STEP 5:高まりどころ=ドロップを作る! 〜4つ打ちトラック制作・超入門

STEP 5:高まりどころ=ドロップを作る! 〜4つ打ちトラック制作・超入門

DJをやっているんだけど、そろそろ自分の曲が欲しい。でも、どうやって作ればいいのか分からず二の足を踏んでいる……こんなお悩みを抱えている方は、ぜひご覧ください。4つ打ちのダンス・ミュージックを作りたい、すべてのトラック・メイカー志望者に向けた特集です! レクチャーしてくれるのは、All Day I Dreamなど海外の人気ハウス・レーベルから作品をリリースし、国内ではFriday Night Plansのアレンジなども手掛けるYuichiro Kotani氏。基礎からゆっくりと解説していただいたので、1日にワンテーマ、いや1週間にワンテーマでもコツコツ読み進めてもらえたらと思います。

解説:Yuichiro Kotani

 

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Yuichiro Kotani
【Profile】米バークリー音楽大学で学んだ後、近年はアーティストとしてAll Day I DreamやSag & Tre、Loot Recordingsといった欧米の人気レーベルからディープ・ハウスをメインに発表。国内では広告音楽制作やメジャーへの楽曲提供も行うほか、モジュラー・シンセでのライブ・パフォーマンスを積極的に展開している。

Yuichiro Kotani's Demo Track

 

 

STEP 5:高まりどころ=ドロップを作る!

 いよいよハウス・ミュージックのクライマックスと言えるドロップ②です。ブレイクからどう持っていくのか? ベーシック・パターンをどんなふうに応用してダンサブル度を高めるのか?……といった点を主眼に作り方を紹介しましょう。

 

1. ドロップへ進むには“きっかけ”が必要

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 ブレイク中〜後半にかけては、キック以外のほとんどの打楽器の音量を徐々に下げて“ブレイク感”を強めてみたのですが、そのままドロップ②に進むと“元の4つ打ちに戻っただけ”という感じで面白くないと思いました。ドロップ②へ行くためには、何かきっかけが欲しいんですよね。その有効な手法が“持続音をドロップ直前で切る”というもの。今回は、環境音とSEをドロップの2拍ほど手前で切ってみましょう。それまで持続的に鳴っていた音がパタッと止み、続けざまにキックが入ってくるのでインパクトが大きくなるのです。これは“落差”によるものでしょう。さらに、環境音とSEが抜けた部分に声ネタを置いてみます。ベーシック・ループで使用しているものですが、ドロップへの突入を示す合図のように聴こえると思います。

 

2. “初登場の音”で新鮮にアゲる

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 いよいよドロップです。せっかくブレイクの最後にきっかけを作ったのに、ベーシック・パターンをドロップとして聴かせるのは面白くないので、何かひと工夫欲しいところ……そこで、初登場の新しいループを足し、ベースを抜いてみることにしました。新しいループは、ベースの“バージョン違い”のようなフレーズをチョイス。SpliceからダウンロードしたRUBICONのループですが、よくこんなに統一感のあるものが見つかったなという感じです(笑)。それを8小節の間メインで聴かせ、9小節目から再びベースを入れることで、より踊れる感じに。ちなみに、ドロップでは低音のエネルギー感を強めるべく、キックをローがたっぷりと入ったワンショットに差し替えてみました。

 

Column:ループの“キー合わせ”について

 サンプル・ループは曲作りに便利なものですが、必ずしもそれぞれのキーが合うとは限りません。先ほど“最近のループには、ファイル名にキーが書かれていることが多い”とお話ししましたが、記載の無いループもありますし、その場合はどうすればいいのでしょうか?

 

 DAWには、サンプルなどのオーディオ素材のピッチを変更する機能が付いています。例えばStudio Oneなら“トランスポーズ”という機能で変更でき、変えた後も音質が劣化しにくいという美点があります(限度もありますが)。こうした機能を使い、音を聴きながら耳で合わせていくのも面白いと思うんです。調整した結果がキーから外れていても、気持ち良く聴こえていたらそれでいいわけなので

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Studio Oneには、ピッチを半音単位で調整できる“トランスポーズ”やセント単位で微調整できる“チューン”といった機能がある

 ダンス・ミュージックやサンプル主体の音楽は、いろいろなサンプルを“聴いた感じ”で組み合わせていることが多く、図らずもコード進行に縛られない響きが生まれていたりします。僕がサンプルを活用するのも、そういう偶然性を期待してのことだったりします。ノリでサンプルを組み合わせて格好良い響きが生まれたら、楽典的にはモードとかで解釈できるんでしょうけど、あまりそこは考え過ぎず、自分が気持ち良いように調整していけばよいと思います。

 

【特集】4つ打ちトラック制作・超入門