「MOTU UltraLite MK5」製品レビュー:最大18イン/22アウトを実現するシリーズ5世代目のオーディオI/O

MOTU UltraLite MK5 製品レビュー:最大18イン/22アウトを実現するシリーズ5世代目のオーディオI/O

 MOTUから新しいオーディオI/O、UltraLite MK5が登場した。UltraLiteは、MOTUのハーフ・ラック・サイズのオーディオ・インターフェース・シリーズ。かなり歴史のあるシリーズで、このUltraLite MK5が5世代目となる。

高品質なDAコンバーターES9026Proを搭載
ムチッとした低域をしっかりと再生する

 UltraLite MK5はスチール製のボディで重みもあり、かなりしっかりとした高級感のある作りで好印象。こういう機種は持ち運ぶことも多いと思うので、この辺りは大事なポイントとなるだろう。本体正面のディスプレイは今回新しくなり、前モデルと比べてダーク・モード的な表示に。有機LEDを使用しているので、バック・ライトで照らしているのとは違ってかなり自然な見やすさになっている。ステージ袖など暗い状態で見る際にもまぶし過ぎず、個人的にはかなりお薦めできるポイント! そして本体内にはDSPを搭載しており、内部ミキサーやエフェクトを使ったルーティングも行える。

 

 入出力としては、48Vファンタム電源供給が可能なマイク/ライン/Hi-Z入力(XLR/TRSフォーン・コンボ)×2系統、ヘッドフォン・アウト(ステレオ・フォーン)、ライン入力(TRSフォーン)×6系統、ライン出力(TRSフォーン)×10系統、S/P DIFオプティカル/ADAT入出力、S/P DIFコアキシャル入出力が備わっている。これにより最大入力18ch/出力22chをそれぞれ独立して使用することが可能だ。

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リア・パネル。写真左側にはMIDI IN、OUTとオプティカル入出力(ADATまたはS/P DIF)、S/P DIFコアキシャル入出力、USB Type-C端子が並ぶ。同中央から右側にかけては、ライン・アウト×10系統とライン・イン×6系統(いずれもTRSフォーン)を装備

 量子化ビットは24ビット、サンプリング・レートは44.1/48/88.2/96/176.4/192kHzに対応し、コンピューターとはUSB Type-C 2.0ポートで接続。USB Type-Aとの接続ケーブルも付属しているので汎用性は高いと言えるだろう。

 

 DAコンバーターには高品質なESS ES9026Proを採用し、ダイナミック・レンジが125dB、ひずみ率が-114dBとなっている。UltraLite MK4とUltraLite AVBも使い、32ビット/96kHzで同じ曲を再生して聴き比べてみた。どれも優れた音なのだが、UltraLite MK5は低域のムチっとしたところを一番しっかりと再生できていると感じる。

 

 UltraLite MK5には3つのノブがあり、メイン・アウトとヘッドフォンの音量やマイク・ゲインの調整、セットアップ・モードでのサンプリング・レート変更など、基本的な設定が本体上で行えるようになっているが、さらに細かいルーティングやエフェクト設定はCueMix 5というアプリを使用する。このCueMix 5の操作性がものすごく良い! UltraLite MK4とUltraLite AVBはWebブラウザー・アプリからコントロールする仕様になっていて、もちろんそれはそれで汎用性があってよいのだが、使用するWebブラウザーやOSの環境などに左右されてしまっていた。CueMix 5はコントロールする際の反応の速さと、パラメーターが整理されたことによる使いやすさがかなりの好印象。ぜひUltraLite MK4でも使いたいと思ったが、残念ながらCueMix 5という名から分かるようにUltraLite MK5でしか使えないようだ。

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UltraLite MK5のコントロール・アプリ、CueMix 5。幾つかの画面で構成されており、チャンネル設定やインプット・モニター設定、各入出力のルーティングが行える。DSPエフェクトを使用して、インプット・モニター音にEQやゲート、コンプ、リバーブを適用することも可能だ

 CueMix 5は幾つかの画面を備えている。ホーム画面では、ワンタッチでメイン・アウトやヘッドフォンに各アナログ入力をアサインできるInput Monitoringボタンがあり、各インプットにどんな音が入ってきているかを簡単に確認可能。メイン・アウトやライン・アウトのミックスはそれぞれ別の画面が用意されており、フェーダーで各インプットのバランスを細かく設定することができる。

 

4種類のDSPエフェクトを搭載
バンド・メンバーのモニター音も細かく作り込める

 前述の通り、入力される信号にはDSPエフェクトを使用することが可能だ。搭載しているのは、4バンド・パラメトリックEQとゲート、コンプ、Small/Medium/Largeからタイプを選べるリバーブ。どのエフェクトもグラフィカルな表示なので、ビギナーでも操作が分かりやすいだろう。もちろん、モニターのみエフェクトを使い、DAWに送る音にはエフェクトをかけないということも可能。バンドで録音する際などは各メンバーへのモニター音をエフェクトで細かく音作りしつつ、DAWには素の音をレコーディングすることができるわけだ。ちなみに、DSPミキサーでなくDAWからのモニターであっても2.4msという超低遅延(96kHz/バッファー32サンプルのとき)。さまざまなシチュエーションでもレコーディングやストリーミングがかなり快適にできるだろう。Mac/Windowsはもちろん、iOSデバイスにも対応しているので、APPLE iPadやiPhoneとUltraLite MK5で手軽にモバイル・レコーディングも可能だ。

 

 小さく頑丈なボディに高音質&高性能を詰め込んだUltraLite MK5。音楽制作からバンド・レコーディング、需要の高いライブ・ストリーミングなど、多彩な場面で活躍してくれる一台だ。DAWのPerformer Liteや100種類以上の楽器サウンド、6GB分のサンプル・パックも付属しているのも魅力。ぜひ使ってみてほしい。

 

守尾崇
【Profile】作編曲家/キーボーディスト。これまでに浜崎あゆみやケツメイシ、Charisma.comなどの作品を手掛ける。accessやD-LITE、SPYAIRのライブではマニピュレーターとしても参加。

 

MOTU UltraLite MK5

オープン・プライス

(市場予想価格:84,700円前後)

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SPECIFICATIONS
▪ビット/サンプリング・レート:24ビット/44.1/48/88.2/96/176.4/192kHz ▪オーディオ入出力:最大18イン/22アウト ▪ダイナミック・レンジ:120dB(ライン・イン)、125dB(ライン・アウト)、115dB(マイク・イン)、118dB(ヘッドフォン・アウト) ▪ひずみ率:–114dB(ライン・イン&アウト)、–113dB(マイク・イン)、–110dB(ヘッドフォン・アウト) ▪外形寸法:220(W)×450(H)×175(D)mm ▪重量:1.31kg

REQUIREMENTS
▪Mac:macOS 10.11以降、INTEL Core I3以上のプロセッサー(APPLE M1を含む) ▪Windows:Windows 10、INTEL Core I3以上のプロセッサー(同等のAMDプロセッサーを含む) ▪iOSデバイス:iOS10.13以降 ▪共通:4GB以上のRAM(8GB以上を推奨)

製品情報