STEP 6:前半部とアウトロを整える 〜4つ打ちトラック制作・超入門

STEP 6:前半部とアウトロを整える 〜4つ打ちトラック制作・超入門

DJをやっているんだけど、そろそろ自分の曲が欲しい。でも、どうやって作ればいいのか分からず二の足を踏んでいる……こんなお悩みを抱えている方は、ぜひご覧ください。4つ打ちのダンス・ミュージックを作りたい、すべてのトラック・メイカー志望者に向けた特集です! レクチャーしてくれるのは、All Day I Dreamなど海外の人気ハウス・レーベルから作品をリリースし、国内ではFriday Night Plansのアレンジなども手掛けるYuichiro Kotani氏。基礎からゆっくりと解説していただいたので、1日にワンテーマ、いや1週間にワンテーマでもコツコツ読み進めてもらえたらと思います。

解説:Yuichiro Kotani

 

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Yuichiro Kotani
【Profile】米バークリー音楽大学で学んだ後、近年はアーティストとしてAll Day I DreamやSag & Tre、Loot Recordingsといった欧米の人気レーベルからディープ・ハウスをメインに発表。国内では広告音楽制作やメジャーへの楽曲提供も行うほか、モジュラー・シンセでのライブ・パフォーマンスを積極的に展開している。

Yuichiro Kotani's Demo Track

 

 

STEP 6:前半部とアウトロを整える

 大ブレイク〜ドロップ②という見せ場をセットアップできたら、それ以外の部分であるドロップ①(大ブレイク以前の部分)やイントロ、アウトロをどうすればいいのか把握しやすくなると思います。ドロップ①については、先ほどアルペジオやSE(ノイズ)を入れるなど少し手を着けていましたが、ここからさらに作り込んでいきましょう。

 

1. 曲の序盤は引き算で作る

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 現状は、ベーシック・パターンをダーっとコピペした状態に等しいドロップ①。何かを足さなければならない? いいえ。逆に“引き算”で展開を作りましょう。まずはディレイのかかったSEと“じゃらじゃら音”のパーカッション・ループ。初期の段階で加えたものですね。インパクトはあるのですが、それだけにずっと鳴らしていると少々しつこい気がします。そこで、両者共4小節ごとに鳴らしたり抜いたりを繰り返してみましょう。8小節単位で考えると、前半4小節はじゃらじゃら音が鳴って後半にはSEが出てくる、という流れになるため、これだけでも変化が付いて聴こえるはずです。

 

2. シェイカーを鳴らして“前進感”を!

 次に注目するのは裏打ちのハイハット。定番フレーズですが、聴くにつれベースをやや後ろノリに感じさせているような気がしてきました。というわけでいったんミュートし、代わりにシェイカーを入れてみましょう。シェイカーは“もうひと段階アゲたいとき”に使うと効果的なパーカッション。Studio Oneのソフト・サンプラーSample One XTにワンショットを読み込んで、ピアノロールにMIDIノートを入力していきます。

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 ひとまずは16分音符を4連続でOK。そのうち3つ目のベロシティ(音の強さ)を上げるとグルーブが出やすいです。次に、この4つのノートをワンブロックと考え、3回コピペし全16個に。音を聴きながら、どこか1〜2カ所のベロシティをいじると、ループ感を保ったままバリエーションが作れます。このシェイカーがベースと好相性で、“低音が前に進む感じ”を出してくれています。曲の序盤なので前進感を大事にしたいと考え、ハイハットではなくシェイカーを使うことにしました。ハイハットはドロップ②で復活させ、クライマックスを演出する機能に特化させてみましょう。

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3. 徐々に音を増やすことで展開させる

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 イントロ〜ドロップ①の部分は、リズム・ループにキック、ベース、シェイカーという要素が順に加わっていくことで展開を作ります。ドロップ①に入る直前は、1小節ほどキックを抜いてみました。この“ちょっとだけキックを抜く”という手法は場面の切り替わりを示すのに便利で、なおかつ簡単なのでお勧めです。ただし、やり過ぎるとワンパターン化するため“ここぞ”という部分で使ってみましょう。

 

4. 曲の締め方を考える

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 4つ打ちのアウトロを作る際は“どうすればDJが次の曲につなぎやすいか”を考えるとよいと思います。基本的にはビートを残しておいた方がベターでしょう。また“メインのフレーズをどのようなタイミングで終わらせてビートを残すか”もセンスの見せどころ。今回はドロップ②の後にちょっとしたブレイクを設け、その次にキックが出てくる部分をアウトロとしました。アウトロではベースを消し、ドロップ②序盤で使ったループを復活させます。その後、ビートだけにして終わるという展開です。

 

Message from Yuichiro Kotani

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 今回は、基本中の基本をなるべくじっくりと解説してきました。曲作りは、最初からすべてをうまくやろうとすると、上るべき階段が果てしなく感じられて混乱してしまうと思います。なので、自分のできることから一つ一つやってみて、コツコツ積み上げていくような感じで作ればよいのではないでしょうか。そうすれば心に余裕も出てきて、楽しんでできるし、結果も良くなっていくと思います。

 

【特集】4つ打ちトラック制作・超入門