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照内紀雄 × AUSTRIAN AUDIO OC818 / OC18 〜ウィーンから新風をもたらすマイク・ブランド【Vol.13】

 ウィーンのブランド、AUSTRIAN AUDIO。同社のコンデンサー・マイクOC818は、専用プラグインPolarDesignerで録音後に指向性や近接効果を調整できることで注目を集め、国内のエンジニアにも広く知られつつある一本だ。今回は、エンジニアの照内紀雄氏が、もう一つの専用プラグインStereoCreatorも含めチェック。さらに、単一指向性マイクのOC18も試してもらったので、所感を語っていただこう。

Photo:Hiroki Obara Cooperation:Studio Tanta

専用プラグインのStereoCreatorがとても面白い! 録音後に“部屋の広さ”をコントロールできる感覚です

照内紀雄  【Biography】青葉台スタジオ所属のエンジニア。Vaundy、ザ・リーサルウェポンズ、大橋ちっぽけ、amazarashi、Diosなどを手掛ける。フィンランド大使館公認サウナ・アンバサダーでもある

照内紀雄
【Biography】青葉台スタジオ所属のエンジニア。Vaundy、ザ・リーサルウェポンズ、大橋ちっぽけ、amazarashi、Diosなどを手掛ける。フィンランド大使館公認サウナ・アンバサダーでもある

ドラムのアンビでOC818の有用性を実感

 まずは、ペアのOC818をドラムのアンビエンスに立ててみました。ドラムを単体で録る現場で、キットから3m以上離した場所にさまざまな高さ(約1.6m〜2m以上)で設置。OC818にはフロント/リア・カプセル用の計2つの出力があるため、それらをAVID Pro Toolsのステレオ・トラックに入力し、Pro ToolsのプラグインDown Mixerでモノラル化。2つのOC818のトラックをそれぞれ左右に振り切って、ステレオでモニタリングしつつ録音しました。

 録り音を聴いてみると、ものすごく奇麗。どこにもピークが感じられないというか、サラッとしています。また2つの専用プラグインを使えば、マイキングそのものを変えるような処理が録音後に行えるため、“スタジオに常設されていたらアンビエンスのファースト・チョイスだな”と感じました

 OC18はベース・アンプにオンで設置。OC818と同傾向のあっさりした音ですが、低域までしっかりと収められるし、癖が無いので録音後の加工がやりやすいでしょう。

写真左からOC818(オープン・プライス:市場予想価格154,000円前後)、OC18(オープン・プライス:市場予想価格99,000円前後)。OC818は無償プラグインPolarDesignerで録音後に指向性などを変更可能。OC18は単一指向性のモデルで、OC818に通じる周波数特性を備える

写真左からOC818(オープン・プライス:市場予想価格154,000円前後)、OC18(オープン・プライス:市場予想価格99,000円前後)。OC818は無償プラグインPolarDesignerで録音後に指向性などを変更可能。OC18は単一指向性のモデルで、OC818に通じる周波数特性を備える

管弦やライブの録音にも重宝しそう

 次は専用プラグインのテストです。先述のDown Mixerを外して2つのOC818トラックをステレオに戻し、それぞれにStereoCreatorを挿してみました。これは面白い! 2本のOC818の録り音を使い、X/YやM/S、Blumleinといったステレオ・マイキングのサウンドを生み出せるプラグインなのですが、ステレオ幅を劇的に変えることができ、なおかつステレオ・イメージャーなどとは違う独特の変化です。ドラムのアンビに試したからか、部屋のサイズが変わっていくような印象で、大きく広げても位相感がおかしくなりません。録り音が奇麗な分、効果が分かりやすいですね

照内氏が試し、好感触だったOC818専用プラグイン、StereoCreator(無償)。1本のOC818の録り音からX/YやM/Sといったステレオ・マイキングのサウンドをシミュレートでき、2本の録り音があればミックスの段階でX/Y、M/S、Blumleinのサウンドを“トゥルー処理”によって作り出せる。照内氏はステレオ感の調整に活用したそう。Mac/Windowsをサポート

照内氏が試し、好感触だったOC818専用プラグイン、StereoCreator(無償)。1本のOC818の録り音からX/YやM/Sといったステレオ・マイキングのサウンドをシミュレートでき、2本の録り音があればミックスの段階でX/Y、M/S、Blumleinのサウンドを“トゥルー処理”によって作り出せる。照内氏はステレオ感の調整に活用したそう。Mac/Windowsをサポート

 PolarDesignerに関しては、ストリングスやブラスに重宝しそうです。両方共、演奏の内容によって最適な指向性が変わってくるので、複数のマイクを設置しておいて後で選ぶことが多いのですが、PolarDesignerがあればOC818を1本立てておくだけでいい。セッティングの時間を短縮できるのも良いですね。また、近接効果を調整できるのは、マイクとの距離が周波数バランスに大きな影響を及ぼすアコースティック・ギターなどに便利でしょう。

Mac/Windows対応プラグインPolarDesigner(無償)。ステレオ・トラックに立ち上げ、最大5バンドで指向性や音量を調整した後、モノラルで出力する。画面左のproximity controlスライダーでは、録音後に近接効果を調整可能。マイクとの距離で周波数特性が大きく変わるアコギのような楽器に便利だろうと、照内氏は語る

Mac/Windows対応プラグインPolarDesigner(無償)。ステレオ・トラックに立ち上げ、最大5バンドで指向性や音量を調整した後、モノラルで出力する。画面左のproximity controlスライダーでは、録音後に近接効果を調整可能。マイクとの距離で周波数特性が大きく変わるアコギのような楽器に便利だろうと、照内氏は語る

 そのほか、ライブのオーディエンスに立てるのも良いと思います。不要な話し声が入っていた場合なども指向性の調整でうまく切り抜けられそうですし、ライブ録音や配信が主業務の方は、オーディエンス・マイクをOC818で統一してみるとメリットを痛感する場面が多いかもしれません

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