DJ/作曲家のGettyです。前回まではFL Studioを使ったUKハードコア制作のTipsを紹介してきました。今回は番外編として、FL Studioに付属する動画制作プラグインZGameEditor Visualizerでお手軽にMVを作る方法を解説します。
Link to controllerを活用して
曲に連動した動画演出を生み出す
僕のように個人ベースで活動しているアーティストにとって、“自身の活動を知ってもらえる場”をどう展開していくかはとても重要な課題です。僕は1年くらい前からYouTubeでの動画公開を本格的にスタートしました。楽曲動画を主軸にしつつ、DJ動画や音楽制作配信、インタビュー動画など、Gettyのいろいろな側面を知ってもらえる場として今後も充実させていきたいと思っています。
YouTubeを使っていくにあたり、ネックとなるのはやはり動画制作です。“音楽を作ることはできても、動画に関しては全く専門外”“簡単な動画だったら自分で用意できるようになりたい”という人も少なくないでしょう。実際僕も同じことを思っていました。そんなみなさんに朗報です。ZGameEditor Visualizerで簡単にMVを制作することができます。僕がYouTubeにアップしている多くのMVは、このZGameEditor Visualizerで作成したものです。今回は「Burned Out feat. DJ Noriken(Game Mix)」のMVを例に解説していきます。
上の動画が完成MVの画面になります。このMVを作るための手順は以下の4つです。
①必要な素材をインポートする
②素材とエフェクトを配置していく
③オートメーションで変化を付ける
④書き出し
まずは必要な素材を用意します。今回は、アートワーク画像と名前のロゴ画像、テキスト画像(曲名などの文字情報)を用意しました。それらをZGameEditor VisualizerのAdd contentタブに素材をドラッグ&ドロップでインポートしていきましょう。ちなみに僕はテキスト画像をADOBE Illustratorで透過画像として作成していますが、ZGameEditor Visualizer上でテキストを直接打ち込んでいく方法もあるので、自分に合ったやり方で試してみてください。
次はZGameEditor VisualizerのMainタブに必要な素材やエフェクトをレイヤーしていきます。下の画像は各素材が動画のどのパーツを担っているかを図解したものです。
一番左のArtwork_backは背景画像。Effect selectorのプルダウンで“Image”を選択し、IMAGE SRCから先ほど読み込んだアートワーク画像を選択します。Sizeスライダーで拡大縮小、Position XとPosition Yのスライダーで位置を調節して合わせていきましょう。また、デフォルトの状態だと画面が明る過ぎるので、Alphaの値を20%くらいに調整し、少しだけ暗くしています。
その右、Shakeというレイヤーに追加されている“Youlean Audio Shake”は画面を振動させるエフェクトです。背景画像のみを振動させたかったので2番目にインサートしています。Amountスライダーを調節することで振動量を変化させることができ、さらにエフェクト・プラグインのFruity peak controllerと組み合わせることで音に合わせて画面を揺らすこともできます。この設定をするためにはAmountスライダーとFruity peak controllerをリンクさせましょう。
Fruity peak controllerを使ったエフェクトの調整はZGameEditor Visualizerで動画作成する上で必須のスキルです。慣れてくると、センドやEQなどを組み合わせて“キックが鳴るときだけ画面が振動する”など、特殊な効果も演出することができます。ぜひいろいろ試してみてください。
映像エフェクトはオートメーション可能
さらなる演出を動画に加える
ZGameEditor Visualizerに戻ります。RedStarsというレイヤーに追加されている“ItsFullOfStars”は、流動するパーティクルを表示することが可能です。デフォルトだと白色なのですが、HueとSaturationスライダーで色味を変更することができます。Movementスライダーを調節すると粒子の速さを変更可能。今回は音に合わせて速度を変えたかったので、MovementスライダーもFruity peak controllerにリンクさせました。
次のレイヤー、Handheldにある“Youlearn Handheld”は、手ぶれのような自然な揺れを演出できるエフェクトです。Amountを8〜10%くらいに設定しています。続くSpectrumというレイヤーはスペクトラム・グラフを表示します。ZGameEditor Visualizerにはさまざまな形状のグラフが用意されていて、僕は一番シンプルで使いやすい“Linear”を選択することが多いです。音量に対する感度、動きの滑らかさなど、パラメーターを細かく調節することができます。その後のレイヤー、Getty_logoとArtwork、titleでは最初にインポートした各種素材画像を配置。前述の解説と重複するので省略します。
各レイヤーで使用するエフェクトのスライダーやノブは、右クリック→Create automation clipでオートメーションを描くことができるので、動画にさらに変化を与えたい場合に有効です。僕の場合はAlpha値のオートメーションを書いて動画の途中でフワッと文字が出現する演出を行なっています。
動画が完成したらいよいよ書き出しです。ZGameEditor Visualizerのウィンドウ右側にあるExport Videoをクリックすると書き出し設定画面が現れます。YouTubeにアップする場合は書き出しプリセットから“YouTube HD”を選択しましょう。また、Advanced export settingsを開くとフレーム・レート値なども設定できるため、こだわる場合はこちらから変更を。あとはOKをクリックして書き出せば完了です。
今回でGettyによるFL Studio連載は最終回となります。FL Studioは操作が直感的で扱いやすいだけでなく、本当に多くの便利機能が搭載されているとても奥の深いDAWだと思います。もしこの連載を通じてFL Studioでの制作に興味を持ってくれたり、UKハードコアを作ってみたいと思ってくれたならうれしいです。最後まで読んでくれた読者のみなさまに心から感謝します。また会う日まで!
Getty
【Profile】東京都内を中心に活動するDJ/プロデューサー。個人レーベルDROP FREVKERを主宰する。高速ダンス・ミュージックUKハードコアをメインに制作し、ベース・ドロップを主体とした激しいサウンドを得意とする。2018年よりHARDCORE TANO*Cへ加入。MARVELOUS! WACCA、KONAMI BEMANIシリーズなどのアーケード音楽ゲームへ楽曲が多数収録されている。『アイドルマスター ミリオンライブ!』の公式リミックスも担当した。
【Recent work】
『FLVSH ØUT』
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(DROP FREVKER)
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