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意外と知らない!?アルファベット・キーのみによるDigital Performerのショートカット|解説:野中“まさ”雄一

意外と知らない!?アルファベット・キーのみによるDigital Performerのショートカット|解説:野中“まさ”雄一

 野中“まさ”雄一です。普段は歌もの曲の作編曲や劇伴制作、ライブ演奏など幅広く行っています。どんなときでも相棒として役立ってくれているのがDigital Performer(以下DP)です。かれこれ四半世紀以上使い続けていて、僕なりの便利な使い方を、これから4回にわたりご紹介させていただこうと思います。現在DPをお使いの方は機能の復習がてら、全く使用したことがない方は“そんな機能があるのか”と楽しんでいただけたらうれしいです。

Cを押しながらの操作でMIDIノートを4分音符に素早く分割

 僕がDPと出会ったのは、Performer 5の時代です。当時はまだ学生でしたが、ピアノやパーカッションなど楽器演奏をしており、パソコンでも“MML”と呼ばれる英数字で打ち込んでいく“打ち込み”を趣味で行っていました。そんな中、詳しい友人から“Macならマウスを使ってもっといろいろできるよ”と教えてもらい、あり金をはたいて……も簡単に買える年齢でもなく、親に頼み込んで秋葉原に行ったのを覚えています。

 当時はまだDAWの種類も少なかったものの違いがわからず、店員さんに尋ねたところ“Performerは256色表示で見た目が奇麗です”とお薦めされ、言われるがまま“見た目のみ”で購入にいたりました。

筆者がスタジオに保管していた、Performer 5(1994年発売)の後継モデルにあたるPerformer 6(1997年発売)のディスク。当時はオーソライズにフロッピー・ディスクが必要だった

筆者がスタジオに保管していた、Performer 5(1994年発売)の後継モデルにあたるPerformer 6(1997年発売)のディスク。当時はオーソライズにフロッピー・ディスクが必要だった

 結果的に、数値入力に強くリアルタイム入力の精度も高かったため、当時生演奏やMMLでの入力に慣れていた僕には非常に向いていたようです。とはいえ、まさかそこから何十年も使い続けるとは思いもしませんでした。ここ数年は、起動しない日がほぼないくらい必要不可欠な存在です。無人島に持って行くならDP……は嘘です、言いすぎました(笑)。

筆者が現在使用しているテンプレート。DPは全体の見た目(テーマ)をカスタマイズ可能なので、最近のデフォルトである黒色主体のものではなく、DP初期のテーマに近いものを使用している。MIDIノートを譜面化するクイックスクライブエディターも表示

筆者が現在使用しているテンプレート。DPは全体の見た目(テーマ)をカスタマイズ可能なので、最近のデフォルトである黒色主体のものではなく、DP初期のテーマに近いものを使用している。MIDIノートを譜面化するクイックスクライブエディターも表示

 と、散々愛着あることを書いておきながら、僕はいわゆる“DAW”の作業がとても嫌いです。とにかく時間がかかるし面倒じゃないですか。僕がいただくお仕事の中には“納期は明日”なんてものもまれにあり、作業を想像するだけで腰が重くなってしまいます。頭の中で鳴っている曲が、何もせずすぐに音源になってくれたらなぁと常々思っている、何とも面倒くさがりな僕ですが、とはいえ、やはり制作をするにはDAW。使わないわけにはいきません。ならば、その面倒な作業をできる限り早く、簡単に済ませ、納期までの時間を“音楽のことを考える時間”に多く費やしたいわけです。

 そんな思いを知ってか知らずか、DPにはかなり多くのショートカットがあります(カスタマイズも可能)。時短した分、楽曲のことを考える時間を増やせる、と考えるだけで少しモチベーションが上がりますよね。今回はそんなショートカットを使った時短テクニックの一部をご紹介します。

 ショートカットというと誰もが思い浮かべるコピー&ペーストのように、commandキー(Windowsではctrlキー)など修飾キーを押しながら実行するものが多いです。もちろんDPでもこういったものが多数ありますが、それ以外に“アルファベット・キーを単独で押すだけ”というショートカットが存在します。例えばCは“Cut”のCを表すハサミツールとして、Pは“Pencil”のPを表す鉛筆ツールとして、といった具合です。

 それでは具体的に使ってみましょう。全音符で伸ばしていたストリングス。しかもちょっと頭を早めに弾いてしまいました。これを頭拍ぴったりに合わせつつ、4分音符4回にして、クレッシェンドもしたい……という場合。これらを一つ一つ修正していくのは結構面倒な作業です。

 そこでショートカットを駆使していきます。まずはMIDIエディターを表示。編集したい音の左下辺りから、Cを押しながら次の拍へ右方向にドラッグしていきます。これだけで、MIDIノートが4分音符に分割されます。ノート自体をクリックするとそのノート単体に、余白をクリックするとその拍にあるノート全体に適用されます。

Cを押すと、マウス・ポインターがハサミの形に変化。MIDIノートの左下辺りから、Cを押しながら次の拍へ向かって右方向にドラッグしていくと、ノートを1拍ごとに分割できる。和音すべてに適用したい場合は、ノートの無い余白部分から右方向にドラッグしていくことで、和音の全体が拍ごとに分割される。筆者は分割後、頭拍から飛び出した先頭部分(矢印)を削除して調整を行っている

