TEENAGE ENGINEERING TX-6 レビュー:オーディオI/O機能やドラム&シンセの音源も内蔵する小型ミキサー

TEENAGE ENGINEERING TX-6 レビュー:オーディオI/O機能やドラム&シンセの音源も内蔵する小型ミキサー

 OP-1やPocket Operatorなどユニークでガジェット的なプロダクトをリリースし続けているスウェーデンのTEENAGE ENGINEERINGから、ミキサーTX-6がリリースされた。同ブランドのほかの機器同様にミニマルで美しいデザイン、そして手の平に収まるほどの小型サイズのミキサーの中に、実はすごい機能が隠されているようだ。

リバーブなどのエフェクトを全8種類収録

 TX-6は、何と言っても驚くほど小型! こんな小さなミキサーを私は見たことがない。奥行き10cm弱ほどと小型でありながら、6系統のステレオ入力を搭載。出力はメイン・アウトのほか、ヘッドセット・マイク入力も備えるCUEアウト、任意のトラックだけを出力するAUXアウトまで搭載されている。メイン・アウトはステレオ・フォーン接続だが、ステレオ・ミニ端子への変換プラグが標準装備されているのがありがたい。

リア・パネルには6系統のステレオ入力(ステレオ・ミニ)とUSB-C端子が用意されている

リア・パネルには6系統のステレオ入力(ステレオ・ミニ)とUSB-C端子が用意されている

前面にはAUX/CUEのモード切り替えボタンと、AUXアウト(ステレオ・ミニ)、CUEアウト(ヘッドセット/マイク・ミニ)を搭載。右端がメイン・アウトで、写真ではステレオ・ミニ端子だが、変換プラグを外すとステレオ・フォーン端子となる。本体左側にあるレバーは電源スイッチ

前面にはAUX/CUEのモード切り替えボタンと、AUXアウト(ステレオ・ミニ)、CUEアウト(ヘッドセット/マイク・ミニ)を搭載。右端がメイン・アウトで、写真ではステレオ・ミニ端子だが、変換プラグを外すとステレオ・フォーン端子となる。本体左側にあるレバーは電源スイッチ

 各チャンネルには3バンドEQのノブとボリューム・フェーダー、トラックのミュートなどを制御するトラック・ボタンが装備されている。どれもとても小さいが、操作がしにくいというふうにはあまり感じなかった。

 この十分すぎる標準的なミキサー機能に加え、各チャンネルにはコンプレッサーも搭載。さらにリバーブ、コーラス、ディレイなど8種類のエフェクトもかけることができる。エフェクト・ボタンが2つあり、4種類ずつで分かれているので、2種類のエフェクトを同時にかけることも可能。個人的に楽しかったエフェクトは、ターンテーブルが徐々に止まっていくときのような効果のTAPE。そして、入力した時点の音を伸ばしたまま再生し続けるFREEZEでは、ノブをいろいろ動かしながらエフェクトをかけてみたら予測もできないほどのエグい音なんかも直感的に作れてしまった。そんな遊び心満載のところがTEENAGE ENGINEERINGらしいような気がした。

 48×64pxの小さなモノクロ・ディスプレイでは、ノブやフェーダーを動かすとグラフィックで表示してくれる。特にエフェクトの表示がOP-1などでも見られるかわいらしいグラフィックで、目からも音の情報を楽しく見ることができる。

 電源はUSB-Cケーブルで給電することも充電をすることも可能。フル充電で8時間の使用ができるようだ。USB-Cケーブルはただ給電/充電としてではなく、なんとコンピューターと接続するとオーディオI/Oとしても機能する。実際にABLETON Liveを立ち上げたコンピューターに接続してみたところ、通常のオーディオI/Oを接続するのと何ら変わりない。マルチトラック入力でステレオ6trを同時収録したり、後述するSYNTHモードの音をパラで収録したりもできた。本体のUSB設定で、12イン/12アウトの入出力設定やステレオ・ミックスでの出力も設定できる。またMIDI CCも送信できるので、Liveのボリューム・フェーダーを制御したりとMIDIコントローラー的な使い方もできた。

