こんにちは。シンガー・ソングライターの“しまも”です。私は、ダンスや楽器演奏などのパフォーマンスをショート・ムービーにして投稿するサービス=TikTokでのコンテンツ配信にも注力しています。ピアノ弾き語りやオリジナル曲の発表がメインで、制作にPRESONUS Studio One(以下S1)を活用しているので、今回はその一端を紹介します。
メリハリの効いた15秒の曲をハウス/テクノ・テンプレで制作
近年、TikTokが人気アーティストやヒット曲を生み出す場として話題です。でもなぜ、このショート・ムービー投稿サービスが大きな影響力を持つのでしょう?
TikTokでは、動画に付随する音声(例えば弾き語り)を第三者に使ってもらうことができます。動画を投稿すれば、視聴画面の右下にくるくる回るレコードのアイコンが出てくるので、第三者はそれをタップした後、“この楽曲を使う”ボタンを押すと、自らの動画にその音声を付けて投稿できるのです。音声がオリジナル曲だった場合、多くの人に使ってもらえたら、それだけ拡散しますよね。
また、サブスクなどでリリースした作品をTikTokに登録し、第三者に使ってもらうことも可能。投稿画面の“楽曲を選ぶ”アイコンから検索画面に入り、登録済みの作品を探して使用できる仕組みです。私はサブスクで楽曲をリリースする際、同時にTikTokにも登録するようにしています。TikTokでバズればサブスクで聴かれる可能性が高まるので、それも“ヒット曲を生み出す場”と目される理由でしょう。
私の場合、サブスクなどで発表するオフィシャル・リリースの楽曲はアレンジャーやエンジニアの方々と制作しているのですが、TikTok用コンテンツは自分一人で作っています。役立っているのはS1の“ハウス/テクノ”。新規ソングを立ち上げるときに“スタイル”欄で選択できるソングのテンプレートです。なぜこれがTikTok用の音声制作に効果的なのか、理由は大きく2つあります。
その① デフォルトの尺が約15秒
その② テンポが良くて耳目を引く曲が作りやすい
まず“その①”について。TikTokでは現在、投稿できる動画の長さに15秒、60秒、3分の3つのモードが用意されています。ただ、当初は15秒だけでしたし、“おすすめ”欄に取り上げられた動画がものすごい速さで視聴されていくという世界なので、どうしても短い動画の方がバズりやすいと思うんです。なので私は基本的に15秒。ハウス/テクノ・テンプレートは8小節で約15秒というのがデフォルトなので、それに沿って作れば目的の尺に収めやすいのです。
次に“その②”。ハウス/テクノ・テンプレートは、初めからさまざまな音源やリズム・パターン、コード・パターンを含んでいて、8小節の楽曲のような体裁になっています。その8小節の中に“最初の方は抑えめで徐々に音が増えていく”といった展開があるので、それを元にアレンジしていくとメリハリが作りやすい。またコード・パターンを編集して複雑な響きにするとか、今トレンドの“丸サ進行”にするとか、バリエーションもつけやすいと感じています。
TikTokでは、“最初の5秒”でいかにインパクトを与えるかが重要だと思います。頭の方にあえて変なフレーズを入れたり、大胆な変化をつけたりすることで、最後まで視聴してもらえる可能性が高まるでしょう。あとメロディがコロコロ変わるような、短い尺の中で聴いていても面白い曲が好まれると思うので、まずはハウス/テクノ・テンプレートの15秒の中に魅力的な要素を詰め込んで曲作りしてみてはいかがでしょうか。
トレンドのエレピ音色をPresence XTで鳴らす
ハウス/テクノ・テンプレートに含まれる音源で気に入っているのは、ドラム・サンプラーのImpact XTです。これは全16個のパッドに単発のキックやスネアの音(ドラム・サンプル)を入れて鳴らせる音源で、一つ立ち上げるだけでドラムの打ち込みを完結させることができます! 私はDTMを始めた頃、ドラムは各打楽器を個別のトラックに打ち込んで作るものだと思っていたのですが、Impact XTを使えばインストゥルメント・トラック一つで全要素を打ち込めるのが手軽です。
Impact XTにはさまざまなジャンルに向けたドラム・キットがプリセットされているので、好きなものをそのまま使うもよし、一部を別のドラム・サンプルに差し替えて使うもよし。最近は指パッチンの音=フィンガー・スナップが流行しているので、そういったトレンドの音を取り入れてみるのも面白いでしょう。ピアノ+スナップのみ、という超シンプルなアレンジもTikTokで映えやすいスタイルだと思います。
トレンドと言えば、WURLITZER製ビンテージ・エレピ系のサウンドもTikTokなどで人気だと思います。かわいい音としても使えるし、おしゃれな雰囲気にもなるし、使ったことがない方にはぜひ試してみてほしいですね。ハウス/テクノ・テンプレートに含まれる音源、Presence XTにはWurly EPというプリセット音色があって、WURLITZERのエレピさながらの音が鳴らせます。例えば、曲のスパイスになるような高音のパッセージを打ち込めば、かわいくておしゃれな感じを演出できるでしょう。このWurly EPにS1のディストーション・プラグイン、RedlightDistをかけるとエモさが増すこともあります。RedlightDistについては、次回詳しく紹介する予定なのでお楽しみに!
さて、Presence XTは鍵盤楽器から弦楽器、シンセ音色まで収めたマルチ音源なので、よく使っています。例えばベース音色のWide Chorus Bassもフェイバリット。スマートフォンの内蔵スピーカーでも聴こえやすい音だし、私はもともとベーシストなので、低音がトラックに入ったときの心にぎゅんぎゅんくる感じが好きなんです。
私感ですが、TikTokでは“面白い要素てんこ盛りの曲”か“超シンプルに聴かせる曲”かのどちらかに振り切るのが大事だと思っています。あと、曲のタイトルをコメント欄で募集すれば、歌詞までじっくり聴いてくれる人が増えたり、コメントの数が上がったりするので、工夫次第でより多くの方々に自分の曲を届けることが可能です。次回もTikTokで効果的な手法を解説できればと思いますので、よろしくお願いします。
しまも
【Profile】宮城県出身のシンガー・ソングライター。YouTube、Twitter、TikTokなどのSNSフォロワーが計150万人を超え、『SUMMER SONIC 2019』『YouTube Music Weekend』などの大型イベントに出演する一方、YouTube LIVEなどでリクエストを即興で弾き語りするなど、多方面で活躍。代表曲「YOU」はTikTokで5億回再生を超え話題に。『TikTok Spotlight Audition』優勝。『Billboard TikTok年間楽曲ランキング2019』2位獲得。
【Recent work】
『泣き笑い愛』
しまも
(shimamo Records)
PRESONUS Studio One
LINE UP
Studio One 5 Professional 日本語版:42,900円前後|Studio One 5 Professional クロスグレード日本語版:35,200円前後|Studio One 5 Artist 日本語版:11,000円前後|Studio One Prime:無償
※いずれもダウンロード版
※オープン・プライス(記載は市場予想価格)
REQUIREMENTS
▪Mac:macOS 10.13以降(64ビット版)、INTEL Core I3プロセッサーまたはAPPLE Silicon(M1チップ)
▪Windows:Windows 10(64ビット版)、INTEL Core I3プロセッサーまたはAMD A10プロセッサー以上
▪共通:4GB RAM(8GB以上推奨)、40GBハード・ドライブ・スペース、インターネット接続(インストールとアクティベーションに必要)、1,366×768pix以上の解像度のディスプレイ(高DPI推奨)