
mabanua × Apollo X6
[Profile]ドラマー/ビート・メイカー/シンガー/プロデューサーとして多方面で活躍するクリエイター。Shingo Suzuki、関口シンゴとのバンド、Ovallのメンバーとしても活動する。近年ではCharaや大橋トリオ、藤原さくら、米津玄師などのプロデュースを手掛けた。
パキッとした部分が無くなって
全帯域が奇麗に出ているようなイメージ
今回はApollo Xシリーズの中で最小のI/O構成となっているApollo X6を試しました。2chの入力があれば十分というクリエイターも多いと思いますし、ドラムをレコーディングするようなことがなければ、これくらいのI/O構成がちょうど良いのではないでしょうか。1月に発売されたArrowもありますし、UNIVERSAL AUDIOのオーディオI/Oは奇麗にユーザーのすみ分けができるようにラインナップがそろっていますね。
自宅スタジオで第2世代Apolloと聴き比べるテストを行いました。まずApollo Xのモニター・アウト、ヘッドフォン・アウトを使ってスピーカーとヘッドフォンで試聴。第2世代Apolloは低域が控えめで、パキッとした音の印象がありました。このApollo Xではそのパキッとした部分が無くなって、全帯域が奇麗に出ているようなイメージです。第2世代Apolloのサウンドも良いのですが、今回のアップデートで“すごいレベルまで来たな”という音質の向上が感じられました。各社から新しいオーディオI/Oが発売されるたび、新機能の搭載や入出力数の拡大などは行われていますが、なかなかAD/DA部分は変わらないイメージがあります。でもApolloは毎回AD/DAが良くなっているので、僕みたいな自宅で制作作業をするアーティストからすると一番うれしいポイントなんです。
普段ヘッドフォンでモニターするときは、外部DAコンバーターのヘッドフォン・アウトや外部ヘッドフォン・アンプを併用しています。今回の試聴でも使ってみましたが、Apollo Xから直接出力した音が一番好みでした。低域の質感が良くなっているので、例えばギターをクリーンで弾いたときの低域などが見やすくなっています。
今後、サラウンド・モニターにも対応するというのもうれしいポイントです。これからは劇伴もやっていきたいと考えているので、サラウンド作品がApollo Xだけでモニターできるというのは良いですね。
Apollo XではやはりAD/DAの進化が印象的でした。“大型スタジオではAVID Pro Toolsシステム”というイメージが今までありましたが、これからはそういうスタジオにApolloが入っていても全然おかしくない。“大型スタジオでもメインで使っていけるものを作る”という意志をApollo Xから感じました。
草間敬 × Apollo X8
[Profile]アレンジャー/エンジニア/シンセ・プログラマー。AA=、金子ノブアキ、SEKAI NO OWARIなどの作品、ライブに携わる。ABLETON認定トレーナーの資格を持ち、後進の育成にも尽力。現在は美学校にて「アレンジ&ミックス・クリニック」を開講している。
UADプラグインの質感がより分かる
AD/DAやクロックの進化のおかげでしょう
僕が初めてApolloを買ったのは2012年。銀パネルの初代Apolloでした。以前はUAD-1カードやDSPユニットのUAD-Xpanderも使っていましたし、UADプラグインの使用歴は長いです。昔、各社から出ていたDSPカードの聴き比べをしたことがあるのですが、UADがダントツで好印象だったことを覚えています。
今回はApollo X8と自前の初代Apolloに2ミックスを入力し、DAWに録音して聴き比べました。やはり音が良くなっていますね。初代から第2世代になったときに“モデリング元となっている実機の特徴がより分かるようになった”という印象があったのですが、この第3世代へのアップデートでそれがさらにはっきりと感じられました。例えば実機のSSL SL4000EのEQでHMFを持ち上げるとシャリシャリとした感じ……僕の言葉で言うと“砂っぽさ”があるのですが、それがApollo Xではよりリアルに感じられます。AD/DAやクロックが進化しているおかげでしょう。
出力に関しても、奥行きや高域/低域の明りょうさがアップしていて驚きましたね。初代Apolloは中域が少し強めに出る傾向がありました。僕は初代Apolloに外部クロックを入れることで出音を調整していたのですが、このApollo Xでは外部クロックを使わずとも十分に良い音でモニターできます。
僕がApolloで一番良いと思っている部分は、UADプラグインを使ってかけ録りができるところです。Apolloをハードウェアのプリアンプやコンプレッサーのように使うわけですね。よく行うのはルーム・モデリングのOcean Way Studiosを使ったかけ録り。良いアンビエンスが得られない場所でドラムを録るときなど、キックから少し離れたところにマイクを立て、それにOcean Way Studiosをかけることで、広さを自由にコントロールできるような音像を作ることができます。Apollo XはDSPの数が6コアになったので、多数の入力にUADプラグインを使って録音するという場合でも余裕を感じられるでしょう。
ほかにもダイナミック・レンジが向上していたり、ヘッドルームで+24dBuが選択できるようになっています。これはAVID Pro Toolsと一緒に使ってほしいというUNIVERSAL AUDIOの思いの表れかもしれません。エンジニア兼プロデューサーのような人が導入して、スタジオへ持って行って使うというシーンがこれから増えるのではないかと思いますね。