岡野昭仁のプライベート・スタジオ 〜Private Studio 2021

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“歌の構築”を主眼にセットアップしつつ
テンションを維持するためのムード作りも欠かさない

 1990年代の末葉から根強い人気を誇るポルノグラフィティのボーカリスト=岡野昭仁。彼のプライベート・スタジオは、自宅の地階に広がる20畳ほどのスペースだ。

Text:Tsuji. Taichi Photo:Hiroki Obara

 

オーディオI/O選びの基準はレイテンシーの低さ
マイクを替えたら歌のアプローチが改善された

 スタジオ然とした部屋よりは、リラックスしながら音楽制作に打ち込める場を目指したと言う岡野。建築音響は日本音響エンジニアリングが手掛け、コーナー付近にデスクやスピーカーを配置していたそうだが、自ら内装およびレイアウトを変更し今の状態となった。

 

 「造ってから10年ほど経ったし、気分を変えるためにもリフォームしてみようと思って。毎日のように使う場所だから、ずっと同じだと飽きてくるというか、停滞感を覚えてしまうんです。例えば、棚の内容を変えてみるなど細かい変更も加えていますし、壁については防音パネルからウッド・タイルに張り替えた……しかもDIYで(笑)。居心地の良さや好みの内装であることはもちろん、ここで仕事をしたい、と思える環境作りが大事ですよね」

 

 新しく用意したデスクには、PRESONUS Studio Oneを映し出す液晶が。その傍らに、同じ PRESONUSのオーディオI/O、Quantum 2などが控えている。

 

 「ここでは仮歌を録ることが多いので、何よりモニタリングのしやすさを重視しています。今まで幾つかのオーディオI/Oを試してきましたが、Quantumシリーズがニアゼロ・レイテンシーだというのを知って購入してみたら、すごく歌いやすくなって。僕の声は立ち上がりが速いため、それをジャストでモニタリングできないと違和感を覚えてしまうんです。だから音質以上に、自分の歌をコントロールしやすいものとしてQuantumを愛用しています

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現在のメインDAW、PRESONUS Studio Oneは、音質と操作性の良さを理由に導入。メンバー新藤晴一との楽曲データのやり取りにはAVID Pro Toolsを使用

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ニアゼロ・レイテンシー故、仮歌録りに重宝しているオーディオI/O、PRESONUS Quantum 2(写真下)。その上にはモデリング・マイクTOWNSEND LABS Sphere L22との併用を見越して購入したというUNIVERSAL AUDIO Apollo Twin MKII

 ボーカルのサウンド・キャラクターに関しては、AKGのコンデンサー・マイクThe Tubeの担うところが大きいようだ。

 

 「以前はNEUMANN U67などのマイクを使っていましたが、あるときエンジニアの方にThe Tubeを貸してもらったところ、声の収まりがとても良くなったように思えて。その理由として、U67を使っていたときは中高域の張り出しが気になっていたのだと分かったんです。声の質感にフォーカスし過ぎるあまり“今の響き方、ちょっと嫌だったな”とか、そんなことばかり気にしていたし、神経質になるのは当然だとも思っていたのですが、The Tubeに替えた瞬間、曲全体として聴くことができて。声を単体でとらえてどうというよりは、オケとのなじみ方であったり、オケの中でどう響かせるのかという視点で歌えるようになったんです。結果、録り音も変わったし、表現にさらなる力を注げると思い、自分でも購入することにしました」

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自身の声を収まり良くとらえることから愛用の真空管マイク、AKG The Tube

 仮歌はThe Tube→BRENT AVERILL 33114(マイク・プリアンプ)→Quantum 2というシグナル・チェインで録ることが多いそうで、録り音の再生時にはパワード・モニターのMUSIKELECTRONIC GEITHAIN RL906やモニター・コントローラーCRANE SONG Avocet IIAを用いている。

 

 「録ったものが、どういう響き方をするのか的確に判断できるようスピーカーやモニター・コントローラーもきちんとしたものを持ちたいなと。RL906はアレンジャーの江口亮君に薦められて購入し、長時間の使用にも聴き疲れしない音が気に入っています。これらに加えてACOUSTIC REVIVEの製品を使い始めたので、音がより見えやすくなりました」

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Sphere L22(写真左)とAKG C12VR

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ラック内は上から、音数の多い楽曲の歌録りなどに使っているAURORA AUDIO GTQ2 Mark III、ファットな音でレコーディング/ライブの両方に愛用中のBRENT AVERILL 33114×2(以上、マイクプリ)、UREI 1176LN Rev. F(コンプ/リミッター)、AVID HD I/O(オーディオI/O)を設置。天面に載っているのは、MILLENNIA HV-35(プリアンプ)とRETRO Doublewide(コンプ)

電源やケーブルへの注力でモニター音質が向上
ソフト音源のプリセットなどから曲の着想を得る

 RL906のスピーカー・ケーブルやスタンド、その付近に設置されたルーム・チューニング材、電源機器など、あらゆる場所にACOUSTIC REVIVEが。「昨年9月に東京ドームでライブを行ったのですが、リハーサルの際にプロデューサーの本間昭光さんから“良い電源ケーブルがあるから使ってみなよ”と言われたのがきっかけです」と岡野。

