FL Studioで作るUKハードコア、迫力を生むリード・メロディ編 〜Gettyが使うFL Studio 20【第3回】

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 DJ/作曲家のGettyです。主にUKハードコアというジャンルのダンス・ミュージックを制作しています。UKハードコアの肝となる要素は、なんと言っても迫力のあるリード・メロディです。今回は、リード・メロディ構築に便利なFL Studioの機能やプラグインを中心に紹介していきます。

Fruity Layerを活用して
複数のシンセをレイヤーする

 近年のUKハードコアはハードスタイルの影響を強く受けており、海外のビッグ・フェスなどでも映えるような迫力のあるサウンドが主流になってきています。特にリード・メロディにおいては、しっかりとした芯となる音と、ステレオ感のある空間の広がりが肝です。僕がリードを作るときは、1つのシンセで鳴らすのではなく、必ず複数のシンセで音を重ねて厚みを出していきます。意識することは“芯となる成分”と“ステレオ感を担う成分”の音をレイヤーすること。その際に便利なのがFL Studio付属プラグインのFruity Layerです。これを使えば複数のシンセをMIDIキーボードで同時に演奏したり、1つのピアノロールで制御できるようになります。Fruity Layerを立ち上げたら鳴らしたいシンセをChannel Rackで選択し、“Set children”をクリックしてセッティング完了です。

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チャンネル同士をリンクすることで、サウンドのレイヤーが行えるFruity Layer。Channel RackからリンクさせたいCha nnelを選択した後、LayerのSet childrenで設定が行える

 音に厚みを増すために、リード・メロディに合わせてコードも鳴らします。音色はスーパー・ソウと呼ばれる音を使うことが多いです。リードのメロに合わせてコードを打ち込むときには、ピアノロールのメニューの“View”→“Ghost channels”にチェックを入れておくと便利です。同じパターン内の別クリップのMIDIノートを薄い色で表示することができるため、打ち込み効率が格段にアップします。

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ピアノロールで“Ghost channels”をオンにすれば、同じパターン内の別クリップのMIDIノートが薄く表示される

 コードを打ち込むときに便利なのが、ピアノロールに付いているスタンプ機能。ピアノロールの左上のスタンプ・マークをクリックして任意のコード名を選択すると、コードの構成音をワンクリックで入力することができます。また、FL Studioでは作っている曲のスケールに合わせてピアノロールの表示をカスタマイズすることも可能です。ピアノロールのメニューから“View”→“Scale highlighting”を開き、任意のスケールを選択することで、そのスケール上で使われている音のみがハイライト表示されます。使用すべき音を一目で視認することができ、効率的に打ち込みを進められるでしょう。

 

ハイパス&ローパス・フィルターで
ビルドアップの緩急を生む

 シンセを複数立ち上げると、どうしてもプロジェクト全体の動作が重くなってきてしまいがちです。そんなときは画面上部メニューの“TOOLS”から、“Macros”→“Switch smart disable for all plugins”をクリックしてオンにしておきましょう。これは、現在音が鳴っていないプラグインをオフにする機能のため、CPU負荷を大幅に低減することが可能です。また、ソフト・シンセのクリップをオーディオ化(フリーズ)することも有効です。ピッカー・パネルのパターンを右クリック→“Render and replace…”を押すことで、プレイリスト上のパターン・クリップをオーディオに自動で置換することができます。

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メニューのTOOLSにある“Switch smart disable for all plugins”をオンにすると、音が鳴っていないプラグインは自動的にオフになる。CPU負荷を抑えることが可能だ

 音のステレオ感を広げたいときに僕がよく使うプラグインが、Fruity Stereo ShaperとFruity Delay 3です。Fruity Stereo Shaperは音のL/Rchの出力に作用し、ステレオ幅やパンを変化させるプラグインです。インターフェースはスライダーが4つとノブが2つというシンプルな構成なのですが、作用の仕方が複雑なのでまずはプリセットで慣れていくのがお勧めです。ステレオ感を増すときにはプリセットから“Stereoize 3”を選択します。ステレオ感が強過ぎるときはDELAYとPHASEノブを調節していきましょう。

