STEP 3:曲の構成をざっくりプランする 〜4つ打ちトラック制作・超入門

STEP 3:曲の構成をざっくりプランする 〜4つ打ちトラック制作・超入門

DJをやっているんだけど、そろそろ自分の曲が欲しい。でも、どうやって作ればいいのか分からず二の足を踏んでいる……こんなお悩みを抱えている方は、ぜひご覧ください。4つ打ちのダンス・ミュージックを作りたい、すべてのトラック・メイカー志望者に向けた特集です! レクチャーしてくれるのは、All Day I Dreamなど海外の人気ハウス・レーベルから作品をリリースし、国内ではFriday Night Plansのアレンジなども手掛けるYuichiro Kotani氏。基礎からゆっくりと解説していただいたので、1日にワンテーマ、いや1週間にワンテーマでもコツコツ読み進めてもらえたらと思います。

解説:Yuichiro Kotani

 

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Yuichiro Kotani
【Profile】米バークリー音楽大学で学んだ後、近年はアーティストとしてAll Day I DreamやSag & Tre、Loot Recordingsといった欧米の人気レーベルからディープ・ハウスをメインに発表。国内では広告音楽制作やメジャーへの楽曲提供も行うほか、モジュラー・シンセでのライブ・パフォーマンスを積極的に展開している。

Yuichiro Kotani's Demo Track

 

 

STEP 3:曲の構成をざっくりプランする

 4小節のベーシック・パターンしかできていないのに、構成なんて考えられるの!?と思う方も居るでしょう。もちろん、いきなり完ぺきな構成を作るのは難しいと思いますが、ハウスには定番と言えるような展開のさせ方があるため、まずはそれに沿って考えてみるとよさそうです。何も焦ることはありません。一つ一つ積み上げていきましょう!

 

1. ハウスの構成を知る

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 ハウスの超典型的な構成は、イントロ→小ブレイク→ドロップ①→大ブレイク→ドロップ②→アウトロといったものだと思います。イントロはDJが前の曲とつなぎやすいビート主体の部分で、小さなブレイク=低音楽器が抜ける部分を挟み、ドロップ①へと入ります。ドロップ①は、低音が戻ってきてオーディエンスが踊り始める部分。それから大きなブレイクがあり、いったん落としてからドロップ②へ移行します。ドロップ②はキックなどの低音楽器を復活させて、オーディエンスの興奮を最高潮に持っていく場面。この“大ブレイク〜ドロップ②”が一番の見せ場と言えるでしょう。そしてドロップ②の後、DJが次の曲へとつなぎやすいやすいようなアウトロに移って終了。中にはブレイクを持たない曲があるなど構成は一律ではないので、好きな曲の展開を参考にすればよいと思います。なお、今回のデモ曲は聴きやすいよう各セクションの尺を短めに作っているので、それを踏まえた上で構成の勘どころを学び取ってもらえると幸いです

 

2. ブレイクを基準にする

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 それでは実際の構成作りに関してです。4小節のベーシック・パターンをダーっとコピペして、とりあえず長めに並べてみましょう。もちろんこのままでは同じパターンが延々と繰り返されるだけですが、どこか適当な部分のキックとベースを抜いてみると……ブレイクっぽくなりますね? 構成を考えるときは、ブレイクを基準にすると分かりやすいでしょう。また、ブレイク→ドロップを作ってしまえば、ほかのセクションで何をすればいいかも見えてきやすいと思います。

 

3. 構成のアタリを付けておく

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 低音楽器を抜いておおよそのブレイクを作ったら、ハウスの定番的な構成や好きな曲の展開にならって、ざっくりとセクション分けしてみましょう。暫定的なものでよく、マーカーを打っておくと視覚的に判断が楽です。今回は、イントロ→ドロップ①→ブレイク→ドロップ②→アウトロという定番的な構成を踏まえつつ解説を進めていきます。ちなみにStudio Oneには“アレンジトラック”という機能があり、指定した範囲をブロック単位で移動させたりコピペしたり、削除したりすることが可能。ざっと組んだ構成を後で変更したいときにも非常に便利です。

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Column:サブジャンルで異なるブレイクの聴かせ方

 ブレイクは、同じハウスでもサブジャンルやスタイルによって聴かせ方が異なると思います。例えば僕が作品をリリースしているレーベル=All Day I Dreamのようなオーガニック〜ディープ・ハウスでは、シネマティックもしくはドリーミーなサウンドで聴かせるのが特徴です。しかしテック・ハウスになると、ほとんどキックとベースが抜けるだけのストイックな聴かせ方もあり得るでしょうし、サイケデリックなテクノであれば“持って行かれるようなSE”などが入っていたりします。またトランスやEDMなら、美メロなどオーディエンスが思わず手を挙げてしまうような要素を入れてきますよね。ブレイクではダンス・ミュージック最大の武器である低音が使えなくなるわけなので、“その間、何で聴かせるか”や“何でキープするか”を各クリエイター、よく考えているのだと思います。

Yuichiro Kotani & Hiroyuki Kajino名義でリリースした「Playground #1」を含むコンピレーション『A Winter Sampler』。レーベルのAll Day I Dreamは欧州を拠点とし、昨今のムーブメントであるメロディック〜オーガニック〜ディープ・ハウスの代表格として知られる

 

【特集】4つ打ちトラック制作・超入門