FL Studioでもレコード・サンプリング! 録音からテンポ・マッチングまで紹介|解説:MET as MTHA2

FL Studioでもレコード・サンプリング! 録音からテンポ・マッチングまで紹介|解説:MET as MTHA2

 普段私はサンプリングをして曲を作っているのですが、FL Studio使いでレコード・サンプリングをしている人って少ないですよね。DAWの相性なのか、自分の周りだけかもしれないですが、あまり多くない気がします。そもそも、FL Studioに限らずレコードからサンプリングをする人自体が減ってきてしまっている気がしてちょっとさびしいんですよ。“じゃあ、お前は毎回レコードから抜いてるのか?”って言われたら、それはあの、違うんですけど……。まぁそんなこんなで今回は“手間をかけてレコードを回すのも楽しいから!”という啓蒙回です。

ターンテーブル上でピッチを調整。サンプリング前にベストな音高を探る

 ゲスト・アーティストが目隠しをし、3枚のレコードを選んでビートを作るYouTubeチャンネル“Rhythm Roulette”を見ていて気付いたのですが、FL Studio使いの中でもサンプリングする際にいったんほかのDAWへ流し込むという人がかなり多いみたいですね。例えばDJ Mr. Rogers、V Don、Jahlil Beatsなど、サンプルをFL Studioで録る人が少ないんです。皆さんいろいろな理由があってほかのDAWで録っていると思いますが、今回はFL Studioのみを使ってサンプリングする準備/設定からスタートです。

 

 まず機材の組み方としてメジャーなのは、ターンテーブル→ミキサー→オーディオ・インターフェース→FL Studioだと思います。機材セッティングについては誌面スペースの都合上割愛しますが、オーディオ・インターフェースにライン・ケーブルが2本つながっていれば、ひとまず録音できます。近年はターンテーブルからライン・レベル出力できることもあるので、ミキサーは要らない可能性もあります。ありがたいですね。

 

 FL Studioでのオーディオ・レコーディング(≒サンプリング)は、少し複雑です。まず画面上部メニューのOPTIONS→Audio settingでご自身のオーディオ・インターフェースを設定したら、FL Studioのミキサー画面を開き、任意のトラックを選択して下さい。この段階ではプラグインを何も挿していない状態にしておきましょう。

f:id:rittor_snrec:20211202190612j:plain

ターンテーブルからの出力は、ミキサーを通してオーディオ・インターフェースへ入力する。FL Studioでは画面上部メニューのOPTIONSからAudio settingを開き、使用しているオーディオ・インターフェースを選択しよう

 それからミキサーの下部にあるレコード・アーム・ボタンをクリックします。赤く点灯したら、右上にあるインプット選択画面(普段noneになってるところ)でライン・インプットをステレオで選択。するとミキサーに入力信号が出ているはずです。これでやっとサンプリングの準備ができました。

f:id:rittor_snrec:20211202190638j:plain

ミキサー画面でトラックを選択し、左側にあるオーディオ・インプットのプルダウンからオーディオ・インターフェースの入力チャンネルを選ぶ。トラックのレコード・アーム・ボタンを押すのも忘れずに

 では、レコードを聴いてサンプリングしたい個所を探しましょう。ピッチ・フェーダーを上げ下げしたり、回転数を変えてみたりすると、アナログならではの音の変化に気付くと思います。ちなみに、私はサンプリング後にピッチを調整するよりも、サンプリングの段階でベストなピッチを見つけたい派です。

 

 さて、良い感じのサンプルが見つかったら画面上部のレコード・ボタンをクリックし、点灯させておきます。この段階でキーボードのスペース・キーを押せば録音が始まってサンプリングができるわけですが、プチ・ノイズなどでクリップすることもあるので入力レベルには注意が必要です。無事にサンプリングができたら、Playlist画面上にオーディオ・クリップとして表示されます。使えそうなところはガンガン録っていきましょう。使わなかったら後で消せばいいだけなので、強気でいきます。まずは決定的なループを探して、録っておくことが大事です。

 

 FL Studioの良いところは、“スペース・キーだけ押してればいい”っていう仕様なんです。スペース・キーを押したらサンプリング開始、もう一度押したら停止、もう一度押すとPlaylist画面の別トラックで録音が始まります。これが地味にうれしい。何回でも録り直せるし、サンプリング作業のスピードが上がります。

f:id:rittor_snrec:20211202190715j:plain

画面上部のレコード・ボタンを押した状態でキーボードのスペース・キーを押すと録音がスタート。録音を止め、再度録音をスタートすると、自動的にPlaylistの別トラックへオーディオ・クリップが作成されるのが便利だ