Cを押すと、マウス・ポインターがハサミの形に変化。MIDIノートの左下辺りから、Cを押しながら次の拍へ向かって右方向にドラッグしていくと、ノートを1拍ごとに分割できる。和音すべてに適用したい場合は、ノートの無い余白部分から右方向にドラッグしていくことで、和音の全体が拍ごとに分割される。筆者は分割後、頭拍から飛び出した先頭部分(矢印)を削除して調整を行っている

 Cを離せば元の矢印ツールに戻るので、早く弾きすぎて飛び出してしまった頭の部分を選択してDelete。その後、4分音符に分割した音をすべて選択して、ノートの右端でcommandを押しながら、少しだけ左にドラッグ。自然な感じで聴こえるように、すべてのノートの音価を少し短くしておきます。

 次にベロシティです。MIDIエディターの下段、ベロシティが表示されているところで、今度はVelocityの頭文字Vを押しながら、左下から斜め右上にマウスをドラッグすると、だんだん強くなるようにベロシティを変更できます。例で扱っているのはストリングス音源のため、伸ばしている中にも抑揚を付けるためにクレッシェンドしたいのでMIDI CC(コントロール・チェンジ)も描きましょう。1を押して下部の鉛筆ツール設定をCC1にしつつ(音源によってCCは異なります。エクスプレッションなら4)こちらもPを押しながら右上にドラッグするだけで、クレッシェンドのCCを簡単に描くことができます。

Pを押すとマウス・ポインターが鉛筆の形に変化。このまま右上に向かってドラッグしていくと、クレッシェンドするように描くことができる。一度描いてうまくいかなかった場合は上書きできるが、ベロシティを部分的に選択してRを押しながらドラッグしていくと、選択した部分だけ値を変更することも可能だ

Pを押すとマウス・ポインターが鉛筆の形に変化。このまま右上に向かってドラッグしていくと、クレッシェンドするように描くことができる。一度描いてうまくいかなかった場合は上書きできるが、ベロシティを部分的に選択してRを押しながらドラッグしていくと、選択した部分だけ値を変更することも可能だ

完成したMIDIエディター画面。筆者はフリーハンドで書くことにより味を出せると考えているが、リシェープカーブツール(コントロールパネルのエディターツールから設定可能)を使うと、直線や、画面右側のようなサイン波など、図形のように描くこともできる

完成したMIDIエディター画面。筆者はフリーハンドで書くことにより味を出せると考えているが、リシェープカーブツール(コントロールパネルのエディターツールから設定可能)を使うと、直線や、画面右側のようなサイン波など、図形のように描くこともできる

 これで完了です。文章では長いように感じますが、やってみるとあっという間です。ちなみに、今回は長押しでの手法をご紹介しましたが、同じキーを2回押すことで、一時的でなくツールを切り替えることができます。長押しだと指が……というときには2回押しをしましょう。

Wを使ったフェーダー操作でトラックのボリュームを一括調整

 キー単体押しは、MIDIエディター以外のほかの場面でも使えます。僕は楽曲制作の際、ついいろいろと楽器を足してしまったばっかりに、全体の音量が大きくなりすぎてしまうことが多々あります。各トラックの音量を均等に下げたいのですが、グループを作るのは面倒。そんなときの使い方です。

 まずミキサー画面を開き、下げたいトラックだけをトラックセレクタから選択してミキサーを表示します。そして、W(何の頭文字かは不明です)を押しながらフェーダーを下げていくと、表示されているトラックすべての音量を下げられます。

ミキサー画面。Wを押しながらフェーダーを上下することで、表示されているトラックすべてを上げ下げできる。押しながらの操作が難しい場合は、Wを2回押すと表示されているトラックをグループ化し、その後Wを1回押すことで解除される

ミキサー画面。Wを押しながらフェーダーを上下することで、表示されているトラックすべてを上げ下げできる。押しながらの操作が難しい場合は、Wを2回押すと表示されているトラックをグループ化し、その後Wを1回押すことで解除される

 同じようにWを押しながら、フェーダー下にある数値を直接入力しても全体がその分下がります。この際、ほかのトラックは入力した数値と同じだけ下がるのではなく、自動で相対的な割合の数値で下げてくれるのもありがたいポイントです。もちろんフェーダーを上げる際も同様となります。

 いかがでしたでしょうか。初めは覚えるのが面倒なショートカットですが、慣れると作業効率がぐんと上がるので、知っておいて損はない機能です。まだまだ奧が深いショートカット、次回も引き続き深掘りしていこうと思います。

 

野中“まさ”雄一

【Profile】作編曲家/キーボーディスト/ドラマー。AKB48、乃木坂46、氷川きよし、中島美嘉などのJポップをはじめ、CM/映画/アニメなど、多方面での幅広いジャンルの楽曲制作および編曲、プロデュースなどを行い、これまで1000曲以上の楽曲をリリース。2015年にはオリコン日本編曲者年間売り上げランキング1位となる。2019年、2020年、2021年、日本レコード大賞優秀作品賞受賞。

【Recent Work】

『革命前夜』
氷川きよし
(日本コロムビア)

 

MOTU Digital Performer

オープン・プライス

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LINE UP
Digital Performer 11(通常版):60,500円前後
*オープン・プライス(記載は市場予想価格)

REQUIREMENTS
▪Mac:macOS X 10.13以降
▪Windows:Windows 10(16ビット)
▪共通:INTEL Core I3または同等のマルチプロセッサー(AMD、Apple Siliconを含むマルチコア・プロセッサーを推奨)、1,024×768のディスプレイ解像度(1,280×1,024以上を推奨)、4GB以上のRAM(8GB以上を推奨)

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