STEP 1:基本の4つ打ちパターンを作る 〜4つ打ちトラック制作・超入門

STEP 1:基本の4つ打ちパターンを作る 〜4つ打ちトラック制作・超入門

DJをやっているんだけど、そろそろ自分の曲が欲しい。でも、どうやって作ればいいのか分からず二の足を踏んでいる……こんなお悩みを抱えている方は、ぜひご覧ください。4つ打ちのダンス・ミュージックを作りたい、すべてのトラック・メイカー志望者に向けた特集です! レクチャーしてくれるのは、All Day I Dreamなど海外の人気ハウス・レーベルから作品をリリースし、国内ではFriday Night Plansのアレンジなども手掛けるYuichiro Kotani氏。基礎からゆっくりと解説していただいたので、1日にワンテーマ、いや1週間にワンテーマでもコツコツ読み進めてもらえたらと思います。

解説:Yuichiro Kotani

 

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Yuichiro Kotani
【Profile】米バークリー音楽大学で学んだ後、近年はアーティストとしてAll Day I DreamやSag & Tre、Loot Recordingsといった欧米の人気レーベルからディープ・ハウスをメインに発表。国内では広告音楽制作やメジャーへの楽曲提供も行うほか、モジュラー・シンセでのライブ・パフォーマンスを積極的に展開している。

 

 昨今は、比較的リーズナブルなパソコンでも十分にDAW(音楽制作ソフト)が動くようになり、パソコンとDAW、ヘッドフォン/イアフォンさえあれば曲作りを始められるようになりました。シンプルにトラック・メイクするだけなら、APPLE MacBook Airに好きなDAWを入れて、ヘッドフォンでモニターするというのでも問題無いと思います。

 

 音楽に限らず、新しいことを始める前には“怖い”という気持ちが先行するかもしれません。得体の知れないものだからです。でもチャレンジしてみると一つずつ何かができるようになり、1週間もたてば少し前までは分からなかったことが当たり前に思えてきたりするもの。そして“すべて”を知る必要は無いと思います。自分に必要なことだけを覚えていけばいいし、音楽理論を習熟していなければダンス・ミュージックを作れないなんてことはありません。始める前は“そういうのを全部知らないといけないのかな?”と不安に思ってしまいがちでしょうが、いろいろ考えるくらいなら“とりあえずやってみる!”というのが大事だと思います。

 

 そして、最も大事なのは楽しむこと。“面白いなあ、これ”と思いながらやることです。各自が普段DJプレイするような曲には、いきなりはたどり着けないかもしれませんが、好きな曲と自分の作ったものにギャップを感じて悩んでしまった場合は、“楽しむこと”が乗り越える鍵になるでしょう。ワクワクしながら作ることで聴き手も楽しめるものができ、そして楽しみながら続けることで技術も身についていくという良い連鎖反応が起こっていくと思います。

 

 今回は、僕が普段から愛用しているDAWのPRESONUS Studio One Professionalを使い、4つ打ちトラック制作の基本をご紹介します。解説のためにデモ曲を作ったので、ぜひ聴きながら読み進めてください。また今回は、なるべくStudio Oneの付属ツールを使うようにしています。あまり複雑な処理もしていないので、曲作りのファースト・ステップとしてご覧いただけると幸いです。

Yuichiro Kotani's Demo Track

 

 

STEP 1:基本の4つ打ちパターンを作る

 まずは基本的な4つ打ちのドラム・パターンを作ってみましょう。使用する材料はサンプルです。サンプルはオーディオ素材のことで、DAWのアレンジ画面に置くと波形で表示されます。大きく分けてワンショット(キックやスネアの単発素材)とループ(フレーズ素材)の2種類があり、“置けばとりあえず音が出る”という手軽さ。格好良いループを見つけたら、そのまま使うこともできます!

 

1. 好きなサンプルを見つけよう

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 サンプルはDAWに付属していたり、ワンショットやループをセットにしたサンプル・パックとして発売されたりしています。それらを活用するのも手ですが、僕が近年よく使っているのはSpliceというWebサービス(画面)。クラウド上に用意されたサンプルから好きなものを探し、それだけを入手できるというピンポイントさが魅力です。ここにしか展開していないメーカーを含む各社のサンプルがそろっていて、検索機能などでサクサク探せます。良いサンプルが見つかったときの喜びは、レコード店やBeatportなどで格好良い曲に出会ったときの感覚と似ているかもしれません。料金は月額制で、僕が登録しているのは約$20のプラン。今回は最近お気に入りのメーカー、RUBICONのサンプルを中心に使います。

 

2. まずはプレーンな4つ打ち

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 それでは早速、4つ打ちです。まずは2小節のパターンを作りましょう。テンポは120BPM、アレンジ画面のグリッドは16分音符刻みにします。好きなキックのワンショットを選んで、拍の頭に1つずつ置いていくと計4つで4つ打ちになりますね。それをループ再生して聴きながら、ハイハットとスネアを選びます。こうすれば後で“何だかドラム全体がちぐはぐ……”となることも無いでしょう。自分の好みや作りたい曲のジャンル感に合わせて、良いと思うものを選んでください。決まり事はありません。次にハイハットとスネアを置きます。どこに何を置くかはキックを基準に考えればよく、キックとキックのちょうど間にハイハット、2つ目/4つ目のキックと同じ位置にスネア、というのが基本です。

 

3. スネアやハットに変化を加える

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 プレーンな4つ打ちパターンができたので、ここにちょっとした変化を加えてみましょう。例えば、2拍目と4拍目にしか無いスネアを違うところにも置いてゴーストやフィルのようにしてみたり、ハイハットをいわゆる裏打ち以外の場所にも配置してみたり。“どこに何を置くべきか”という決まりは特に無いので、とりあえず良し悪しは考えずに、音を聴きながら置いてみればよいと思います。また、仮にスネアに変化を加えれば、連鎖反応のようにハイハットのバリエーションを思いつくかもしれません。そういう“思いつき”を大切にして、いろいろ試していくと楽しいですよ。

 

4. 尺を伸ばしてちょっとした工夫を

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 2小節のドラム・パターンをコピー&ペーストし、4小節にしてみましょう。全く同じ2小節が2回繰り返されるわけですが、ちょっとした変化があるとなお良さそうですね? というわけで、コピペした方のスネアのフィルを変えてみます。これだけでも“単に2回繰り返しただけ”という感じが薄くなるでしょう。さらに、ハイハットの音量に大小を付けたりしても、ノリが出て面白いと思います。

 

【特集】4つ打ちトラック制作超入門