 ちょっとした機能で楽しかったのが、ヘッドセット・マイクの使用だ。CUEアウトにヘッドセット・マイクを接続してDUCKモードをオンにしておくと、入力した声以外の音がダッキングされるので、DJをしながら曲の解説をするラジオ制作などにもぴったりの機能ではないだろうか。

 ボタンは全部で10数個。各設定をするためにはshiftボタンとほかのボタンとの連携が必要なので、慣れるまでは迷ってしまうかもしれないが、覚えてしまえばこんなにも多機能な設定をこの小ささで扱えてしまうのは非常にありがたい。

3パターンの演奏方法から選択するSYNTHモード

 次にSYNTHモードについて。内蔵のドラム/シンセ音源を鳴らすことができる。リズム・マシンの各パートと、シンプルなシンセの波形がそれぞれ4種類ずつあり、各音色を6trに割り当てることが可能。それぞれでピッチやレングスなど、細かに調整して音作りできるところも面白い。

 SYNTHモードでは、PLAY / SEQ / TONEの3パターンから演奏方法を選択することができる。PLAYでは、ボリューム・フェーダーの下のトラック・ボタンを使ったワンショット演奏が可能となる。

SYNTHモードを選んだ際のディスプレイ表示。ここではトラック・ボタンを使ったワンショット演奏が可能なPLAYを選択。SYNTHモード内で、トラックにアサインする音階を変更することもできる

SYNTHモードを選んだ際のディスプレイ表示。ここではトラック・ボタンを使ったワンショット演奏が可能なPLAYを選択。SYNTHモード内で、トラックにアサインする音階を変更することもできる

 SEQは、シーケンス・パターンを再生。このシーケンス・パターンは打ち込むのではなく、各トラックの中にあるテンプレートの中から選択する仕様。テンプレートの種類が非常に多く、またランダム・モードもあるので、トリッキーなグルーブも作れるだろう。TONEは、各トラックの音色がロング・トーンで出力され、ボリューム・フェーダーを操作したり、各トラックのシンセの周波数を変化させることで、ドローン・サウンドを作ることも可能だ。このように、シンセ単体としても十分な機能が付属されている。

 本体のサイズ感からして、スマートフォンを意識して作られたプロダクトなのだろうと直感はしていた。現状はiOSのみ対応とのことで、USB-C to LightningケーブルでAPPLE iPhoneに接続が可能。私はiOS用のDAWアプリ、KYMATICA AUMを立ち上げて接続した。コンピューターにオーディオI/Oとして接続したり、SYNTHモードのサウンドを入力したのと同様のことができた。iPhoneもTX-6もフル充電しておけば、電源ケーブルに縛られることなく、さまざまな場所で、身軽に楽曲制作を楽しむことができそうだ。また、この原稿を執筆中に、TX-6に直接USBメモリーやSSDを接続して使用できるという情報を目にした。さらにお手軽な機能が日々アップデートされていくことだろう。

 一台何役もこなしてくれて、小さいけれど心強い存在になりそうだ。ぜひ店頭などでその機能を試してみてもらいたい。

 

Sakiko Osawa
【Profile】 DJ/クリエイター。日本大学芸術学部音楽学科卒。2014年、7 Stars Musicから「Tokyo Disco Beat」で世界配信デビュー。2018年には1stアルバム『Sakiko Osawa』をリリース。

 

TEENAGE ENGINEERING TX-6

169,000円

TEENAGE ENGINEERING TX-6

SPECIFICATIONS
▪ステレオ入力数:6 ▪ステレオ出力数:3(CUEアウトはヘッドセット・マイク入力に対応) ▪入力インピーダンス:10kΩ ▪ゲイン幅:42dB ▪最大入力レベル:8dBu/2Vrms ▪最大出力レベル:8dBu/2Vrms(メイン、AUX)、2dBu/1Vrms(CUE) ▪オーディオI/O機能:12イン/12アウト、32ビット/48kHz、USB接続 ▪ディスプレイ:48×64px/モノクロ ▪バッテリー駆動時間:最大8時間 ▪外形寸法:62(W)×23(H)×90(D)mm ※メイン・アウトの変換プラグ接続時は102(D)mm ▪重量:160g ▪付属品:USB-Cケーブル

製品情報

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