸びていて現代的なトラックとの相性が良い
Q. 1073LBを導入したきっかけ
各スタジオに置いてある1073は物によって音の違いが結構あるので、自分が傾向を把握できる1073サウンドを一台持っておきたかったため。
Q. 使用するパートとセッティング
主にボーカルやスネア、ギター・アンプのマイクなど中音域の回線に使用することが多いです。少しゲインを上げてひずみ成分を増やす手法はモデリング・プラグインなどでもおなじみですが、実機の方が嫌なジャリジャリ感が少なく、音がやせることなくひずみ感だけ増やせる印象があります。音数が多いオケに埋もれやすいささやき声や、少しひずんだ質感のスネアを録るときに多用しています。
Q. AMS NEVE製品の魅力
外部スタジオではビンテージの1073を触る機会が多いですが、AMS NEVE製品の方がスッと高域が伸びていて現代的なトラックとの相性が良い印象があります。個人的に1073に感じていた骨太さに比べるとあっさりはしていますが、逆にポストプロダクションでの音作りに“触りやすい音”として良い状態で持っていきやすいので、昨今の制作スタイルの中でも積極的に使っていけると感じています。