512 AUDIO Skylight レビュー:34mmラージ・ダイアフラム搭載のコンデンサー・マイク

512 AUDIO Skylight レビュー:34mmラージ・ダイアフラム搭載のコンデンサー・マイク

 512 AUDIOというと聞き慣れないメーカーに思えるかもしれませんが、かのWARM AUDIOがかかわるアメリカ・テキサス州オースティン発の新しいブランドだとか。そこがラージ・ダイアフラムを採用したスタジオ仕様のリーズナブルなコンデンサー・マイクSkylightを発表しました。ライバルが大勢居る価格帯だけに、どう攻め込んでくるのか。早速試してみます。

金属製ポップ・ガードやショック・マウントが付属

 まずは基本的なスペックから。Skylightは48Vのファンタム電源を供給する必要があるコンデンサー・マイク。金属製の濃密なメッシュで覆われているため外からは見えませんが、34mm径の大型ゴールド・メッキ・カプセルを採用しており、回路設計はWARM AUDIOの持つリソースを生かし、往年の名機にインスパイアされて開発されているとのこと。指向性は一番使いやすいカーディオイド(単一指向)のみですが、筐体は金属製で案外ずっしりとした重量感があり、しっかりとしています。高級感とまでは言えませんが、価格を考えれば立派な質感に見えるため、十分だと言えるでしょう。

 特筆すべきは専用キャリー・ポーチに加えて、金属製のショック・マウントとメタル・メッシュのポップ・ガードが付属している点です。通常はショック・マウントとポップ・ガードは別売りのパターンが多く、かと言って買わないという選択肢は事実上無いため、これらが付属しているのはトータルで考えると驚くほど優れたコスト・パフォーマンスと言えるのではないでしょうか。

512 AUDIO Skylightにはメタル・メッシュのポップ・ガード(写真左)、金属製のショック・マウント(同右)のほか、マイクを収納できるキャリー・ポーチを付属している

メタル・メッシュのポップ・ガード(写真左)、金属製のショック・マウント(同右)のほか、マイクを収納できるキャリー・ポーチを付属している

 ショック・マウントは上から見るとCのような形になっており、マイク本体の下側を手で回してネジ止めするタイプ。その上に来るビンテージ感を漂わせるデザインのポップ・ガードは、非常に細かい金属製のメッシュでできており、マイク本体に直接ゴムで挟み込んで使うようになっています。ショック・マウントとポップ・ガードを全部くっ付けた状態だとそれなりの重さになるので、お辞儀をしてしまわないように取り付けるマイク・スタンドのセッティングの際には気を遣う必要がありそうですが、マイクはずっしりしているほうが外からの振動の影響も受けにくいため、個人的には魅力ではないかと思います。

ビンテージ・マイクを意識したスムーズでウォームなキャラクター

 まずはボーカルで音質をチェックします。512 AUDIOのWebサイトでも説明されていたように、一聴した印象からウォームでビンテージ的な雰囲気を狙っているのが分かります。現代風のパキっとしたマイクとは対象的に、スムーズで優しいサウンドに感じました。とは言っても抜けが悪いわけではなくしっかりと高域も出ており、EQで高域を上げてみると奇麗な倍音が上がってきました。低域の感じもモコモコすることなく、うまい具合にコントロールされています。近接で歌ってみてもブーミーさはあまり気にならない感じです。しっかりと中域が出てくるので派手さはありませんが、男女問わずさまざまなボーカルに適したキャラクターのマイクだと言えます。本体にローカット・スイッチが付いていないので、マイクプリなどで低域をあらかじめ切っておくほうがいいかと思いますが、余計なピークが出にくいキャラクターなので、マイキングに不慣れな人でも比較的扱いやすいのではないかと思います。

 次にポップ・ガードを付けてみると、やはり幾分高域が落ちてしまうという傾向はありましたが、いわゆる吹かれを防ぐ効果はしっかり高い方だと思います。それでも構造上マイクとポップ・ガードの距離が結構近いので、ボーカル・レコーディングではマイクとの距離感に気を付けた方がいいでしょう。ラージ・ダイアフラムのマイクを使う際には、プロでも特に注意しなければならないポイントですが、Skylightはそれでもセッティングにシビアな方ではありません。周囲の余計な環境ノイズもうまく避けられるやや鋭めの単一指向性なので、この辺りの特徴からは、やはりポッドキャスト制作的な用途も念頭に置かれた設計なのかもしれません。逆に言えばアンビエンスを拾うような用途には適していないと思いますが、自宅などで歌を録るような使い方とは相性が良いと思います。あとSN比がすごく良いのは魅力です! ささやくような歌い方に使ってみても良い感じでした。

 続いてエレキギターをアンプで出して録音してみました。ギラギラしていない分、中域がやや張り出して聴こえますが、全体的にとても良いバランスです。中高域もキンキンしないので聴きやすいと感じます。原音を忠実に再現しているというよりは“扱いやすい音にうまくまとめてくれている”というニュアンス。後々ミックスを行う際も、苦労せずに済みそうな音質だと思いました。ただコスト削減の意味もあるのでしょうが、PADスイッチが付いていないので、入力信号に対する耐圧には限界があると思います。どこまで耐えられるかは録音ソースにもよりますが、それが爆音である際には、少し気を付けた方がよいかもしれません。

 癖の無いキャラクターなので、アコギや管楽器など幅広い用途に使える守備範囲の広いマイクだと思います。宅録初心者の方は、1本目のコンデンサー・マイクとして選択肢に入れても良いのではないでしょうか。

 

林田涼太
【Profile】いろはサウンドプロダクションズ代表。録音/ミックス・エンジニアとして、ロックからレゲエ、ヒップホップとさまざまな作品を手掛ける。シンセにも造詣が深く、9dwのサポート(syn)としても活動。

 

512 AUDIO Skylight

オープン・プライス

(市場予想価格:19,800円前後)

512 AUDIO Skylight

SPECIFICATIONS
▪形式:コンデンサー型 ▪カプセル:34mmゴールド・メッキ・ラージ・ダイアフラム ▪指向性:カーディオイド ▪周波数特性:20Hz〜20kHz ▪感度:−42dB、+3dB(0dB=1V/Pa@1kHz) ▪インピーダンス:200Ω ▪最大SPL:144dB ▪重量:1kg ▪外形寸法:202(H)×55.5(φ)mm ▪付属品:ショック・マウント、ポップ・フィルター、キャリー・ポーチ

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