TEENAGE ENGINEERING OP-1 field 〜Rock oN Monthly Recommend vol.49

TEENAGE ENGINEERING OP-1 field 〜Rock oN Monthly Recommend vol.49

 注目の製品をピックアップし、Rock oNのショップ・スタッフとその製品を扱うメーカーや輸入代理店に話を聞くRock oN Monthly Recommend。今回はTEENAGE ENGINEERINGのポータブル・シンセサイザーOP-1に100以上の新機能を搭載したというOP-1 fieldを紹介する。メディア・インテグレーションの宮地陽太氏とマイニッケ・ルシアン氏、多田純氏に話を聞いた。

Photo:Takashi Yashima

OP-1 field

OP-1 field|286,000円

OP-1 field|308,000円

 10年以上にわたり培われたアイディアと改良を新たに投入したというOP-1 field。シグナル・チェイン全体のステレオ化を果たすとともに、Bluetooth MIDI対応、USB-C端子の採用、パッシブ・ラジエーターを搭載した新しい内蔵スピーカー・システムなどの大きな刷新が見られる。バッテリーは最大24時間駆動可能な大容量のものとなった。

OP-1 field 手前側の側面

OP-1 field 底面

手前側の側面(上の写真)と底面(下の写真)。側面の中央にある白いラインはWi-Fiアンテナ(2.4GHz帯)。底面にはパッシブ・ラジエーターを2基搭載(黒い環状の部分)

右側の側面。USB-C端子、オーディオ・インプット/アウトプット(いずれもステレオ・ミニ)を備える

右側の側面。USB-C端子、オーディオ・インプット/アウトプット(いずれもステレオ・ミニ)を備える

●まず、TEENAGE ENGINEERINGとはどのようなメーカーであるのかをあらためて教えていただけますか?

宮地 すごく遊び心のある製品をリリースしているメーカーです。創業者はもともとプロダクト・デザイナーで、アーティスティックな視点を楽器と融合させています。今回紹介するOP-1 fieldはシーケンサーなどのグラフィックがとても面白いですし、そういうユーザーが少しクスッとするようなギミックを楽器に混ぜてくれるメーカーですね。

 

●OP-1 fieldはどのような製品なのでしょうか?

宮地 OP-1 fieldは、鍵盤で演奏した音にエフェクトをかけて処理し、4トラックの“テープ・レコーダー”に録音できるほか、サンプラーとしても使用できるシンセサイザーです。OP-1 fieldとミキサーのTX-6は、ともに“フィールド・シリーズ”と呼ばれています。現在、音楽制作はパソコンで行うのが主流だと思うのですが、その流れに逆行して“パソコンが無い環境でも音楽制作や演奏ができる”というのをコンセプトに作られました。

 

●旧モデルのOP-1を11年ぶりにモデル・チェンジして100種類以上の機能を新たに搭載したそうですね。

宮地 そうですね。テープ・レコーダーが4種類から選べるようになったこと、入出力がステレオに変わり、それに対応したシンセサイザー・エンジン“Dimension”が備わったことが大きな変化です。内蔵スピーカーも非常に良くなったので、外でも良い音で演奏を楽しめます。ディスプレイの解像度も高くなりましたし、バッテリーの駆動時間はOP-1では16時間だったのですが、OP-1 fieldは24時間と長くなりました。

ルシアン 起動速度もかなり速くなっていて、OP-1は10秒ほどかかるのですが、OP-1 fieldは3秒ほどで起動します。

多田 僕はもともとOP-1を使っていました。OP-1の時点でなんでもできて完成度が高かったので、今回OP-1 fieldに進化したことで僕らユーザーの要望をほぼ全部かなえてくれたんじゃないかと思います。やり方を一度覚えれば、その日のうちに一曲作れるという手軽さはOP-1と変わらずですし、深掘りすれば長く使っているユーザーでも知らない機能がたくさん出てくるので、ずっと楽しめます。

 

●直感的な操作性はOP-1シリーズの大きな魅力です。

宮地 OP-1 fieldのデモンストレーションの中で、来場者に30分で曲を作ってもらうという企画をやっていました。結構みなさんやり方をすぐに覚えて、演奏を楽しんでいましたね。操作方法さえ分かってしまえば、すぐにのめり込める製品になっています。僕は自宅でOP-1 fieldを触っていたら、子供に取られてしまいました(笑)。シーケンサーがすごく優秀で鍵盤を押すだけで面白い音がたくさん入っているので、子供でも楽しめるんです。

ルシアン OP-1 fieldのシーケンサーにはホールド機能が新たに追加され、より使いやすくなりました。この機能を使って音を鳴らした状態でエンコーダーを回せば、そのまま音階を変えることも可能です。

宮地 グラフィックに遊び心があって面白いのはOP-1もOP-1 fieldも共通しているのですが、OP-1 fieldではディスプレイに数字が表示されるようになりましたね。

ルシアン OP-1は確かに操作が直感的ではあったのですが、パラメーターの数値表示が無く、何が起きているかが分かりにくいという問題がありました。OP-1 fieldでは何のパラメーターをどれだけ動かしているのかが比較的分かりやすくなったので、もっと音を作り込みたい人にも向いています。