 

 「それで33114に試してみたところ、ここまで変わるものなの!?ってくらいに音が変化して。声の倍音がよく聴こえるようになり、存在感がグッと増したんです。とは言え、ただ高域が持ち上がるような変化ではなく、自分の声が脚色されている印象も無い……ライブは2デイズで、各日程3時間ずつくらいパフォーマンスしたのですが、モニターの音が良くなったことで全く疲れませんでした。好感触だったのでスタジオにも導入したいと思い、電源周りから段階的にアップデートしていったら音が激変しました。マスキングされたように聴こえていた帯域がすみ渡り、低音の輪郭もはっきりとして音楽全体の“周波数レンジの枠”みたいなのがきちんと見えるようになったんです。特に電源ケーブルが効果てき面で、パソコンに使い始めたときは驚きましたね」

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電源周りはACOUSTIC REVIVEを使用。RTP-6 Absolute(電源タップ)やPower Reference TripleC(電源ケーブル)、RCI-3H(ケーブル・インシュレーター)、RST-38H(クォーツ・アンダーボード)が見られる

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ACOUSTIC REVIVEのルーム・チューニング・ツール群

 楽器類に目を向けると、リズム・マシンROLAND TR-08やNATIVE INSTRUMENTS Maschine MK3のパッド・コントローラーなどがスタンバイ。これらはアイディアの源泉として活用しているという。

 

 「いろいろ買って試してみて、触っていく中でアイディアが出てくればいいなという気持ちで接しています。ソフト音源にしても同様ですね。プリセットのパターンからボーカルのメロディや曲のジャンル感を発想するような使い方がほとんどです。最近はSpliceも気に入っていますね」

 

 ポルノグラフィティ・サウンドの起点となる岡野のスタジオ。「先ほど仮歌について話しましたが、以前にも増して“どのキーが最も響くのか”“どうすれば言葉が伝わりやすくなるのか”といったことを突き詰めるようになりました。ゆくゆくは、ここで本チャンを録りたいですね」と目を輝かせる。

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ROLAND TR-08(写真左)やNATIVE INSTRUMENTS Maschine MK3(同右)なども作曲にインスピレーションを与えるツールだそう

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画面に立ち上がっているのは、左からUJAM Virtual Bassist Mellow 2、TOONTRACK EZ Keys、REFX Nexus3。こういったソフト音源のプリセットが曲作りのヒントになるという

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愛用のアコースティック・ギター。そばに置かれているのは、練習の際などに使っているポータブルPAシステムのBOSE S1 Pro

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ペダル・エフェクトのセレクション。ELECTRO-HARMONIX Big Muffなどの名機からブルガリア産のSVISOUND OverZoid OZ01などハンドメイドのモデルも見られる

Equipment

[DAW System]
Computer:APPLE iMac、MacBook Pro
DAW:AVID Pro Tools|HDX、PRESONUS Studio One
Audio I/O:AVID HD I/O、PRESONUS Quantum 2、UNIVERSAL AUDIO Apollo Twin MKII
Controller:NATIVE INSTRUMENTS Komplete Kontrol A49、Maschine MK3

[Recording & Monitoring]
Monitor Speaker:MUSIKELECTRONIC GEITHAIN RL906
Headphone:SONY MDR-CD900ST
Monitor Controller:CRANE SONGS Avocet IIA
Microphone:AKG The Tube、C12VR、TOWNSEND LABS Sphere L22

[Outboard & Effects]
Mic Preamp:AURORA AUDIO GTQ2 Mark III、BRENT AVERILL 33114、MILLENNIA HV-35
Compressor:RETRO Doublewide、UREI 1176LN Rev. F
Pedal Effects:BOOT-LEG JBK-1.0、BOSS BD-2、CP-1X、OD-1、OD-20、FDR-1、BUDDA Zen Tone、ELECTRO-HARMONIX Big Muff、Micro Synthesizer、HAO Rust Booster-II、KEELEY Compressor、KLON Centaur、MAD PROFESSOR Sweet Honey Overdrive、MAXON AD-9、MXR Dyna Comp、M101 Phase 90、PROCO RAT、STRYMON Timeline、SVISOUND OverZoid OZ01、TC ELECTRONIC HOF Mini、Z.VEX EFFECTS Fuzz Factory Vexter Series
Channel Strip:UNIVERSAL AUDIO LA-610 MKII

[Instruments]
Guitar:BEFFNICK Neo、GIBSON Acoustic Guitar

 

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岡野昭仁

【BIO】1999年にメジャー・デビューしたポルノグラフィティのボーカリスト。「アポロ」「サウダージ」といった初期の傑作から「ブレス」「VS」などの近作までクオリティとセールスを両立した活動を行う。12月4日(金)には、バンドとして初の配信ライブを敢行予定

 

Live Infomation

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“CYBERロマンスポルノ’20 ~REUNION~
ポルノグラフィティとして初の配信ライブ。12月4日(金)19時スタートで、詳細は特設サイトに記載(https://sp.pornograffitti.jp/REUNION/

 

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