
12種類のベースが用意され
3種類の奏法を切り替えて演奏
ソフトを立ち上げるとModelタブが選択された状態で、画面上部に音色の基本となるベース・モデルが並んでいる。いわゆるPBタイプやJBタイプをはじめ、時代や音楽ジャンルを象徴した12種類の代表的なベースから選択可能。実際にエレキベースを弾けなくとも画像だけで“あ、このベース見たことある!”というモデルがずらりとそろい、画面を眺めているだけでも楽しい。個人的には大好きなRICKENBACKERタイプもラインナップされているのが非常にうれしかった。中央に選択したベースが表示され、ピッキングする指の位置やピックアップの位置を左右にドラッグするだけで音色が劇的に変わるので、ここを操作するだけでもサウンドをかなり調整できる。
Play Styleタブでは、FINGER=指弾き、SLAP=いわゆるチョッパー、PICK=ピック弾きの3種類から奏法を選べ、MIDIコントロール(キー・スイッチ)によってリアルタイムに変更できる。グラハム・セントラル・ステーションの全アルバムをコンプリートするほどチョッパー好きの僕としては、SLAP↔FINGERを同一音色内で簡単に切り替えられるのはうれしかった。
またミュート率やタッチ強度もツマミで変更できる。特にミュート率が簡単に変えられるのは使い勝手が良い。ミュート・ベース音は別音色としてもう1トラック作ることが多かったので、パラメーターの一つとして組み込まれていると1音色内の調整で済み非常に助かるわけだ。1960年代モッズのようなハーフ・ミュート+ピック弾きの組み合わせも簡単に調整できる。
さらに、弦を離したときのデタッチ・ノイズやスライド・ノイズ音量も調整可能だ。デタッチ・ノイズは実際のベース録音の現場でもこちらから指定して録音することも多く、個人的にはベース・トラックでも重要な要素だと感じている。MIDIノート情報でデュレーション設定を丁寧に行うだけで、まるでドラム・パターンの一部のような非常にグルーブの強いフレージングを簡単に作れる。
2種類のアンプ・モデリングを内蔵し
自由度の高い音色加工が可能
Strings(弦の設定)タブでは、弦のタイプや細さはもちろん、弦の古さや傷み具合も選択でき、Electronicsタブではピックアップを2つまで選べるようになっている。そしてAmp/FXタブを選ぶと、アンプ画像に切り替わり、TubeとSolid Stateの2種類から選択でき、EQの調整も可能(画面①)。AMPツマミを最大にすると真空管アンプのような太い音が出るのには驚いた。ちょうど制作中のドラム・トラックと組み合わせてみたが、モデリング音源の線の細さは全く感じられず、強烈な存在感の音色になった。逆にAMPツマミを最小にすればアンプを通さないモデリング音色のみになるので、ほかのプラグインを使って新しい音色に加工するのも面白いだろう。

最後のControlタブを選択すると、鍵盤でのスイッチ・マッピング設定を行うことができる画面が現れる。A#-1にはGHOSTが設定されていてブラッシング音を出せるのだが、先述したデタッチ・ノイズ音とは音色が異なるので、空ピック音とデタッチ・ノイズとの組み合わせでリフを作り、ほかのプラグインで強めのモジュレーション・フィルターをかけると、生でもシンセでもないこれまで聴いたことのないようなベース・フレーズを作ることができた。個人的にはこの2音色の組み合わせだけでも、Modo Bassを使う価値を大いに感じる。
画面レイアウトに階層がほぼなく、メインのベース・モデル画面を見ながらほぼすべてのコントロールや調整ができるので、驚くほど簡単に操作ができた。さらに新たなモデリング技術のおかげか動作が非常に軽く、サンプリング音源と違い音色を読み込む時間がほぼゼロなので、音色の吟味に集中できるのはうれしい。
エレキベースを全く弾いたことのない人でも簡単に音色を調整できるが、むしろ実際のエレキベースを知らない方が大胆にパラメーターを操作できるので、シンセ・ベースを中心に使用しているユーザーにこそ導入してみてほしい音源だ。
(サウンド&レコーディング・マガジン 2017年2月号より)