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Part 2|生感のあるベース・ラインを作る 〜【特集】打ち込みでバンド・サウンドを作る!

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ギターやベース、キーボード、ドラムによるロック・バンド・サウンドは各演奏者のアンサンブルが魅力だ。しかし、狭い空間に多くの人が集まることを避ける必要がある現在、バンドでの演奏は難しくなってしまっている。そういう事情もあり、昨年から自宅の制作環境を整えた人は多くなったが、バンドマンが一人自宅で作曲をするとなったとき、“自分の担当楽器以外は演奏できない!”となるのはよくあることだろう。だが、今は高品質なソフトウェア音源がたくさんリリースされており、生楽器と比べてそん色無いサウンドを打ち込みで鳴らすことが可能な時代。あと必要なのは、どうやって打ち込めばそれを実現できるのかだ。ロックを軸にドラム/ベース/ギター/キーボードの演奏を打ち込みで表現するテクニックを紹介。ボカロP/エンジニアのかごめPに、バンド・サウンドを音源だけで作り上げるコツを伝授してもらう。

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かごめP

【Profile】ボカロPとしての活動のほか、数多くのボーカロイド楽曲のミックスやマスタリング、インターネット配信業務も手掛ける。クリエイター集団VOCALOMAKETSとしても活動
https://note.com/kagome_p / https://twitter.com/kagome_p

 

キックと同じタイミングで鳴らす

 続いてベースの打ち込みについてです。ベースはドラムと並ぶ、曲の屋台骨。ベース・ラインの動きがギターやキーボードなどのパターンも左右しますので、強固な土台を築いていきましょう!

 

 ロック系ベースで、アタックの強いピック弾きのエレキベースを選択します。さまざまな音色が収録された統合音源系では、大抵の場合“Electric Bass”や“Pick Bass”“Rock Bass”といった音色名で登録されています。最近はやりのエレクトロ・スウィングなスタイルを曲に取り入れる際は、指弾き(Finger Bass)やスラップ(Slap Bass)を使うこともありますが、セオリーとしてはまずピック弾きを選んでおきましょう。ソフト音源としては、SPECTRASONICS Trilian、IK MULTIMEDIA Modo Bassなどがあります。

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SPECTRASONICS Trilianは、アコースティック/エレキ/シンセといったベース・サウンドを豊富に収録する音源。34GBものコア・ライブラリーを持つ

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フィジカル・モデリング・ベース音源のIK MULTIMEDIA Modo Bass。ボディの材質、弦、ピックアップ、そしてそれらの相互作用までもモデリングし、リアルなエレキベースのサウンドを実現している

 ベースは基本的に4本の弦で構成される弦楽器で、最低音は4弦(最も太い弦)の開放弦で鳴らすE(ミ)の音です。最低音がEなのはギターとの共通項。ダウン・チューニングなどの例外はありますが、E以下の音を使うと、いざバンドで弾こうとなった際に“これだと弾けない”と言われてしまう可能性があるので、注意しましょう。

 

 ドラム同様、8分音符の刻みを基本にし、“キックと同じタイミングで弾く”のが基本です。これだけでロックっぽさがかなり出てきます。逆を言うと、キックのタイミングとズラすと一気にロック感が減ります。
 

ベロシティの強弱は少し多めに

 また、ドラムと同様に裏拍の音のベロシティを下げることが重要! 特にベースは音が単調になりがちなので、ベロシティの変化を付けることで、ミックスした際のノリもかなり変わってきます。ベースにはコンプを深めにかけることが多いので、ベロシティの強弱は自分が思っているより少しオーバーに付けた方がいいケースもあります。

 

 ベースを打ち込む際は、コードのルート音を打つのが基本です。単音で鳴らすことが基本の楽器なので、和音にはしません。低音域では、3度の音を入れていくと音がにごりやすくなるので、動かす際も基本は5度や7度の音を使うようにします(もちろん、意図があればこの限りではありません)。

 

 以上を基本に、具体的な打ち込みテクニックを紹介します。

 

オクターブの動きを加える

 ベースは基本的にルート音を中心に弾くため、あまり動ける音が多くなく、慣れないうちはひたすら8分音符弾きを繰り返すだけのフレーズになりがちです。ここに変化を付けるために、オクターブの跳躍を要所に入れていくことで、ベース・フレーズに“縦の変化”を付けられます。

 

 要所にオクターブ上のノートを配置 

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ルート音を8分音符で弾き続けるフレーズでも、一部のノートをオクターブ上にすることで変化を加えることができる

 

 裏拍の音をオクターブ上げることで、キャッチーなベースにできます。ベロシティは裏拍を弱めで。裏拍のベロシティを強調すると、オクターブ進行というより裏打ちベースの雰囲気が強くなってしまい、“ロックと言うにはちょっと違うな……”となってしまいます。

