Berlin Calling〜第68回 欧州主要国が再びロックダウン 厳しい冬とイベント再開の可能性

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9月から館内を即席美術館のStudio Berlinとして運営し、多くの来場者が訪れていた有名クラブBerghainも、少なくとも12月まで封鎖となり、売り切れていた前売り券も11月分は払い戻しになった

 

欧州主要国が再びロックダウン
厳しい冬とイベント再開の可能性

 先月の本コラムでは“クラブ・カルチャーの日”としてベルリン市が主催したイベントについて紹介した。しかし新型コロナの感染者激増を受けて、本稿執筆時の11月2日からドイツ全土は再び、部分的なロックダウンに突入している。11月末まで継続される予定だ。先週末までは、ソーシャル・ディスタンスなどの感染予防対策を遵守することを条件に音楽イベントなども行われていたのだが、これで一切禁止となった。美術館や博物館も閉館し、2世帯以上が同じ空間に集うことも禁止されているので、コンサートなどのストリーミング配信さえも難しくなる。

 

 西ヨーロッパの主要国である、イギリス、フランス、スペイン、オランダ、ベルギー、イタリア、スイスなどは、いずれもほぼ同様の措置が取られている。渡航制限も厳しくなったため、アーティストのみならず、イベント主催者、会場経営者などを含む音楽イベント産業の活動は、ほぼ完全にストップすることになった。映画館や劇場も同様なので、文化/芸術セクター全般に大打撃である。さらに遠のいた再開への道のりに、絶望的な気分で冬に突入する。

 

 先日とあるオンライン上のディスカッションで、音楽クラブTresorのオーナーであるディミトリ・ヘーゲマン氏が“ドイツ国内の医療研究機関や製薬会社とともに、安価でスピーディなウィルス検査を開発中だ”と言及。来場希望者全員がイベント当日に検査を受け、陰性証明を入店条件にすることがイベント再開の最も現実的な方法であろうと語っていた。筆者も、現状ではこれ以外に屋内の音楽イベントが元に近い規模で再開できる方法は無いと思っている。

 

 また8月に、世界的に注目を集めていた“コンサート感染シミュレーション実験”の分析結果(https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2020.10.28.20221580v1.full.pdf)が10月29日に発表された。この実験は、近郊の町ライプツィヒで公的支援の下、科学者グループによって1,200人の被験者を対象に行われたもの。これによれば、屋内のコンサートやスポーツ観戦などのイベントで、来場者の人数を制限し、観客がマスクを着用して会場内を定期的に換気し、出入り口の数を増やした場合に“イベント中の感染確率は極めて低い”と結論付けられた。これは朗報だったが、今回の実験のように各現場を厳密に管理できるかは別問題である。このような研究は今後も続けられるようなので、ブレイクスルーを期待したいが、いずれにせよ今年の冬は非常に厳しいものになりそうだ。

 

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10月23日でサマー・タイムも終わり、日照時間も短くなったベルリン。例年ならばクラブやコンサートは地元の人で賑わう時期だけに、今年は新型コロナの感染だけでなくメンタル・ヘルスの問題も懸念される

 

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浅沼優子/Yuko Asanuma

【Profile】2009年よりベルリンを拠点に活動中の音楽ライター/翻訳家。近年はアーティストのブッキングやマネージメント、イベント企画なども行っている

 

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