クラブのみならず業界全体で対策が求められている
ベルリンではクラブや音楽イベントが勢いを取り戻し、先週末にはラブ・パレードの主催者が改めて企画した“Rave The Planet”なる屋外パレードに、テクノを求めて20万人が集ったようだし、その前の週にはベルリン近郊で開催されたFusion Festivalに7万人以上が詰めかけたという。街を歩いていても、すっかり観光客も戻ってきたようだ。
そんな、せっかく2年ぶりに訪れた解放感あふれる初夏に、深刻な問題が広がっている。“スパイキング”と呼ばれるものだ。日本では“レイプドラッグ”または“デートレイプドラッグ”と呼ばれたりしているが、性的暴力などを目的として本人が知らないうちに薬物を摂取させることである。ベルリンでは、もう何年も前から、クラブなどで飲み物に薬物を混入される被害が相次いでいる。“他人から渡された飲み物は飲まないように、また自分のグラスからも目を離さないように”とバー・エリアに注意書きが書かれている店が多数ある。しかし、昨年の後半頃から、“ニードル・スパイキング”という手口が広がりはじめている。なんと注射器を使って薬物を注射するというもの。細い針を使用すれば刺されたことに気づかない場合がほとんどだという。これでは来場者が密着するクラブやコンサート会場では、どうにも気を付けようがない。
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今年に入って、BerghainやSisyphosといった観光客にも人気の市内の大型クラブで深刻な被害にあった人が、SNSにそのことを投稿するケースが複数あり、店のみならず業界全体で対策が求められている。名指しで対応の不備について批判を受けたBerghainは、“これまで書く必要が無かった暗黙のルール”として、公式ウェブサイトに異例の特設ページを加えた。“一緒に楽しむために:自分と友達をケアしよう”と注意を呼びかけるとともに、お互いを見守るよう促した。何かあった場合には、すぐにスタッフが対応するとしている。
浅沼優子/Yuko Asanuma
【Profile】2009年よりベルリンを拠点に活動中の音楽ライター/翻訳家。近年はアーティストのブッキングやマネージメント、イベント企画なども行っている