 

●OP-1 fieldでは録音するテープ・スタイルを4種類から選べるようになりました。

ルシアン スタジオ4トラック、ビンテージ4トラック、ポータ4トラック、ディスクミニの4種類から選べます。それぞれ実機の特徴を捉えた細かな工夫がちりばめられています。

宮地 カセット・テープをシミュレートしたポータ4トラックはヒス・ノイズが乗っていたり、ディスクミニはコンプ感がある音になったり、かなり実機の質感が再現されていますね。

ルシアン また、OP-1だと1曲作り終えたらデータを消さないと新しい曲を作れなかったのですが、OP-1 fieldでは最大8つまで曲を保存しておくことが可能です。

 

●FM放送を受信してサンプリングすることができるのもユニークです。

宮地 これはOP-1から備わっている機能です。ラジオを受信してその一部をサンプリングし、エフェクトをかけたり、タイミングを調整してビートを組むことができます。OP-1を購入される方は、これが目当ての方が多かった印象です。

ルシアン 本体の録音機能もOP-1 fieldになり大きく改善されています。OP-1ではモノラルの録音しかできなかったのですが、ステレオでの録音にも対応するようになりました。画面表示も大きく変わっていて、DAWのように波形が表示される仕様になっています。サンプルの切り抜きや、再生する位置の調整が本当にやりやすくなりましたね。内蔵マイクの音質もアップデートされています。

宮地 さらに、OP-1 fieldはラジオ放送の受信だけでなく発信も可能です。周波数を合わせたほかの機器に再生音を送ることができます。これはまさしく遊び心の現れですよね。

 

●発信機能はどういう使い方を想定しているのですか?

ルシアン TEENAGE ENGINEERINGのスピーカーOB-4のラジオ受信機能と組み合わせて使ったり、OP-1 fieldから発信した音をもう一台のOP-1 fieldで受信して、あえて劣化した音でサンプリングしたり、工夫次第でいろいろな使い方ができると思います。

宮地 車のラジオに電波を送って、みんなで演奏を聴くという使い方も面白いかもしれないですね。 

 

●新開発されたシンセ・エンジン“Dimension”について教えてください。

ルシアン OP-1はシンセサイザーの処理がモノラルだったのですが、OP-1 fieldではステレオの処理になっていて、“Dimension”は、このステレオ処理を最大限楽しめる、OP-1 fieldの基本となるシンセサイザーです。

OP-1 fieldに搭載されたシンセサイザー“Dimension”の画面。左から波形を選択する。ステレオ幅の調整や、フィルターをかけることも可能だ

OP-1 fieldに搭載されたシンセサイザー“Dimension”の画面。左から波形を選択する。ステレオ幅の調整や、フィルターをかけることも可能だ

●シンセサイザーに加え、新たにMotherというリバーブも追加されています。

ルシアン OP-1にも空間系のエフェクターは搭載されていたのですが、テールの長いリバーブがありませんでした。Motherは非常に残響の長いリバーブになっています。フィルターをかけることもできますし、ゲートをかけてリバーブの残響の長さを設定することも可能です。

多田 これは僕も前から欲しかった機能の一つです。OP-1は飛び道具系のエフェクトが多かったのですが、Motherは余韻が欲しいときに普通に使えますし、新しいシンセとも相性が良さそうですね。高機能な据え置き型のシンセサイザーとも勝負できる音が作れるようになったと思います。

 

●本体のスピーカーもかなり改善されたそうですね。

宮地 実は本体の裏側にパッシブ・ラジエーターが付いていて低音を補強しているので、OP-1と比較にならないくらい音質がアップデートされたと思います。

多田 キックなどのドラムを鳴らすと振動が伝わってきて“たたいている感”があるのが個人的にすごく良かったです。

ルシアン ベースなどを演奏すると、机がちょっと振動するくらいにはしっかりした音が出るようになりました。

 

●OP-1 fieldをどんな方に試していただきたいですか?

宮地 僕はパソコンの前に座ってひたすら作り込むタイプの人にぜひ触ってほしいと思っています。シーケンサーのプリセットをいじるだけでも楽しいので、リフレッシュするのにお薦めしたいですね。

ルシアン 使えば使うほど音楽的な発見があって、創作意欲が刺激されるので、常にフレッシュな気持ちで使っていただきたいなと思います。

多田 外出先の音から受ける刺激を、その場でスケッチできるというのはもともとOP-1シリーズの強みでした。OP-1 fieldは32ビット/96kHzに対応しているので、自然の音などを一般的なレコーダーよりも良い音で録音できると思います。クリエイターの方にはぜひ外で使っていただきたいです。コンパクトでデザインも良いので、家に1台しかシンセを置けない方にも、“これ一個で全部できますよ!”とお薦めしたいですね。

メディア・インテグレーションの宮地陽太氏
メディア・インテグレーションのマイニッケ・ルシアン氏
メディア・インテグレーションの多田純氏
左から、メディア・インテグレーションの宮地陽太氏、マイニッケ・ルシアン氏、多田純氏

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