音響メーカーが提示する次世代のレコーディング・システム UNIVERSAL AUDIO Luna

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The 2020 NAMM Showで発表され、話題となったUNIVERSAL AUDIOのレコーディング・システム、Lunaがついにリリースされた。多くのクリエイターが愛用する同社オーディオI/O、Arrow/Apolloシリーズと一体となるソフトウェアで、オーディオ録音やMIDIの打ち込みによる楽曲制作、UADまたはAUプラグインを用いたミックスまで実現。また、レコーディング機器のモデリング・プラグインを数多く開発してきたUNIVERSAL AUDIOだけあり、アナログ・サウンドをデジタルのレコーディング環境で再現する機能も備わっている。同社スタッフのインタビューとともに、Lunaの魅力に迫ってみよう。

Overview

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Arrow/Apollo(Thunderbolt接続モデル)のユーザーは無償で使用可能

【SPECIFICATIONS】

OS:macOS 10.14または10.15
プロセッサー:INTEL Quad Core I7以上
RAM:16GB以上
システム・ディスク:SSDを推奨
その他:サンプル・ベースのLunaインストゥルメント用のSSD(APFSフォーマット済みのもの、外付けSSDの場合はUSB 3.0/USB 3.1/PCIe/Thunderbolt接続に対応している必要がある)、iLokアカウント(iLok Cloudもしくは第2世代以降のiLok USB Key(でライセンスを管理)

Arrow/Apolloシリーズと連携する
Mac用のレコーディング・プラットフォーム

 同社のオーディオI/O、ArrowやApolloシリーズ(Thunderbolt接続モデル)とシームレスに統合するMac用ソフトウェア。Arrow/ApolloおよびUADプラグインを最大限に活用した音楽制作/編集/ミキシングが行える“レコーディング・システム”と銘打たれている。オーディオ/MIDIが扱えるのはもちろん、同社が培ってきたモデリング技術を生かしてアナログ・サウンドを再現するLunaエクステンションや、Luna専用音源のLunaインストゥルメントも搭載。サード・パーティ製AUプラグインも使用可能だ。ARM(Accelerated Realtime Monitoring)による、Arrow/Apolloの内蔵DSPとUADプラグインを活用したニアゼロ・レイテンシーでの録音/モニターができる点も魅力となっている。

 

 オーディオ/MIDIトラック数に制限は無く、エディット機能も必要十分に用意されている。オーディオはクリップの移動やトリム、クロス・フェードなどが行え、MIDIではクオンタイズや使用している音高のみ表示する機能なども搭載。オーディオ録音時には同社のConsoleソフトウェアと同じくUADプラグインのかけ録りが可能だ。また、通常のプラグイン・インサート用スロットもあり、ミックス作業も十分に行える。

 

 アナログ・サウンドを簡単に取り入れることができるLunaエクステンションと呼ばれる機能も用意。Lunaのミキサー内に組み込まれており、素早く呼び出すことができる。Neve Summing(299ドル)では、NEVE 80シリーズのコンソールに備わったサミング回路をエミュレート。また、ミキサーにあるTAPEセクションではテープ・マシンのエミュレーションを使用できる。現在はOxide(Lunaに付属)とStuder A800(349ドル/UADプラグイン版に付属)をラインナップ。1つのセッションの中で最大4つ設定でき、そのいずれかを各トラックまたはグループ・トラックで使用可能となっている。

 

 Lunaインストゥルメントは、Luna専用のソフト音源の名称。Lunaには、UNIVERSAL AUDIOやSPITFIRE AUDIOによるサウンドを収録するサンプル・ベースのShapeが付属する。最大4つのサウンドを読み込み、レイヤーやキーボード・スプリットが可能だ。そのほかにも、STEINWAY Model Bの音源Ravel Grand Piano(299ドル)、MOOGとのパートナーシップから生まれたMoog Minimoog(299ドル)、SPITFIRE AUDIOのサウンド・コレクションであるLuna Spirfire Bundle(599ドル)が発売されている。

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【Interview】ユウイチロウ“ICHI”ナガイ氏が語る Lunaの魅力

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 レコーディングの歴史において重要な存在であり続けるUNIVERSAL AUDIOが、ついにレコーディング・ソフトウェアをリリースしたというのはセンセーショナルな出来事だ。Lunaは今後の音楽制作の現場、そしてクリエイターたちにとってどんな存在となり得るのだろうか? UNIVERSAL AUDIOインターナショナル・セールス・マネージャーのユウイチロウ“ICHI"ナガイ氏にインタビューを行った。

 

アナログのサウンドとワークフローを意識
即効性や創造性が感じられるシステム

Lunaが生まれた経緯を教えてください。

ナガイ  開発がスタートしたのは4年ほど前になりますね。これまでユーザーの方々は、ArrowやApolloを操作するためのConsoleソフトウェアと自身のDAWを組み合わせて制作をしてきました。ただ、DAWとオーディオI/Oの間にConsoleという別のソフトを挟まなければいけないことが我々も気になっていたのです。録音や制作のワークフローをより良いものにするためには、レコーディングのソフトウェアまで手掛ける必要があるだろうと考えました。

 

DAWではなく“レコーディング・システム”と名付けていますが、その理由は?

ナガイ  Lunaの機能にとって重要な存在がArrowやApolloであり、それらオーディオI/Oと一体となるシステムだからです。

 

どのような点を重視して開発が行われましたか?

