「GOLDEN AGE PROJECT GA-47/67 Extended(JE)」製品レビュー:U47とU67スタイルのカプセルを交換可能なコンデンサー・マイク

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 数々の素晴らしいビンテージ・クローンを低価格で市場に送り出しているGOLDEN AGE PROJECTがとうとうマイクを発表しました。これまでは、20万円以下でビンテージ・アナログ・サウンドを手に入れられる製品を出してきましたが、今回はGolden Age Premierというプレミア・ラインで、同社としては価格の高い部類に入るモデルです。しかし、使ってみてこのレベルのマイクがこの価格で手に入ることに驚きました。では詳細を見ていきましょう。

撮影:川村容一

 

U47よりも高域と低域が伸びたサウンド
バランスが良く明るいモダンな印象

 GA-47/67 Extended(JE)は、NEUMANN/TELEFUNKEN U47からインスピレーションを受けたカプセルを搭載しており、さらにU67スタイルのカプセルにも交換可能なコンデンサー・マイクです。日本国内仕様にコンデンサーを高品質なものに交換することで低域から高域までの伸びが生まれ、解像度も向上する特別なチューニングが施されているため、Extended(JE)という名称になっています。

 

 カプセル・ヘッドは、柔らかくて落ち着いたダークなトーンのU47スタイルと、明るくモダンなトーンのU67スタイルの2種類が付属しています。また、真空管にはVF14Mの派生品であるNOSのTELEFUNKEN 800シリーズを採用しているとのことです。

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U47スタイル・カプセル以外にU67スタイルのカプセルも付属

 マイクや電源ユニットなどが入っているアタッシュ・ケースは、ギター・アンプのFENDER Bandmasterのような柄と肌触りです。そのケースの中には木箱が2つあり、そこにマイク本体とU67スタイル・カプセルが収納されています。どこへ持ち歩くにも安心感があり、おしゃれですね。マイクを取り出してみると、オリジナルのU47と変わらないグリルの質感と重量感があります。

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交換用カプセル以外にも電源ユニットや専用ケーブル、ショック・マウント、マイク本体を入れるための木箱が、ツイード調のケースに収納されている

 ボーカルから試していきましょう。まずはU47スタイルのカプセルから。マイクはこぶし一つ分離れた辺りからポップ・ガード越しに歌ってもらいました。最初の印象は、まずSNが良いということ。この点ではやはりビンテージよりも“使える”という意味で有利でしょう。立ち上がってくる音像はビンテージのものと結構似ています。ここで、自分が今までレコーディングしてきたU47のボーカル音源をいろいろと聴き返したりして比べてみると、ビンテージのU47より高域と低域が伸びていて表現できる周波数帯域が広いことが分かりました。中域の情報量の密度はそのままに上下が伸びているため、バランスも良いし、明るくモダンな印象です。これは日本国内仕様にコンデンサーを変えている効果なのでしょうか? ゲインを上げただけでバランスが良いため、下手にEQをかけたくもならないし、かける必要も無く、コンプで微調整するだけでかなり質の高いテイクが録れると思います。

 

キリッと立った音のU67スタイル・カプセル
ポップスやロックにマッチするサウンド

 次にアコースティック・ギターで試してみます。僕がU47でアコギを録るときは、ボディから離してマイキングするのが好きなので、今回もホールを狙って70~80cmくらい離して録りました。部屋のチューニングがある程度できていれば、マイクを離してもオンマイクのような音で録ることができ、ほかの楽器と混ぜてもマスキングし合わないからです。ただ安価なコンデンサー・マイクだと、離す距離に比例して情報量がどんどん少なくなり、ちゃんとしたサウンドになりません。しかし、GA-47/67 Extended(JE)はさすがによく作られていて、オフマイクでもビンテージU47同様の表現をしてくれます。

 

 U67スタイル・カプセルの方も同様に試してみましたが、こちらはU47カプセルよりもモダンで、よりキリっと立った音の印象です。U67っぽいと言えばそうなのかもしれませんが、僕が使ってきたU67は個体差が激しく、あまり比べる対象にはならないかもしれません。U47に比べるとポップス、ロック寄りに合うような印象です。

 

 ここまで試してみて、同社Webサイトに掲載されている開発者のボー・メディン氏の言葉が重みを増し始めます。“世界はU47クローンを必要としているのか?”との問いに対してメディン氏は、“熟練したスタッフの手作業により一度に50台ずつ製造し、非常に高品質なコンポーネントを使用して目標を達成した上で、イエスと答えることができる”と言っています。これは、膨大な知識とトライ&エラーの先にある大きな自信であることの証明でしょう。しかも、この品質を手ごろな価格帯で提供できるということは驚きです。

 

 自宅や小型のスタジオで録音することが多くなってきた昨今、良いマイクを1つ探すのであれば、GA-47/67 Extended(JE)のような、メインの歌にも楽器にも使えるオールラウンダーが適していると思います。1本、いや2本を持つ価値があり、本家も凌駕するような品質が得られるGA-47/67 Extended(JE)にはもう何も言うことはありません。欲しい!

 

鈴木鉄也
【Profile】 Syn StudioやRinky Dink Studioを経て、2006年からフリーのレコーディング・エンジニアに。MONKEY MAJIK、COLDFEET、オーサカ=モノレール、遊佐未森らの作品に携わってきた。

 

製品情報

umbrella-company.jp

 

GOLDEN AGE PROJECT GA-47/67 Extended(JE)

345,000円

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SPECIFICATIONS:
●U47スタイル・カプセル
▪感度:12mV/Pa ▪最大音圧レベル:140dB

●U67スタイル・カプセル
▪感度:25mV/Pa ▪最大音圧レベル:127dB
●U47スタイル/U67スタイル・カプセル共通
▪周波数特性:20Hz〜20kHz ▪指向性:カーディオイド/オムニ ▪インピーダンス:200Ω ▪等価ノイズ・レベル:10dB ▪外形寸法:63(φ)×229(H)mm(ボディ取り付け時の実測値) ▪重量:585g(本体/ボディ取り付け時の実測値)

 

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