小森雅仁 × AUSTRIAN AUDIO OC16 / OC18 〜ウィーンから新風をもたらすマイク・ブランド【Vol.15】

 AUSTRIAN AUDIOが、リーズナブルなラージ・ダイアフラム・コンデンサー・マイクとして新発売したOC16。5万円ほどという価格でありながら、オーストリアでハンドメイドされたCKR6カプセルを備える単一指向性のモデルだ。今回は、エンジニアの小森雅仁氏にそのOC16のペア、そして同じ単一指向性の機種で10万円ほどのOC18を1本渡し、録音の現場で試していただいた。印象を語ってもらおう。 

Photo:Hiroki Obara

OC16は中高域がきつくならずナチュラルで扱いやすい音。自宅でもスタジオでも幅広いソースに対応できると思います

小森雅仁【Biography】フリーランスのレコーディング/ミキシング・エンジニア。米津玄師、Official 髭男dism、藤井風、Yaffle、TENDRE、小袋成彬、iri、AAAMYYY、KIRINJIなど多数のアーティスト作品に携わる

小森雅仁
【Biography】フリーランスのレコーディング/ミキシング・エンジニア。米津玄師、Official 髭男dism、藤井風、Yaffle、TENDRE、小袋成彬、iri、AAAMYYY、KIRINJIなど多数のアーティスト作品に携わる

バランス感が良く品のある音がするOC16

写真左から、新発売されたOC16(オープン・プライス:市場予想価格51,700円前後)と従来製品のOC18(オープン・プライス:市場予想価格102, 300円前後)。いずれも単一指向性のラージ・ダイアフラム・コンデンサー・マイクで、周波数特性は20Hz〜20kHz。重量も共通で、335gである

写真左から、新発売されたOC16(オープン・プライス:市場予想価格51,700円前後)と従来製品のOC18(オープン・プライス:市場予想価格102, 300円前後)。いずれも単一指向性のラージ・ダイアフラム・コンデンサー・マイクで、周波数特性は20Hz〜20kHz。重量も共通で、335gである

 OC16と同様の価格帯のマイクには、一聴して派手な音色に聴こえる機種も多いのですが、個人的にはそれらのマイクだと中高域がやや強すぎるように感じられたり、中域や中低域にもう少し存在感が欲しいと思うことが多いです。後処理である程度の調整も可能ですが、マイクの段階で理想に近い音になっているに越したことはありませんよね。OC16は中高域がきつくならず、ナチュラルで扱いやすい音が得られるマイクという感じで好印象です。周波数チャートを見ると、5~6kHzと12kHz辺りが少し持ち上がっていますが、聴感上は非常に整ったバランスで、品がある音です。

 今回は、歌とアコースティック・ギターにそれぞれ1本、ピアノにはペアで立てて試してみました。いずれも良好な結果で、サックスやフルート、オーボエなどの木管楽器、そしてパーカッションなどにも良さそうです。なので例えば“1本のマイクでさまざまなものを録りたい”といったホーム・レコーディング用途にお勧めできるなと。プロの録音でも使えると思いますし、コンデンサー・マイクで録りたいソースであれば、ほとんど何にでも対応するでしょう。

OC16のCKR6セラミック・カプセルは、AKG CK12カプセルの設計手法を取り入れ、オーストリアでハンドメイドされたもの。サスペンション構造により、タッチ・ノイズにも強いという。グリルの下には40Hzと160Hzのローカット・スイッチを装備

OC16のCKR6セラミック・カプセルは、AKG CK12カプセルの設計手法を取り入れ、オーストリアでハンドメイドされたもの。サスペンション構造により、タッチ・ノイズにも強いという。グリルの下には40Hzと160Hzのローカット・スイッチを装備

OC18に搭載されているのもCKR6セラミック・カプセルだ。グリルの下にあるのは、40/80/160Hzのローカットと−10/−20dBのPADのスイッチ

OC18に搭載されているのもCKR6セラミック・カプセルだ。グリルの下にあるのは、40/80/160Hzのローカットと−10/−20dBのPADのスイッチ

OC16とOC18はすみ分けが明確

 OC18は歌とアコギに立ててみました。さすがにOC16よりも価格が高いだけあり高域がもう少し滑らかで、特に超高域をEQで持ち上げた際、きめの細かさを感じました。また中低域辺りの“実”が詰まっていて、密度の高いどっしりとした音だなと。予算が許すならOC18を購入する方がよいと思いますが、サウンドのキャラクターは両者よく似ているので、本当に価格の差の分だけクオリティの高いバージョンがOC18という感じです。

 OC16は40Hzと160Hz、OC18はその2つに加え80Hzのローカットを備えていて、PADがあるのはOC18のみです。OC18はギター・アンプや金管楽器なども想定しているのでしょうが、OC16は声やアコギといった“自宅でも録れるもの”にフォーカスし、機能を省いて価格を下げるけれど、肝心の音には妥協せずに作られている気がします。声やアコギを家で録るだけ、という人にとってはOC16の方が機能的に過不足なく、コスト・パフォーマンスも良いと思います。

 OC16とOC18は、きちんとすみ分けができていて、ユーザーにとって良いチョイスになっていますね。それに2機種共、本体のデザインまで好印象です。品があるし、ものとしての作りがしっかりとしているので、長く使いたい人にもすごく良いと思います。

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