膜が一枚取れたような鮮明なサウンドで
本来の音を忠実に鳴らしてくれている印象です
YAMAHAが新開発したパワード・モニター・スピーカー、MSP3A。MSP3の後継機種にあたり、汎用性の高さはそのままに、よりクリアな低域を再現する同モデルを、第一線で活躍するクリエイターがレビューする。第3回は、編曲まで自身で手掛けるシンガー・ソングライターの加納エミリが登場。彼女は普段からMSP3を使用しているため、新旧との違いについても詳しく聞いてみよう。
Photo:Chika Suzuki
Overview|MSP3A
オープン・プライス(市場予想価格17,380円前後/1台)
小型のパワード・モニター・スピーカー、MSP3の後継となるモデル。ウーファーの下部にはトーン・コントロール(LOW/HIGH)と、2系統の入力のレベル・コントロール(LINE 1/LINE 2)を備える。リア・パネルには独自技術“ツイステッドフレアポート”を採用し、よりクリアな低域再生を実現。軽量化にも成功し、可搬性もアップした。
すぐに調整できるフロント・パネルのノブ
箱からMSP3Aを取り出してまず思ったのは、フロント・パネルにあったバスレフがリア・パネルに移動したことで、より一層ミニマルでおしゃれに見えるということ。プライベート環境にあるスタジオのインテリアにも、十分取り入れやすいデザインだと思います。
またMSP3Aのサイズ感はMSP3とほとんど変わらないのですが、重量に関しては若干軽くなった印象です。スペックを確認してみると、MSP3は1台4.4kgに対し、MSP3Aは1台3.6kgと軽量化されていることが分かります。一人で楽々と持ち運べる手軽さも、MSP3Aの魅力の一つですね。
フロント・パネルの下部には、MSP3と同様に音響補正用のLOW/HIGHノブと、LINE1/LINE2のボリューム調整ノブが備えられています。特にLOW/HIGHノブは、曲のイメージ作りにはもってこいの機能。リファレンス曲や制作中の楽曲において、もし低域/高域が大きかったらどう聴こえるだろう?と思ったときに、これらのノブでさっと調整できるところがお気に入りです。毎回EQプラグインを立ち上げるのではなく、フィジカルでできるところが直感的で良いと思います。また、細かい部分ですがLINE1のノブは12時の位置に来ると“カチッ”と止まるところも、非常に重宝していますね。
低域はとてもクリアなサウンド
MSP3Aの試聴では、現在制作中のシンセ・ポップ曲を鳴らしてみました。最初に感じたのは、MSP3と比べて音の定位感がより分かりやすくなったということ。MSP3も自然な鳴りがするのでお気に入りだったのですが、MSP3Aではさらに一枚膜が取れたような鮮明なサウンドがします。
特に高域成分がよく見えるので、シンセやスネア、ベース、キックなどの“アタック感”をよりとらえやすくなった印象です。ボーカルにおいては、もこもこした感じが取れて歌詞をよく聴きと取れるようになりました。ちなみに私は空気感を演出するためにシンセ・パッドを多用するのですが、MSP3Aでは空間がより立体的に聴こえる感じがしますね。
低域はとてもクリアなサウンド。過度に誇張されていないため、本来の音を忠実に鳴らしてくれているように感じます。また、私はアレンジしながらミックスもしていくタイプなのですが、MSP3Aを使って作業すると“音作りにおけるジャッジ”が非常に早くなりました。こんなに素晴らしいモニターがリーズナブルな価格で手に入るのは、ますます魅力的です。最初の一台目からMSP3Aを購入しておけば、末永く使い続けられるスピーカーになることでしょう。
加納エミリ
【Profile】北海道札幌市出身のシンガー・ソングライター。自身で作詞/作曲からアレンジ、プロデュースまで手掛け、ニューウェーブやテクノ、インディー・ロックをルーツとした楽曲を制作している
YAMAHA MSP3A 製品情報
YAMAHA MSP3A
オープン・プライス
(市場予想価格17,380円前後/1台)
SPECIFICATIONS
■ユニット構成:4インチ径ウーファー+0.8インチ径ツィーター ■クロスオーバー周波数:4kHz ■周波数特性:67Hz〜22kHz(−10dB) ■最大SPL:99dB SPL(1m) ■アンプ出力:22W ■入力感度:−10dB(RCAピン)、+4dB(XLR/TRSフォーン・コンボ) 入力インピーダンス:10kΩ ■外径寸法:144(W)×236(H)×166(D)mm ■重量:3.6kg