「YAMAHA MSP3A」製品レビュー:バスレフに独自技術のポートを新規採用したニアフィールド・モニター

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 筆者が先代のYAMAHA MSP3を知ったのは、海外で活躍しているマニピュレーター/プログラマーの友人が使っているのを見たのが最初。ラックの上にポツンと乗っていたのが印象的で“これだ!”とばかりにすぐ購入し、コンサートのリハーサルや現場での作業、確認に使用していました。また、数年前からは、スタジオ兼作業場のモニター・スピーカーとしても、同社MSP7、ラジカセとともに使用しています。そのMSP3がMSP3Aとしてリニューアル。どのように変わったのか見て、聴いてみたいと思います。

MSP3から800gの軽量化を実現
マイク・スタンド・アダプターを取り付け可能

 まずは外見ですが、MSPシリーズに共通する特徴だった前面のポートがなくなっています。その代わり背面にツイステッド・フレア・ポートという独自の技術を採用した新たなポートがあります。ポート・サイズは意外と大きな印象です。入口から出口に向かって広がり、さらに“ひねり”を加えることで気流の乱れを抑えてクリアで忠実な低域再生を実現しているそうです。後ほど詳述しますが、これが良いです。

入力はRCAピン、XLR/フォーン・コンボ端子をそれぞれ搭載。左上に見えるのが独自技術のツイステッド・フレア・ポート

 LINE1/2のレベル・コントロールや、トーン・コントロールで100Hzと10kHzをそれぞれ±3dBできるのはMSP3と同じ。また、全体のサイズ感やトップ部分が手前に傾斜している感じもそっくりですが、奥行きが1mm短く、重量は800g軽くなっているようです。軽量化は外に持ち出すときにはありがたいですね。出力は若干上がって22W。先代MSP3でもコンサートの現場で確認するときに問題になったことは無いので、このくらいあると自宅スタジオには十分かと思います。

 

 仕上げの感じも同じように見えます。YAMAHAの文字がなくなって音叉ロゴ・マークだけになったのは、すっきりとしていいかもしれません。あとはグリーンのLEDが小さくなって洗練された印象です。背面の接続端子は、RCAピンは同じですが、XLR端子とフォーン端子が別々に分かれていたものがXLR/TRSフォーン・コンボ端子に変更されています。

 

 先代MSP3はオプションが充実し、マイク・スタンド・アダプターBMS-10Aを取り付けられるのでコンサートの現場で重宝しましたが、これはMSP3Aでも引き継がれているので、同じ使い方ができるでしょう。

中域から低域にかけての解像度が向上
ホーム・オーディオのサラウンドにもお薦め

 では、音の印象。先代のMSP3はコンパクトなサイズながらよく鳴るし、全体的なバランスも悪くないと思います。特に、ミックスのバランスはやっぱり小さめの音で確認をするのがいいので重宝しています。ただ、スモール・サイズのモニターなので、若干高域が伸びないのと、中域が混濁化してしまう部分がありました。

 

 で、このMSP3A。MSP3とかなり似た傾向ですがすごく改善されているな、というのが第一印象。MSP3とほぼ音量を合わせて聴き比べてみたところ、音の質感や傾向は変わらず、中域から低域にかけての分解能、解像度が上がった感じがします。これには、ツイステッド・フレア・ポートの効果ががぜん分かる印象を持ちました。また、低域の処理がうまくいっているためか、高域への影響が薄まってこの辺りの帯域も抜け感が変わっています。リバーブの消え際やグリッチのチリチリの質感もしっかりと聴こえ、現代的にリニューアルされた感じが伝わってきました。

 

 トーン・コントロールは効きどころが良く、うまく使うと利用価値は大きいでしょう。自宅スタジオやホーム・オーディオのサラウンドとして積極的に使うのもアリだと思います。うちのスタジオ兼作業場では、MSP3をインシュレーターで点置きしているのですが、この解像度や低域の感じなら要らないかもしれないです。ほかにも、自宅でコンピューターのディスプレイやノート・パソコンの両サイドに置くときに、スピーカー・スタンドに置いたり手前を持ち上げたりといった工夫をすると思うのですが、MSP3Aはあまり気にすることなく、ポンと置いて使えるかもしれないと思いました。

 

 前半にも書いた通り、筆者はスタジオ兼作業場では、MSP3とMSP7を切り替えて使っているのですが、このMSP3Aに入れ替えても、違和感無く作業を進めることができそうです。エンジニアの友人の中でも、作業中のモニターや自宅用などで使っている人が多いMSP3。筆者もここ数年、コンサート・マニピュレートの現場での作業、確認用も相変わらずMSP3を用意してもらったりしていて、実は一番聴いているスピーカーかもしれません。MSP3Aは、そういったYAMAHAのモニター・スピーカーに慣れている人や、小さめのサイズ感でバランス良く鳴るスピーカーを探している人にも、MSP3Aはお薦めです。さて、うちもリニューアルしようかな〜。

 

山本哲也
【Profile】anonymass、Crooked Sun、WORLD STANDARDに所属するクリエイター。Luki、DAITA、西野カナ、aiko、岸谷香などのツアーをサポート。エンジニアとしての拠点はStudio目黒倉庫。

 

YAMAHA MSP3A

オープン・プライス(市場予想価格:17,380円前後/1基)

 

 

SPECIFICATIONS
▪ユニット構成:4インチ径ウーファー+0.8インチ径ツィーター ▪クロスオーバー周波数:4kHz ▪周波数特性:67Hz〜22kHz(−10dB) ▪最大SPL:99dB SPL(1m) ▪アンプ出力:22W ▪入力感度:−10dB(RCAピン)、+4.0dB(XLR/TRSフォーン・コンボ) ▪入力インピーダンス:10kΩ ▪消費電力:30W ▪外径寸法:144(W)×236(H)×166(D)mm ▪重量:3.6kg

 

製品情報

 

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