「PRESONUS Quantum 2」製品レビュー:低レイテンシー化を追い求めたThunderbolt接続のオーディオI/O

PRESONUSQuantum 2
筐体を見る限り、以前レビューしたオーディオI/O、PRESONUS Studio 192 Mobileの後継機種のようにも見えるQuantum 2。一体どのように変化/進化したのか、早速チェックしていきたいと思います。

XMAXプリアンプを4基搭載
DCカップリング対応のアナログ出力

Quantum 2の外形寸法は317(W)×44.45(H)×177.8(D)mmとコンパクトで、Studio 192 Mobileとほとんど同じサイズ。フロント・パネルにはXMAXプリアンプを搭載した2つのマイク/インスト・イン(XLR/フォーン・コンボ)、プリアンプのゲイン・コントロール・ノブと選択ボタン、48Vファンタム電源ボタン、ヘッドフォンch1/2以外のソースをヘッドフォン・モニターできるA/Bボタン、アナログ入力4系統のレベルをそれぞれ示すLEDメーターとメイン出力レベルを示すLEDメーター、出力レベルを−80〜0dBの範囲でコントロールする大きなメイン・ノブ、ヘッドフォン・アウト(ステレオ・フォーン)とコントロール・ノブ、そして電源ボタンを装備。シンプルなので説明書を見なくても操作できそうですね。

リア・パネルには、MIDI IN、OUT、Thunderbolt端子×2、ADAT IN×2とOUT×2(S/MUX対応)、S/P DIF入出力(コアキシャル)、ワード・クロック入出力(BNC)、ライン・アウト×4(TRSフォーン)、フロント・パネルと同じくXMAXプリアンプ搭載のXLR/TRSフォーン入力端子×2を備えています。Studio 192 Mobileと大きく違うところは、アナログ入出力の数が4イン/6アウトから4イン/4アウトになり、MIDI入出力の追加やThunderbolt接続などが挙げられます。

▲Quantum 2のリア・パネル。左から、MIDI IN&OUT、Thunderbolt端子×2、ADAT OUT×2とIN×2(S/MUX対応)、S/P DIF IN&OUT(コアキシャル)、ワード・クロック入出力(BNC)、Line Outputs×4(TRSフォーン)、Mic/Line Inputs×2(XLR/TRSフォーン・コンボ) ▲Quantum 2のリア・パネル。左から、MIDI IN&OUT、Thunderbolt端子×2、ADAT OUT×2とIN×2(S/MUX対応)、S/P DIF IN&OUT(コアキシャル)、ワード・クロック入出力(BNC)、Line Outputs×4(TRSフォーン)、Mic/Line Inputs×2(XLR/TRSフォーン・コンボ)

実はこのQuantum 2のライン・アウトはすべてDCカップリングされており、MOTU VoltaなどのCVコントロールできるソフトを使用することで、外部のアナログ・シンセサイザーなどにCVを提供することが可能です。これは昨今盛り上がりを見せているモジュラー・シンセサイザーに対応していこうという意思表明のように思えました。

そして、Quantum 2最大の売り文句でもある“超低レイテンシー”の部分を検証してみたいと思います。筆者が普段使っているのはAPOGEE Symphony I/O MKIIで、入力レイテンシー3.10ms/出力レイテンシー3.56msなのに対し、Quantam 2は入力レイテンシー2.83ms/出力レイテンシー3.00ms(いずれもサンプリング・レートは48kHz、バッファー・サイズが128サンプル時)と、ここまで追い込めるのか!と驚かされます。その自信の表れなのか、昨今のオーディオI/Oには必ず搭載されていると言っても過言ではないDSPミキサーによるダイレクト・モニタリングを、Quantum 2は装備していません。検証前はDSPミキサー無しで大丈夫なのだろうか?と不安でしたが、この低レイテンシーなら納得です。

余談になりますが、DSPによる低レイテンシー・モニタリング機能はレイテンシー回避には有用な反面、DSPミキサーとDAWのミキサーの両方を操作しなければなりません。そのため作業的に煩雑になりがちで、CPUネイティブ環境での音楽制作のウィーク・ポイントだと感じていました。一方Quantum 2であればDAW内で低レイテンシーなモニター環境を構築できるので、“ネイティブを極める”という売り文句は決して大げさなものではないと感じました。

ノイズが少ないクリアなサウンド
1dBステップでリコールできるゲイン

さて気になる音質ですが、せっかくなのでギター・アンプの収録をダイナミック・マイクとリボン・マイクで試してみました。いつもはAPIのマイク・プリアンプを使っているので、1dBステップでリコールできることに感動。音質に関しては、APIのマイク・プリアンプと比べるとノイズが少なくクリアな印象です。ドライブ感などはアナログ系のプラグインでも付加できるので十分でしょう。ゲイン幅は60dBあるので出力の低いダイナミック・マイクやリボン・マイクでも十分な音量が得られますし、1dBステップで調節できるので安価なマイク・プリアンプにありがちな“ちょうど良いゲイン値に調整しにくい”ということもありません。

ヘッドフォン出力は必要十分で、普段使っているヘッドフォン・アンプと比較すると、ごくごくわずかですがドライブ感のようなものを感じます。筆者がヘッドフォンで聴く際にいつも気にしている超低域のキレ具合も感じられ、自宅スタジオなどで大きな音量が出せず低域のチェックができないという方にもグッド! 個人的にはヘッドフォン・アウトがもう一つあると、自分以外のパートをマイク録りする際にちょうど良いのに……と思ってしまいましたが、そういう方は同シリーズのQuantumを購入するか、分岐プラグや外付けヘッドフォン・アンプを別途使用すればいいでしょう。

メイン出力のサウンドは、ヘッドフォン出力と比べるとダイナミック・レンジも広く、透き通った印象。スペックをチェックすると118dBものダイナミック・レンジがあるとのこと。あくまで想像の域ですが、メイン出力はモニターとしての正確性を求め、逆にヘッドフォン出力はレコーディングなどの演奏時にプレイヤーが聴いていて盛り上がるような色付けをしたのかな?と感じました。また、ボリュームを絞った際の“音やせ”を感じなかったということも付け加えておきます。

駆け足でチェックしてみましたが、Quantum 2はStudio 192 Mobileの後継機というよりも、設計思想が違う新たな製品で、よりユーザーのニーズに合わせたモデルです。ネイティブ環境でのモニタリングの新たな潮流になる予感を感じさせられました。

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サウンド&レコーディング・マガジン 2018年5月号より)

PRESONUS
Quantum 2
オープン・プライス(市場予想価格:73,889円前後)
▪接続形式:Thunderbolt 2 ▪オーディオ入出力数:最大22イン/24アウト(アナログ+デジタル) ▪マイクプリ搭載数:4 ▪ビット&サンプリング・レート:最高24ビット/192kHz ▪最大入力レベル:+10dB(マイク入力、最小ゲイン) ▪ダイナミック・レンジ:110dB(マイク入力) ▪周波数特性:20Hz〜20kHz(48kHz時)、20Hz〜40kHz(96 kHz時) ▪外形寸法:317(W)×44.45(H)×177.8(D)mm ▪重量:2.27kg 【REQUIREMENTS】 ▪Mac:OS X 10.11.6以降 ▪Windows:Windows 10(64ビット) ▪共通項目:INTEL Core I5以上のプロセッサー、4GB以上のR AM(8GB以上を推奨)、Thunderbolt 1または2ポート、インターネット接続環境(登録および付属ソフトウェアのダウンロード用)、30GB以上のハード・ディスク容量(7,200RPM以上を推奨)、1,366x768ピクセル以上の解像度を持つディスプレイ