EARTHWORKS Ethos レビュー:ボーカル/ナレーションに特化したステンレス製コンデンサー・マイク

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 EARTHWORKSからEthosというマイクが発売されました。最近増えた配信用途に向いたマイクの上位機種と言えるモデルで、“Broadcasting Microphone”と謳われている通り、プロ仕様を十分に満たしたマイクとなっているようです。

高域まで伸びたとてもフラットな音質。中低域もあり芯の太さを感じられる

 EARTHWORKSというと、筆者はQTCシリーズにとてもなじみがあります。QTCは音楽などの収録にとどまらず、サウンド・ロケなどのマイクとしてもとても優秀。測定用のマイク開発から始まったメーカーだけあり、とてもフラットな特性とトランスペアレントな印象で、収録後の音作りがとてもしやすいマイクです。そんなEARTHWORKSの新しいマイクということもあり、Ethosへの期待はとても高まります。

 

 箱を開けてみると、ソリッドなステンレス・スチールの筐体に黒いフォーム・ウィンド・スクリーン、そしてマイク・スタンド用のアダプターがマイク本体に付いています。このアダプターはスタジオなどで人気があるTRIAD-ORBIT M2-Rとなっていて、とても使い勝手が良いです。姉妹機のUSBマイクIconにはスタンドも付いていましたが、Ethosには付属していません。また、USB接続のIconに対し、EthosはIcon Pro同様にXLRで接続するコンデンサー・マイクとなっており、プロ仕様であることがうかがえます。デザイン的には配信で画面に写り込んでも映える精かんなたたずまいです。

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マイク・スタンドへ取り付けるアダプターはマイク本体に装着されている。プロの現場でよく使用されているTRIAD-ORBIT M2-Rが採用されており、ボール・ジョイントのため微細な調整もしやすい

 では、実際に音質や使い勝手など検証してみます。手に取ってみると450gという重量がずっしりとしていて堅牢さが伺えます。マイク・スタンドへの設置はM2-Rのおかげでとてもスムーズで、思った位置にしっかりと固定できました。ボール・ジョイント式のため、とても楽です。マイク・カプセル自体はフォーム・ウィンド・スクリーン、メッシュ、スチールと3層に覆われていて、耐久性もありそうです。ウィンド・スクリーンの取り外しは簡単にできます。

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ウィンド・スクリーンを取った様子。メッシュとステンレスの層によりノイズを防いでいる

 “Broadcasting Microphone”と謳っているので、主にナレーションでチェックしてみましょう。まずぱっと聴いた印象で、“これは仕事で使える!”と思いました。周波数特性は想像していた通りとてもフラットで、高域までかなり伸びている印象。色付けが無く、声そのままをキャプチャーしてくれる感じです。EARTHWORKSならではの解像度の高さ、立ち上がりの速さがうかがえます。

 

 気になるディップやピークなども特に感じられません。中低域もしっかりしていて、芯の太さが感じられます。普段の収録で主に使っているNEUMANN U87AIは高域に少し持ち上がった部分があり、その先から緩やかに落ちていくイメージで、声質によっては高域で少し聴きづらくなることがあります。その点、Ethosはかなり上の帯域まで伸びているものの、決して耳に痛かったりするのではなく、エア感のようなニュアンスが加わる印象です。

シビア過ぎないスーパー・カーディオイド。吹かれや振動にも強い内部構造

 指向性はスーパー・カーディオイドということもあり、正面以外からの不要な音はかなり排除できます。それでいて正面に関してはすごくシビアということはなく、多少ずれても音質の変化はとても少なく感じました。これらは複数本での同時収録であったり、正面を外れがちになるセリフ収録にはとても有利です。

 

 吹かれに対しても優れていると思いました。これはフォーム・ウィンド・スクリーン、メッシュ、スチールと3層構造になっていることが大きいのでしょう。振動やハンドリング・ノイズも、内部のダンパーと堅牢なステンレス・スチール製の構造により影響を受けにくくなっています。マイク感度についてはU87AIほど高くはないですが、その分かなりの音圧まで破たんすることはありませんでした。スペック表を確認してみると、最大入力レベルはIcon Proの139dBよりもさらに高い145dBとなっており、これには納得です。近接効果をチェックしてみたところ、かなり近付いても決して極端に膨らむことはなく、十分コントロールできると感じました。

 

 いろいろとチェックしてみましたが、これといった欠点が見つからないマイクです。しいて言うならば、重量がそれなりにあるのでマイク・スタンドはしっかりとしたものを使った方がよいということくらいでしょうか。

 

 EthosはIconの上位版という側面はあるのですが、実際に聴いてみると同社のスタジオ・ボーカル・マイクのフラッグシップ・モデルであるSV33の姉妹機ではないかと思うくらいに良いマイクだと感じました。ダイアフラムのサイズも同じ14mm、最大入力レベルも同じ145dB、そのほかのスペックに関しても近いです。今回、多くの音源では試せませんでしたが、テストを行ったナレーションやセリフの収録はもちろん、楽器の収録にも十分使えるマイクだと思います。さまざまな録音シーンで試してみたくなる、そんなマイクです。

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マット・ブラック・カラーのEthos B(95,700円)もラインナップしている

 

山本雅之
【Profile】エス・シー・アライアンス サウンドクラフト ライブデザイン社スタジオセクション所属のエンジニア。フォーマットにとらわれないマルチチャンネルの映像作品などの録音/ミックスを手掛けている。

 

EARTHWORKS Ethos

89,100円

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SPECIFICATIONS
▪周波数特性:20Hz〜30kHz ▪指向性:スーパー・カーディオイド ▪感度:20mV/Pa(–34dBV/Pa) ▪SN比:78dB(A-Weighted) ▪最大入力レベル:145dB ▪出力インピーダンス:65Ω ▪セルフ・ノイズ:16dB(A-Weighted) ▪外形寸法:約57.1(φ)×約175.2(H)mm ▪重量:450g

製品情報

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