JBL PROFESSIONAL PRX One レビュー:SOUNDCRAFT設計のミキサーを備えるパワード・コラム型スピーカー

JBL PROFESSIONAL PRX One レビュー:SOUNDCRAFT設計のミキサーを備えるパワード・コラム型スピーカー

 JBL PROFESSIONALから発売されたPAスピーカーPRX One。最初に言わせていただくと、この製品はかなり優秀だ。筆者はほぼ同じサイズのコラム型スピーカーを所有しているのだが、PRX Oneを試してすぐにこちらの製品に買い換えたいと感じた。

ミックスはアプリを用いて遠隔で調整できる

 PRX Oneは2.5インチ径ツィーター×12+12インチ径ウーファーという構成で、最大出力2,000WのクラスDアンプを内蔵している。また、JBL AIM音響技術により、幅広いエリアに安定した音を届けることができるという。

 サブウーファーは縦長で収納がしやすそう。私のように個人所有する場合、縦長の方が場所を取らず家のクローゼットなどにもしまいやすい。また、取っ手が天面に付いているので、かがまずに持ち上げることができる(ほかの製品は取っ手が側面にしか付いていない場合が多い)。ミキサーのツマミも天面に配置されており、上に飲み物などを置かれる心配も無さそうだ。コラム型の部分(アレイ部分)は取り外し可能で、収納ケースも同梱されているので可搬性に優れるだろう。

コラム型の部分(アレイ部)は取り外し可能で、キャリング・バッグが付属する

コラム型の部分(アレイ部)は取り外し可能で、キャリング・バッグが付属する

 内蔵される7chのミキサーはSOUNDCRAFTが設計したもの。別途ミキサーを用意しなくてもリバーブ、ディレイ、コーラスやコンプレッサーなどのエフェクトを使用できる。PAシステムが備わっていない飲食店や店舗などのライブでは、これ1台で事足りてしまうだろう。EQにはプリセットが幾つかあり、画面も見やすい。ミックスなどはJBL Pro Connectアプリを用いて遠隔操作することが可能。EQをアプリ上で操作してみたところ、DAWで操作しているようで非常に使いやすいと感じた。また、Bluetooth機能も付いているので、スマートフォンなどと接続して使用することもできる。

端子群をサブウーファーの背面に装備。左からマイク/ライン・イン(XLR/フォーン・コンボ)×4、Hi-Z入力端子(TRSフォーン)×2、AUXイン(ステレオ・ミニ)×1、スルー・アウト(XLR)。天面には、エフェクトなどを選択するツマミやディスプレイを用意。USB-A端子を2つ搭載し、外部機器の充電やAKGワイアレス・システムの電源として使用できる

端子群をサブウーファーの背面に装備。左からマイク/ライン・イン(XLR/フォーン・コンボ)×4、Hi-Z入力端子(TRSフォーン)×2、AUXイン(ステレオ・ミニ)×1、スルー・アウト(XLR)。天面には、エフェクトなどを選択するツマミやディスプレイを用意。USB-A端子を2つ搭載し、外部機器の充電やAKGワイアレス・システムの電源として使用できる

低域と高域のつながりが良く自然な印象

 いつも各所でリファレンス音源にしているベックの「モーニング」やブルーノ・ペルナーダスの「Ahhhhh」など6曲を順次聴いてテストしたところ、低音のピークがPAで一番気持ち良く音を体感できる50〜60Hzにあった。個人的にはこの帯域にバス・ドラムやベースなどの中心周波数があると、低域の広い気持ちの良いサウンドが作りやすいと思っている。また、ここの帯域が心地良く出ると、ほかの帯域も安定して聴くことができる。PAにおいて、低域のピークがこれよりさらに低い帯域や少し高い帯域になっていると、音がこもってしまって明りょう度が低いという印象を与えやすい。

 高域はサラッと空気感のあるサウンドでうるさ過ぎることはなく、中域も立体的。低域とのつながりが非常に良く自然だ。直接マイクを接続してチェックしたところ、EQがフラットの状態でも既にチューニングされたような整った音だった。

 上述したような低域と高域のバランス感から、音が視覚的に整理されているようなイメージのスピーカーだと感じた。まさに音楽が聴きたくなるスピーカーだ。面で広がってくるようなサウンドはとにかく気持ちが良く、自宅で鳴らせるくらいの音量に下げても同様の体感を得ることができた。

 ほかのメーカーのほぼ同サイズ同種類のスピーカーを所有しているので比較してみると、PRX Oneの低音の格好良さはさすがJBLといった印象。FUJI ROCK FESTIVALのステージRED MARQUEEなどで採用されている、JBL PROFESSIONALの大型ラインアレイ・シリーズVTXあたりのサウンド・キャラクターを受け継いでいるように感じた。

 コラム型スピーカーは最近一般的になりつつあり、私も幾つかのメーカーの製品を試したが、どれも基本的には良いと感じる。“ここから音が出ていますよ”という感じではなく、自然な広がりがあって空間をコントロールしやすいので、とても使いやすい。しかし、スピーカー口径が小さいせいか、過入力に対して音質が悪く感じることがある。PRX Oneはそれが無く、先述したようにJBLの大型ラインアレイ・シリーズのサウンドを継承している印象があるので、過酷な現場での使用にも対応できると感じた。

 PRX Oneは、小さい多目的スペースでの仮設の現場や、カフェやイベント・スペース、リハーサル・スタジオなどさまざまなスペースでの使用が可能だ。このタイプは設置してみると意外にスタンド・タイプのスピーカーよりもスペースを取らないということもあり、どんな環境にもお薦め。DJのモニターにも良いのではないかと思った。ミュージシャンは楽器アンプ代わりに使用してもレンジが広くブーミーにならないので、モニタリングしやすいサウンドが作れそうである。

 

岡直人
【Profile】フリーランスとして活動するサウンド・エンジニア。君島大空、Tempalay、中村佳穂、KID FRESINOなどのライブPAを手掛けるほか、舞台の音響や舞台音楽の制作もこなす。

 

JBL PROFESSIONAL PRX One

オープン・プライス

(市場予想価格:218,000円前後)

JBL PROFESSIONAL PRX One

SPECIFICATIONS
▪スピーカー構成:12インチ径ウーファー+2.5インチ径ツィーター×12 ▪指向性:130°(水平)×30°(垂直) ▪最大出力レベル:130dB ▪内蔵アンプ:2,000W(ピーク)、1,000W(RMS)、クラスD ▪周波数レンジ:35Hz〜20kHz(−10dB)、40Hz〜20kHz(−3dB) ▪クロスオーバー周波数:260Hz ▪消費電力:300W ▪外形寸法:375(W)×2,042(H)×446(D)mm ▪重量:25.7kg(本体)

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