NEUMANN U47 〜ビンテージ・マイク史上に輝く絶対名機

ドイツのNEUMANNが生み出したオリジナルのU47(Tube)は、1947年のベルリンラジオショーでデビューします。その後1959年に製品化され1964年ごろまで製造していました。数種類のバージョンがあり音もかなり違うので、その辺を詳しく紹介していきましょう。

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U47は時代によってバリエーションがあり、左がロング・ボディ/TELEFUNKEN刻印/クロム・ヘッド・グリル(M7カプセル)の初期型で最高峰のU47。そして右はロング・ボディ/NEUMANN刻印/K47カプセルのU47。日本ではショート・ボディ(パッと見て分からないが、計ると少し短い)も多く存在する

U47のカプセル・タイプ

 U47の心臓部のカプセル(ダイアフラム)は大きく分けて3種類存在します。1947~59年まではM7を使用。ダイアフラムのフィルムをニカワなどで接着してあり、ネジ類で止めていません。作るのが大変に難しいのですが、これがオリジナルのU47で、意外とハイファイな質感で高域も低域も伸びがあり、ファットというよりも現代風の音がします。ただし市場にはあまり出回っていません。

 

 次に1960~64年まではK47というカプセルが使われています。これが現在皆さんが“U47の音”と感じるものだと思います。製造数も多く、フィルムはネジ止めされています。音質はファットですが、中高域に張り出し感があり、高域の倍音も伸び、いかにも“NEUMANNらしい音”。

 

 最後はKK47というカプセルで、仕様的にはK47と似ていますが、より癖が少なく、その分あの独特な中高域の張り出しや倍音の伸び、低域感が若干薄らいでいます。フィルムはK47同様にネジ止め。これらダイアフラムは型番が書いてありませんが、パッと見てM7はとにかくダイアフラムの丸いフチにネジ類がありません。K47とKK47はフチにネジが付いていますが、K47はフチが金属なのに対し、KK47はアイボリー色のプラスチックで、U87やM149と同じ形です。

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歴代のダイアフラム。左からM7、K47、KK47

U47の真空管の違い

 U47にはVF-14というメタル真空管が使用されていました。ただ、早くから製造中止になったため世界中にストックが少なく、UF-14やEF-14といったパーツに交換されている場合もあります。これら真空管は見た目の形は同じですが、電圧などが改良してあり注意が必要です。また1968年にGOTHAM AUDIO(アメリカでのNEUMANNの正規代理店)が、U47を使い続けるためにRCA Nuvistor 13CW4をVF-14の代用品として使う方法を発表しています。取り付けアダプター込みでも価格が安かったため1970~80年代に多く出回りました。

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主に使われていたVF-14真空管

 ちなみにNuvistorに交換した場合ですが、音の感じは変わってしまいます。U47の良い点は、一般的に音がファットとばかり思われがちですが、本来の特長は低域はそれほど無く、中高域と高域にあり、高域が硬くなく絹のように滑らかにサラっと倍音が伸びて広がるのです。それに加えて中低域と中高域に程よい張り出し感があり、歌がグッと前に出ます。その倍音感の広がりがNuvistorの方が硬く控えめになります。ただし音のスピード感はVF-14がもともと遅めだったので、それが良い意味で改善されています。

 

ボディ形状の違い

 ボディ・サイズや材質も年代によって異なり、カプセルを覆うヘッド・グリルの材質は見た目で違いが分かります。初期型はクロム・メッキがしてありピカピカに光っています。これら光沢があるグリルにはM7カプセルが付いている場合が多いようです。後期型はボディと同じ質感のつや消し色のヘッド・グリルになっています。また、ボディの長さもロングとショートの2種類があり、ロング・ボディは全長約242mmと長いです。加えて、初期はTELEFUNKENが供給していたので、TELEFUNKENロゴの製品もあります。ボディ形状による音質差は分かりませんが、自然放熱式なので、熱くなりがちな真空管VF-14にはロングの方が有利と言えます。

 

 刻印位置や内部トランスや電源も年代によって違っていたり、また1957年から指向性だけが違うU48(単一/双指向)も発売されました。状態さえ良ければ、現在でも最高峰のマイクでしょう。

 

※この記事は『素晴らしきビンテージ機材の世界 〜レコーディング・スタジオを彩る珠玉の名機たち』の誌面を一部抜粋したものです

 

 

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