 

 サビなどで同じ進行を2回繰り返す際は、2回目のパターンを丸ごとオクターブ上げてしまうのも手段の一つ。とはいえ、丸ごとオクターブを上げてもインパクトが薄いので、オクターブを上げるコードと上げないコードを分け、逆方向の跳躍が加わることで、曲展開に深みを付けられます。また、オクターブ上げるだけでは芸がないので、2回目はコードの7度の音(ルート音から半音1つまたは2つ)からフレーズを始めるなどの変化も随所に入れていきましょう。

 

 定番のオクターブ進行 

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ルート音を8分音符で弾き続けるフレーズでも、一部のノートをオクターブ上にすることで変化を加えることができる

 

 7度から始めるフレーズ 

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ルート音を8分音符で弾き続けるフレーズでも、一部のノートをオクターブ上にすることで変化を加えることができる

 

ノートの音価を変えてみる

 曲の展開上、ベースを8分音符で延々と続けるシーンも出てくると思います。その際にベロシティと並んで重要なのが、デュレーション=ノートの長さです。ノート分解能が♩=960ティックのとき、8分音符(480ティック)と16分音符(240ティック)の音の長さには240ティックもの長さの違いがあります。これを活用することで、さらに生き生きとしたベース・フレーズを作っていきましょう。

 

 例えば、8分音符の長さをちょっと変えるだけで、別のフレーズに聴こえます。さらにそれぞれの音符の長さを変えてみることで、見た目上は同じ8分音符刻みのはずなのに、シンコペーションの要素すら感じます。

 

 8分音符のノートの長さを調整 

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8分音符が続くフレーズでも、それぞれのノートの長さを変えてみることで、違った印象を与えることができる

 

 また、ドラムではよくあるゴースト・ノートですが、実はベースの打ち込みでも大事です。例えば、楽譜上の休符部分にごく短く弱い音を入れてみるだけで、”生感“を追加することができます。キー・スイッチなどでフレット・ノイズを鳴らせる音源を使用している場合は、こういった場面で使うとよいでしょう。オクターブでの変化とは違う“横の変化”を付けていくことで、ベースがより生き生きとしてきます。

 

 短い&ベロシティの弱いゴースト・ノートで生感を演出 

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ゴースト・ノートを入れると、実際の演奏のような“生感”が加わる

 

曲のアクセントとなるスライド

 最後に紹介するベース打ち込みのテクニックは、効果音的なサウンド”のスライドです。サビ前やイントロなどで、ベースが“ドゥーン↓”と落ちていく音を聴いたことがある人は多いと思います。あの効果、ベース専用音源を使っている場合は、あらかじめサンプルとして入っていることも多いですが、そうでない場合はピッチ・ベンドを使って表現します。

 

 通常の音源はピッチ・ベンド範囲の初期設定が±2半音なので、まずは12半音以上に設定します(24くらいまでOK)。ピッチ・ベンド範囲を変えられない音源を使っている場合は、この部分だけ別のベース音源を使っても大丈夫です。ノートは4分音符程度の長さが一般的。前にごく短いノートを入れておいてもよいでしょう。ピッチ・ベンドのラインは、直線よりは山なりの曲線の方が良い場合が多いです。

 

 スライドは4分音符程度の長さで 

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スライド音が搭載されていない音源であれば、ピッチ・ベンドで表現をする。ノートは4分音符程度で、滑らかなカーブでオートメーションを描こう

 

 ピッチ・ベンド範囲は12~24半音に設定 

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スライドの表現にはピッチ・ベンドの範囲を調整することが大切。12〜24半音くらいが良いだろう

 

 ちなみに正確に言えば、実際のベースでこの音を弾いた場合、音程移動は滑らかなものではなく、フレット(半音)単位に沿ったものとなります(フレットレス・ベースは例外)。ただ、そこを正確に再現しても聴感上の差はほとんど感じられないので、滑らかなカーブを描いてしまっても問題ありません。表現にこだわりたい人は覚えておいてください。また、スライドはせっかくの“キメの音”なので、アレンジの段階で周りの楽器は静かになってもらいましょう。これらテクニックを駆使し、単調なベース・フレーズを変化させてみてください。

 

【特集】打ち込みでバンド・サウンドを作る!

Part 1|バンドを支えるドラムを打ち込む
Part 2|生感のあるベース・ラインを作る
Part 3|打ち込みでの鬼門=ギターを表現
Part 4|ピアノ/キーボードを聴かせるワザ
Part 5|バンド・サウンドをまとめるミックス

 

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