第一線で活躍するエンジニアに毎月お薦めの新作を語ってもらう本コーナー。Nagie氏の今月のセレクトは、ヨンシー『シヴァー』、オウテカ『SIGN』です。
まるで深海底に居るような感覚に陥るビートレスや
民族的なリズムが多用されるデジタル・ビートを収録
音楽以外のことが激動だったため、良い音楽についての印象がうすい2020年だったが、恐らく僕の今年ナンバー・ワンとなる作品がいきなり出てきた。シガー・ロスのギター・ボーカル、ヨンシーのソロ・アルバムだ。今年聴いたどのアルバムよりも、音楽性とサウンドなどすべてにおいて頭２つ抜きん出ていると感じた。
アルバム前半では、シガー・ロスが得意とするノスタルジックなボーカルに、シンセ・パッド、ボーカル・ハーモナイズ・エフェクト音が絡むビートレスの曲を披露。まるで深海底に居るような感覚だ。「ワイルドアイ」では、一転して激しいデジタル・ビートを展開。民族的なリズムのブレイクが多用される曲構成が良い。「ソルト・リコリス（ウィズ・ロビン）」は、唯一ポップで異色の雰囲気を漂わせている。例えるならば、フルコースの懐石料理にいきなりパフェが出てきた感じだ。これはこれですごく楽しめた。
音楽的なコード感×デジタルなノイズ・サウンド
絶妙なバランスを保って共存させる作風がアップデート
お次は、個人的に外すことのできないオウテカの新譜。オウテカの魅力は、音楽的なコード感とデジタル・プロセッシングされたノイズ・サウンドが、ギリギリ絶妙なバランスを保って共存しているところだと思う。
本作では、まさにそのバランスがより洗練されたものになっていると感じた。特に、１曲目の「M4 Lema」が気に入っている。メロディックな部分はキーボードで“弾きました”といった感じが無く、何と言うか……歌や動物の鳴き声のように有機的なニュアンスまで含んでいるようだ。彼らの音作りのすごさを感じた。
Nagie
【Profile】ANANT-GARDE EYES、aikamachi＋nagie、CM、アニメ、劇伴、映像音楽中心に活動。Vocaloidライブラリー開発も行う
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