Berlin Calling〜第87回 Tresorが31周年を記念し約2カ月間のフェスティバルを開催

7週間にわたり150組が出演予定

 今年5月の上旬に、市内のほかのクラブよりも少し遅れて営業を再開した老舗のテクノ・クラブ、Tresor。筆者も再開初日に足を運んだのだが、大幅にリニューアルされていた。半地下のメイン・フロアTresor、2階のGlobusフロア共にサウンド・システムを入れ替えたそうで、音質は格段に良くなっていた。特にGlobusフロアはDJブースやバーの位置ががらりと変わり、全く別のクラブのようになっていて、ずっと居心地が良かった。そんなTresorは、今年でオープン31周年!

 営業再開後間もなくして、今度は夏のフェスティバル開催が発表された。Tresorの31周年を、同クラブと同じビル内にある小箱Ohmと、これまでBerlin Atonalの会場となってきた巨大スペースKraftwerkを使って祝うという。なんと、7週間にわたり総勢150組が出演予定の“Tresor 31: Techno, Berlin und die große Freiheit(テクノ、ベルリン、そして偉大なる自由)”というフェスティバルとして開催するというのだ。パンデミック中に歴史的な30周年を祝うことができなかった雪辱を、万全の準備を整えた上で晴らすという意気込みが感じられる。

Tresor 31の特設サイト。今後プログラムの詳細が明かされていく予定となっている

Tresor 31の特設サイト。今後プログラムの詳細が明かされていく予定となっている

 昨年、12インチ12枚というボリュームのボックス・セットとして発売されたTresor 30のコンピレーションも非常に野心的で先駆的な内容だったが、今年のフェスティバルも同様にバラエティに富んだものになりそうだ。会期は7月初頭から8月末までの、夏休みシーズンの7週間。20夜におよぶクラブ・イベントのほかに、コンサートや、31年の“芸術的社会運動としてのテクノ”の歴史を振り返るエキシビションも開催される。展示は3Dサウンド・スペースを提供するベルリンのオーディオ・メーカーUSOMOの協力を得たインスタレーションとなる予定。

 現在は、すべての関連イベントに行けるという“ゴールデン・パス”が150ユーロ(約2万円)で販売されているが、アーティストのラインナップは一部しか発表されていない。出演が決まっているのはモーリッツ・フォン・オズワルド、オクターブ・ワン、レジス、サージョンといったクラブに縁のあるベテラン勢から、Blackhaine、Yazzus、LNS、KMRU & Aho Ssanといった話題のニューカマーまで、すでにかなりの幅の広さを感じさせる。Tresorが提示する、過去、現在、そしてより開かれた未来の“テクノ”をこの夏は十分に体験できそうだ。

時代を感じさせるTresorのアーカイブ写真。左から、若き日のジェフ・ミルズ、Tresorのオーナーのディミトリ・ヘーゲマン、ロラン・ガルニエ ©Oliver Wia(Tresor提供)

時代を感じさせるTresorのアーカイブ写真。左から、若き日のジェフ・ミルズ、Tresorのオーナーのディミトリ・ヘーゲマン、ロラン・ガルニエ
©Oliver Wia(Tresor提供)

 

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浅沼優子/Yuko Asanuma

【Profile】2009年よりベルリンを拠点に活動中の音楽ライター/翻訳家。近年はアーティストのブッキングやマネージメント、イベント企画なども行っている