ナガイ  アナログ・サウンド、そしてアナログ環境のワークフローを意識していました。“アナログなDAW”を作りたかったのです。昔ながらのレコーディング・スタジオを知っている人は分かると思いますが、素晴らしいアウトボードを使いながらいろいろなことを試して、それによってみんなのテンションも上がっていく。そして良いタイミングで音を録ってしまう。そのようなアナログ・スタジオ環境での即効性や創造性を感じられるようなシステムになっています。

 

低レイテンシー・モニタリングを実現するARMとはどのような機能なのでしょうか

ナガイ  トラックのARMボタンをオンにするとオーディオI/O側のDSPがオンになり、UADプラグインを使ったリアルタイム・モニタリングがLuna上で可能になります。ARMボタンを押すだけで、ユーザーはバッファーの調整などをする必要も無く、ニアゼロ・レイテンシーでのレコーディングができるのです。

 

アナログ・サウンドを実現する機能として、Lunaエクステンションが用意されています。その一つであるNeve Summingではどのような効果が得られますか?

ナガイ  横と縦の広がり、そして奥行きの深さを生むことができますし、レベルを上げればハーモニック・ディストーション効果も得ることが可能です。音につやが出るイメージですね。なぜプラグインではなくLunaのミキサーに組み込まれているのかというと、例えばバスを作ってNeve Summingを選択すると、そのバスに送られている各チャンネルも自動的にNEVEコンソールのゲインやパンの特性を持つようになり、そのバス全体でNEVEサウンドとなるのです。さらにUADプラグインのNeve 1073を合わせて使えば、バーチャルのNEVEコンソールが出来上がります。

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LunaエクステンションのNeve Summing(299ドル)。プラグインではなくミキサー上に組み込まれており、オンにすることでNEVE 80シリーズ・コンソールの特性を再現する。ヘッドルームやトリム、インピーダンス、バイパスの設定が可能だ

 

もう一つのLunaエクステンションであるTapeは?

ナガイ  Tapeはテープ・レコーダーを再現したもので、オンにしたトラックはプレイバック時にTapeを通るようになります。これまでUADプラグインでもテープ・エミュレーターは出していますが、ユーザーの中にはすべてのドラム・トラックに挿すという人も多くいました。そうすると多くのDSPパワーが必要になり、ワークフローはあまり良いものにはなりません。もっとシンプルにするためにミキサーへ搭載したのです。

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テープ・レコーダーの特性をエミュレートするLunaエクステンション、Tape。Oxide(Lunaに付属)とStuder A800(349ドル/UADプラグイン版に付属)を用意している

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UltraResonanceテクノロジーで
ピアノが持つ共鳴による音色変化を再現

Lunaインストゥルメントの開発も新たな試みです。

ナガイ Lunaインストゥルメントにおいてもアナログ・サウンドを意識しています。例えばRavel Grand Pianoは、スタジオにある最高のピアノを、素晴らしい場所とマイクで収めることを目指しました。重要なのはレゾナンスです。音を鳴らしたときに、共鳴によってサウンド全体にいろいろな影響が起こりますよね。それをUltraResonanceテクノロジーで再現しました。このテクノロジーはUADプラグインのOcean Way StudiosやOX Amp Top Boxでも研究していたものです。ほかにもMoog MinimoogやShape、Luna Spitfire Bundleなども用意しています。

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ピアノ音源のLunaインストゥルメント、Ravel Grand Piano(299ドル)。共鳴によるサウンドの変化まで再現するUltraResonanceテクノロジーを採用した

 

サンプル・ベースの音源Shapeではオリジナルのサンプルを読み込むこともできますか?

ナガイ 現状はクローズドな環境になっているため、どちらかというと完結したインストゥルメントというイメージですが、エディットはかなりのことが行えます。4つのサウンドを読み込むことができ、レイヤーやキーボード・スプリットなどが可能です。エフェクト・エンジンも2つ搭載しています。そのような奥深いエディットも可能ですが、スムーズなレコーディングができるようなシンプルな操作感も実現しました。現在はUNIVERSAL AUDIOやSPITFIRE AUDIOなどのライブラリーが入っており、今後さらに増えていく予定になっています。

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Lunaに付属するサンプル・プレイバック音源、Shape。最大4つのサウンドを読み込み、レイヤーやキーボード・スプリットなどが行える。エフェクト・エンジン×2基も用意

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オーディオ/MIDI編集において重視したポイントは?

ナガイ 別の画面を開かずとも1画面内でエディットできるようにしました。例えば、タイムラインの画面にMIDIクリップが並びますが、MIDIノートの編集用に別画面を呼び出す必要が無く、そのままタイムライン上でエディットが行えます。また、FOLDというボタンを押せば使用しているMIDIノートの音高のみを表示したり、FITというボタンでは打ち込まれているMIDIノートのレンジに合わせて全体を表示することが可能です。MIDIエディットが素早く行えるでしょう。

 

ユーザーの創造性を高め、かつキープしながら制作ができるシステムになっていると感じました。最後に、日本のユーザーに向けてメッセージをお願いします。

ナガイ 既にたくさんの意見が届いており、“今までで最高のオーディオ・ソフトウェアだ”という言葉もいただいています。Lunaのエキサイティングな新しい旅はまだ始まったばかりです。ユーザーの皆さまがより創造的になるための有用なツールになることを願っています。

 

■製品情報

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