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沢口真生が語るDolby Atmos制作のポイント「実音がハイトに入った音楽のマイキングが課題」

沢口真生が語るDolby Atmos制作のポイント「実音がハイトに入った音楽のマイキングが課題」

 ここからは、既にDolby Atmosミックスに取り組んでいるエンジニア諸氏に、そのポイントを伺っていく。まずは1980年代、NHKにエンジニアとして在籍していた当時からサラウンドを手掛けてきたMick Sawaguchiこと沢口真生氏。昨秋自身のUNAMASレーベルからDolby Atmosで10タイトルを同時に配信リリースした(現在は計20タイトル)。そんなサラウンド界の第一人者である氏に、Dolby Atmos制作について聞いた。

高品位なマスターを作っておく

 昨年10月、一挙にDolby Atmosミックスの10タイトルをAmazon Music HDで配信開始した沢口氏。こうしたスピーディな動きができたのは、氏が以前からイマーシブ・フォーマットで作品制作を行ってきたからだ。

 

 「2014年、大賀ホールでのレコーディングに臨むときに、もう最初からイマーシブを前提にマイキングをして、11.1chでマスターを作ったんです。Dolby Atmosに限らず、イマーシブ・フォーマットはさまざまあるので、僕らのような作り手側は、どんなフォーマットにでもすべて対応できるようなマスターを“川の上流”で作っておくこと。そうすればフォーマットに合わせて料理さえすればいいんです」

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沢口氏が使用するDAW、MERGING Pyramix Virtual Studioのミキサー画面。3Dパンナーの搭載もいち早くリクエストしていたという。Pyramix Virtual StudioはWindowsベースなので、Dolby Atmos RendererはAPPLE Mac Miniにインストールし、AES 67でPyramixシステムと接続して使用しているとのこと

 一方で、Dolby Atmos Musicでの配信に対しては、肯定的な見方をしている。

 

 「せっかく作った11.1chのマスターですから、リスナーに一番リンクしやすいフォーマットがそのうち出るんじゃないかと。上流であるマスターの準備はできていたんですが、最後の出口がずっと問題になっていました。現状で言えば、メリットとデメリットのバランスが最も良いのがDolby Atmos Musicとしての配信。リスナーがバイノーラルで聴けることが、2chのステレオを聴くよりもメリットがあると思い、そこを優先したんですよ。僕は長年DOLBYと付き合ってきていますが、彼らは技術と実用性のバランス感覚に長けていて、そこへの信頼感もありました。現在のDolby Atmos Musicは48kHzがベースですけれども、96kHzも扱える土台はあるので、将来的にその配信ができるようになれば、僕らがやりたいところに近付ける。だからこそ上流が大事なんです」

エレクトロニックな音楽にも可能性が

 何も足さず、何も引かない録音をポリシーとする沢口氏。イマーシブ録音ももちろん、音楽と場所とマイキングが要となることは言うまでもない。しかし、もう一つイマーシブでの可能性を感じているのは、エレクトロニックな音楽作品だと語る。

 

 「今の若い人ならすぐできると思うんだけど、デスクトップ・ミュージックで、イマーシブを作曲の段階からイメージして作り込んでいくアプローチもあると思うんですよ。すごく今日的だし、やりやすいと思うんです。それをやるためには、作曲家とエンジニアなり、プロデューサーやディレクターなどの制作陣がうまくタッグを組まないといけない」

 

 マイクでの録音作品でも、沢口氏は新しいアプローチを試しているという。

 

 「僕の場合、水平面のサラウンドの7.1chに空間成分の4chをハイトとして加える作り方をしてきました。でもそれはやり尽くしたので、次の課題として実音がハイトに入った音楽を作りたい。だからスタジオでのイマーシブ録音をどういうマイキングでやればいいかが今の僕の課題です。既に何作か制作していて、少しずつつかめてきた。でも実音として何を鳴らすべきかは、やはり作曲家やアレンジャーとコラボしないと難しいですね」

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水平7chはYAMAHA MSP10 Studio、ハイト・スピーカーはYAMAHA MSP5(写真左上)と、リア側はKS DIGITAL C5を用意

 沢口氏は、サラウンドの技術情報を共有する“サラウンド寺子屋”という勉強会を長年続けてきた。門戸を開く姿勢を見せてきた氏だが、Dolby Atmosについても参入者の増加を願っていると語る。

 

 「例えばDolby Atmos Production Suiteは299ドルで買えますし、最初はヘッドフォンのバイノーラル・モニターで始めてもいいと思うんです。長年サラウンドに携わってきたDOLBYが音楽というジャンルにも参入してくれるのは、僕らにとってはとても心強いことですよ。一方で、DOLBYが映画産業とノウハウを共有してきたのと同じことを、音楽にも広げて、レーベルの人たちが何を考えているかまで踏み込んでいただきたいですね。そうすれば、一気に広まると思います」

 

 他方で、安易なDolby Atmos Music制作に対しては、警鐘も鳴らしていた。

 

 「もともとステレオの世界を考えて作ったものを、無理にマルチからDolby Atmosにしたからってそれはイマーシブにはならない。リスナーは正直だから、“元のステレオの方が良い”と思います。単なるデモンストレーションではなく、長続きする音楽の一つとしてずっとやりたいんだったら、ちゃんとコンセプトを考えて作るということを怠らないでほしいですね」

沢口真生インタビュー 〜Dolby Atmos Music Creator’s Summitより

 

沢口真生
【Profile】制作技術センター長を務めたNHKを2005年に退職後、沢口音楽工房を設立。自身のUNAMASレーベルからハイレゾ作品やサラウンド作品を多数リリースする。制作勉強会“サラウンド寺子屋”を長年にわたり開催。大学での講義や執筆/翻訳も多数。

 Works 

ViVa The Four Seasons (A.Vivaldi Concerto NO-1_NO-04)

ViVa The Four Seasons (A.Vivaldi Concerto NO-1_NO-04)

  • UNAMAS Strings Sextet
  • クラシック
  • ¥1069

『Viva! Four Seasons-A. Vivaldi Concert NO-1-4』
UNAMAS Strings Sextet
(UNAMAS)

 

特設サイト「Dolby Atmos Music Creator‘s Summit」

【特集】Dolby Atmos Music〜空間オーディオの潮流

www.snrec.jp

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