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ステレオ・イメージを調整できるFruity Stereo Shaper。FL Studio 20 Signature(37,400円)、FL Studio 20 Producer(28,600円)、FL Studio 20 Fruity(17,600円)の全グレードに付属している。ほかにもクロス・グレード版や解説本バンドル版を用意しているので、詳しくは製品サイトをチェックしよう

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アナログ・スタイルのディレイ・プラグイン、Fruity Delay 3。筆者のパラメーター設定はこの画面を参考にしてほしい

 Fruity Delay 3をリードにかける場合、ピンポン・ディレイをステレオ感強めに薄くかけると効果的。残響がうっすらと広がるようなイメージでかけたいので、フィードバックがしつこくなり過ぎないように調節するのがコツです。TIMEは4:0でPing pongを選択し、STEREOは最大値へ。TEMPO SYNCとKEEP PITCHをオン、フィードバックはLPの状態でLEVELのノブは控えめに10時くらいにしましょう。DIFFUSIONのLEVELは12時くらいでSPREADは2時くらいです。FEEDBACK DISTORTIONはLimitを選択し、LEVELを2時くらいにしてかけてあげます。WETも強過ぎるとしつこいので、40%くらいにすることが多いです。

 

 UKハードコアは、先に紹介したような迫力のあるリード・リフや激しいキック&ベースが最大の特徴ですが、それらを際立たせるためにはフィルやビルドアップなどで緩急をしっかり付けてあげることが大事です。このとき、音を質感を変化させるためによく使われるのがハイパス&ローパス・フィルターです。僕がフィルターを使いたいときにサクッと立ち上げがちなのが、Fruity Parametric EQ 2。本来はEQですが、手軽な扱いやすさからフィルターとしても重宝します。

 

 ビルドアップを例にFruity Parametric EQ 2でのフィルターのかけ方を紹介しましょう。まずFruity Parametric EQ 2を立ち上げたら、プリセットから“40Hz + 18kHz cut”を選択し、ハイパス側(Band 1)とローパス側(Band 7)の周波数をオートメーションで動かしていきます。オートメーション・クリップの作り方は、FREQノブの上で右クリックして“create automation clip”を選択するだけ。FL Studio付属プラグインはどれも右クリックから簡単にオートメーションを書くことができるので、かなり効率的に制作を進めることができます。

 

 オートメーションを描いたプロジェクトを見てください。流れとしてはローパス→ハイパスの順に徐々にフィルターがかかっていくイメージです。このときに意識するのがドロップへの期待感と低音の緩急。まずビルドアップに入ったらローパスで高域を絞り、ドロップ前に近付くにつれて徐々に弱め、同時にハイパスをかけていきます。ドロップ前にあえて低域を削ることにより、ドロップでキックとベースが入ってきたときに一気に低音の世界へ引き込むことができます。このときに注意する必要がある点がラウドネスです。低域を削ることでどうしても耳に刺さる音が強くなってしまいがちなので、少しだけフェーダーを下げることで調整します。

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ビルドアップなどで使うフィルターにはFruity Parametric EQ 2をよく使う。7バンドのうち、Band 1とBand 7を使ってハイパス&ローパス・フィルターを作成。周波数をオートメーションで動かして、ビルドアップを演出する

 さて、次回はFL Studioの隠れた超便利動画制作プラグインであるZGameEditor Visualizerの使い方を中心に解説していこうと思います。

 

Getty

【Profile】東京都内を中心に活動するDJ/プロデューサー。個人レーベルDROP FREVKERを主宰する。高速ダンス・ミュージックUKハードコアをメインに制作し、ベース・ドロップを主体とした激しいサウンドを得意とする。2018年よりHARDCORE TANO*Cへ加入。MARVELOUS! WACCA、KONAMI BEMANIシリーズなどのアーケード音楽ゲームへ楽曲が多数収録されている。『アイドルマスター ミリオンライブ!』の公式リミックスも担当した。

【Recent work】

『FLVSH ØUT』
Getty
(DROP FREVKER)

 

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