 せっかくレコードからサンプリングしているので、レコード・ストップの音を録っておくのもよいでしょう。FL Studio Signatureに付属しているプラグインのGross Beatでも似たような効果は得られますが、ターンテーブルで“ここループしそうだな”っていう部分の最後でレコードを止めれば、リアルなレコード・ストップの音が録れますよ。私がプロデュースを手掛けたSound’s Deli「Delimatic」のイントロはこのように作ったと記憶しています。

f:id:rittor_snrec:20211202190738j:plain

FL Studio 20 Signatureに付属するエフェクト、Gross Beat。ゲートやグリッチ、リピート、スクラッチ、スタッターといったエフェクト効果を生み出せるクリエイティブ系プラグインだ

Playlist上でオーディオ編集。StretchやSliceでテンポを合わせる

 次に、録り終わったサンプルを吟味&加工していくのですが、今回は全部Playlist上で完結させます。EdisonもSlicexも使いません。どちらもオーディオ編集ができる付属プラグインですが、Playlist上でも大体のことが素早くできてしまうので、その流れをお伝えします。個人的にFL Studioの良いところは“スピード感”だと思っています。レコードから素早くループを作れる、というのは非常に素敵なことです。

 

 ループの作り方としては、第一にスタート・ポイントとエンド・ポイントの設定、テンポ・シンクは二の次です。クリップをPlaylist画面の左端に配置し、サンプルの頭と終わりを詰めていきます。スタート・ポイントとエンド・ポイントをざっくり設定できたら、テンポと小節数を調整しましょう。細かい部分はSnapをnoneに設定した後、ギリギリまで拡大してStretchモードで調整していくとよいです。

 

 長い小節数でのループだと、全体のテンポが合っていても途中でズレている場合があります。昔のレコードからサンプリングする場合、この問題は避けられません。一番手軽な対応策を紹介しましょう。

  1. ループが小節から少しはみ出るくらいにプロジェクトのテンポを速くする
  2. テンポがズレ出すあたりでSliceモードを使ってサンプルをカットする
  3. Drawモードでサンプルを少し短く修正する
  4. テンポに合うようにクリップ同士をくっ付ける

……というゴリ押しするスタイルです。たぶんこれが一番早いと思います。

f:id:rittor_snrec:20211202190957j:plain

サンプリングしたループが長いと、途中でテンポと合わなくなってしまうこともある。その場合はプロジェクトのテンポを少し速くして、ループが目標の小節数から若干はみ出る程度にする。その後、テンポがズレ始める場所でSliceモードでカット、Drawモードでクリップを短くしてテンポに合うように位置を調整する。このときもSnapをnoneにして作業するとよい

 そんなこんなでレコード・サンプリングからループまで作れました! おめでとうございます。次回は“君のFL Studioは最新か? 意外と知られてない新機能あれこれ(仮)”を解説する予定です。

 

MET as MTHA2

【Profile】東京を拠点として活動する音楽プロデューサー/ビート・メイカー/DJ。サンプリングを基調とした独特のグルーブが思わぬ方向から好評を得る。プロデュースを担当したヒップホップ・コレクティブSound's Deliの1stアルバム『MADE IN TOKYO BANG』が2021年8月にリリースされ話題となった。そのほか、MASS-HOLEやDABOなどのアーティストにも楽曲提供を行っている。

【Recent work】

『MADE IN TOKYO BANG』
Sound's Deli
(Manhattan Recordings)

 

IMAGE-LINE FL Studio

f:id:rittor_snrec:20211101184802j:plain

LINE UP
FL Studio 20 Fruity:17,600円|FL Studio 20 Producer:28,600円|FL Studio 20 Signature:37,400円

REQUIREMENTS
▪Mac:macOS 10.13.6以降、INTELプロセッサーもしくはAPPLE Silicon M1をサポート
▪Windows:Windows 10以降(64ビット)INTELもしくはAMDプロセッサー
▪共通:4GB以上の空きディスク容量、4GB以上のRAM、XGA以上の解像度のディスプレイ

製品情報

hookup.co.jp