DJ Scotch Egg - Beat Makers Laboratory Vol.107 〜さまざまな人とコラボレーションしてやり方を教えてもらうことを勧めたい

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世界の各都市で活躍するビート・メイカーのスタジオを訪れ、トラック制作にまつわる話を聞いていく本コーナー。今回登場するDJスコッチ・エッグは、約10年前からベルリンを拠点におく日本人ビート・メイカー。低域を重視したエネルギッシュなビートを得意とし、多彩なアーティストたちと共同制作している。5月28日には、ウガンダで制作したアルバム『Tewari』がNyege Nyege Tapes傘下のHakuna Kulalaから発売された。

Interview & Photo:Yuko Asanuma

 

キャリアのスタート

 出身は東京です。ノイズやクラウト・ロックが好きだった兄の影響で、ノイズ・ギターを始めたのがきっかけ。一人でテープに録音したりして、いわゆる宅録をやっていたんです。2000年にはイギリスのブライトンに引っ越し、現地で“Wrong Music”というイベントを始めました。ノイズなど、カテゴライズ不可能な音楽をやっている人たちを集めたようなイベントです。そこでNINTENDO Game Boy用の作曲ゲーム・ソフト、OLIVER WITTCHOW Nanoloopをパフォーマンスに使い始めました。次第にGame Boyのボタンを押しているだけではつまらなくなってしまい、マイクも握ってシャウトするようになったんです。当時はまだ呼び名はありませんでしたが、後からそのサウンドは“ブレイクコア”として認知されるようになりました。しかし、だんだんとGame Boyのみでできる表現の限界を感じてきて、2007年ごろに元ボアダムスのドラマーであるE-daさんと一緒にドラム・アイズというユニットを始めたんです。さらにシーフィールというバンドには、僕がベース、E-daさんがドラムとしても参加しています。その後、ベルリンへ引っ越しました。

 

機材の変遷

 始めのころはGame BoyとNanoloop、そしてマイクだけでした。Game Boy1台に約4曲くらいしか保存できないため、ライブでは一時期Game Boyを4台併用していましたね。本体以外にバックアップができないから、完成した曲はレコーディングしたらおしまい。新しい曲は上書きしていくしかなかったんです。そういう制作方法だったので、いわゆる“ビート・メイキング”のやり方は全然知らず。その後、しばらくAPPLE GarageBandを使うのですが、結果MP3の音源でアナログ・レコードをリリースしたりしていました(笑)。あるときザ・ゴー!チームというバンドのギタリスト=サム・ドゥークという友人がSTEINBERG Cubaseを使ったレコーディングやプロデュースの仕方を教えてくれたんです。ドラム・アイズをやり始めたころからは、ABLETON LiveをメインのDAWとして使っています。2008年ごろ“Wrong Music”にシャックルトンを呼んで以降彼とは友人で、今のスタジオを共同で使っているんですが、彼はほとんどLiveのみで制作をしていてるんです。彼は“ほかに機材は要らないよ”と言っているので、僕もほぼLiveだけで作るようになりました。今の機材さえあれば、どんな状況でも自分の音楽表現は可能です。

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ベルリンにあるDJスコッチ・エッグとテクノ・プロデューサーのシャックルトンが共同で使用するスタジオ。基本的にライブ時に使用する機材をセッティングしており、同じ環境で制作をしているそうだ。スタジオ・モニターにはパワードのTAPCO S5を、オーディオI/OにはMOTU UltraLite MK3を装備する

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デスク中央にセットされている小型アナログ・コンソールのYAMAHA MG12XU。内蔵エフェクトがライブや制作に不可欠だそう

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かつての愛用機NINTENDO Game Boy。現在は、たまにライブで使用する程度だとDJスコッチ・エッグは話している

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フロッピー・ドライブの筐体に入れたカスタム版KORG Monotron Delay

音源について

 ABLETON付属のソフト・シンセOperatorを使って、よくキックの音などを作ります。また、友人からROLAND TR-808などの機材を借りてリズム・マシンの音をサンプリングすることもあれば、いわゆるサンプル・パックの音を使うこともあります。僕にとっては、音源は何でもいいんです。要は、ミックスの段階での処理が重要だから。

ビート・メイキングのこだわり

 とりあえず、激しく!

ミックスについて

 ベースを一番大きくします。またABLETON付属のスペクトラム・アナライザーSpectrumを使って、周波数グラフを確認しますね。『Tewari』に関しては作ったときの雰囲気を生かしたかったので、ひずんだところもそのままに残しました。

読者へのメッセージ

 僕の場合、本当にいろいろな友人からビート・メイキングを教わってきたので、さまざまな人とセッションしたりコラボレーションしたりして、やり方を教えてもらうことを勧めたいです。僕も知っていることは教えますよ!

 

SELECTED WORK

『TEWARI』
スコッチ・ロレックス
(Hakuna Kulala)

 2019年7月から9月までの間、ウガンダのカンパラに滞在して交流を深めた多数の現地アーティストたちをフィーチャーした作品です。ちなみにロレックスは現地で人気のフード名。