AMS創業者のマーク・クラブツリーが語るAMS NEVEの伝統と進化

AMS創業者のマーク・クラブツリーが語るAMS NEVEの伝統と進化

名曲の誕生の裏に名機あり。50年以上の時を超えて一流のエンジニアに選ばれ続けてきたイギリスのブランド、NEVE。プリアンプ/EQの1073やコンプレッサー/リミッターの33609をはじめ、“NEVEの音”を耳にしたことがない人は居ないだろう。そして、NEVEの血統を今なお受け継いでいるのが、AMS(Advanced Music Systems)との合併によって生まれたAMS NEVEだ。サンレコでは、このAMS NEVEの魅力を2カ月にわたり紹介。AMS創業者で現在に至るまで陣頭指揮を執るマーク・クラブツリー氏へのインタビューやAMS NEVEユーザーによる述懐とともに、その伝統の継承と進化をたどってみよう。

私たちの耳は昔も今も変わりません。素晴らしい音は、いつだって素晴らしい音なので

 AMS NEVEは、1961年設立のNEVEと1976年設立のAMSがSIEMENS傘下で合併したことにより、1992年に誕生。その後、AMS創業者のマーク・クラブツリー氏によって1996年に個人所有の企業として独立した。氏はエンジニアリングを自ら主導し、OBE(英国勲章)を受章。現在もマネージング・ディレクターとしてAMS NEVEを率いている。ここでは、クラブツリー氏にE-Mailインタビューを実施。自社工場での生産体制や、長年にわたる伝統の維持の秘けつ、名機のノウハウを生かした最新プロダクツの開発を語ってもらった。

AMS NEVEマネージング・ディレクターのマーク・クラブツリー氏

AMS NEVEマネージング・ディレクターのマーク・クラブツリー氏

すべての側面を一つ屋根の下で管理

 AMS NEVE製品の製造における全工程は、イギリスのバーンリーに位置する自社工場で行われている。現在の開発や生産の規模について尋ねてみよう。

 「6万平方フィート(約5,500㎡)の近代的な工場で、約100人の従業員を雇用しています。従業員の30%は研究開発および技術スタッフです。生産工程は、最新の表面実装から自動光学検査、自動および手動の技術テスト、伝統的な手作業による配線や機械的な組み立てまでさまざまです」

イギリスのバーンリーに構えるAMS NEVE社

 自国以外に工場を構えて生産を行っているメーカーも多い中、AMS NEVEがイギリスの自社工場での生産にこだわり抜いているのには理由がある。

 「設計やデザインのアップグレード、プロトタイプの作成、製造工程、テストのすべての側面を一つ屋根の下で管理することによって、品質を最大限に高めることができるのです。デザイナーは、意図した通りの設計で工場から出荷されるように、製造部門と毎日連絡を取り合っています」

AMS NEVE社内

AMS NEVE社内

 そのような工程を経て完成した製品に欠かせないのが品質の検査。どのように行っているか尋ねると、ここでも各部門のスムーズな連携が鍵となっていた。

 「すべての回路基板と組み立て部品は、まず自動テスト装置でオーディオ・パラメーターの仕様を厳しくチェックしています。その後、テスト・エンジニアが完成品を適宜試聴して、懸念事項がある場合には、設計者に問い合わせています」

AMS NEVE社内

音をデザインする魔法を理解している

 AMS NEVEでは、マイクプリの1073やコンプレッサー/リミッターの33609といったNEVEの名機を、発売から50年以上が経過した今でも生産し続けている。なぜその高い品質を長年にわたって維持できているのか尋ねると、「創業当時からのスタッフの継続性のおかげでしょう。彼らは回路だけではなく、音をデザインする魔法を理解しているのです」と答えたクラブツリー氏。時代が移ろい、作られる音楽が変化してもこれらを作り続ける意義について次のように続けた。

 「一流のエンジニアやプロデューサーは、これらのユニットの音を熟知し、愛しており、彼らが望む音を素早く呼び出すことができます。私たちの耳は昔も今も変わりません。素晴らしい音は、いつだって素晴らしい音なのです」

 AMS NEVEは伝統技術を受け継ぐだけでなく、「サウンドとデザインにおいて決定的であり、紛れもなくNEVEのものであること」を基準としつつ、時代に合わせた改良や新機種の開発を行う。クラブツリー氏は具体例として、1073マイクプリを8基搭載した1073OPXを「クラシックなサウンドに、現代的な操作性と手ごろな価格がプラスされています」と紹介。オプションのデジタル・カードを追加することでUSBやDanteネットワークでのデジタル接続にも対応している。

 1073OPX 

AMS NEVE 1073OP

2Uラック・ユニットに1073×8基を搭載。リモート・コントロールに対応し、オプションのデジタルI/Oカードを使用することでUSBやDante接続が可能になる

アナログとデジタルの技術の粋を集めた

 その進化からも見て取れるように、AMS NEVEの大きな強みは、NEVEが誇るアナログ技術と、AMSが培ってきたデジタル技術を持ち合わせることだろう。小学生のころから音楽や電子機器を好んできたというクラブツリー氏。彼が設立したAMSは、航空宇宙技術を活用し、音楽制作や映像作品のポストプロダクションにおいて新たな技術をもたらしてきた。アナログ技術とデジタル技術で世界を極めたブランドの融合。その実力は、世界的な映画作品で活躍するコンソールのDFCや、DAWコントロールが可能な1073マイクプリ搭載のコンソールGenesysにおいて遺憾無く発揮されている。

 DFC3D 

AMS NEVE DFC3D

DFC3Dとマーク・クラブツリー氏。DFC(デジタル・フィルム・コンソール)は、マルチフォーマットの映画のダビングやポスト・プロダクション用に設計されており、Dolby AtmosやAuro-3Dのミックスにも対応する

 「DFCは、アカデミー受賞作の大半の制作に使用されているデジタル・コンソールの決定版です。Genesysは、DAWとシームレスに統合できるプラグインやインターフェースなど、アナログとデジタルの技術の粋を集めた素晴らしいプロダクション・ツールです。今日の音楽制作のあり方に合わせ、DAWとのハイブリッドな制作フローを新たに定義し、ゼロから考え抜きました。新しいシグナル・パス・エレメントは、これらの古典的な手法を補完するために慎重に設計されています。デジタル・オーディオ技術のパイオニアとして、その過程でアカデミー科学技術賞を受賞したAMSの専門知識は、デジタル世界がアナログ・フローと完全に調和して動作することを保証しているのです。これらの製品は、クラシックな製品の要素を取り入れながらも、制作の流れや生産性を考慮した設計になっています」

 Genesys Black 

AMS NEVE Genesys Black

8chの1073マイク/ライン・プリアンプ、16chのDAW/テープ・モニタリングを搭載し、アナログ回路とデジタル・コントロールを備える。各パラメーターはGenesysControlプラグインによりDAW上で操作できる

 プロフェッショナルに求められる名機の伝統を保ちつつ、さらなる技術革新を追求し、止まることなく進化し続けるAMS NEVE。最後は、日本のユーザーへのメッセージとこれからの展望について語る氏の言葉で締めくくろう。

 「NEVEとAMSの製品において、そのサウンドと性能に長い間、愛情を注いでいただき、本当にありがとうございます。私たちは、これからも皆様に喜んでいただけるような製品、最高品質のオーディオ作品を作るための最高のツールを、私たちのトレード・マークであるエモーショナルな要素を加えながら提供することを目指していきます」

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