「SLATE DIGITAL Classic Tubes 3」製品レビュー:Virtual Microphone System向けのマイク・モデル・プラグイン5種

SLATE DIGITALが専用の単一指向性コンデンサー・マイク向けのプラグイン「Classic Tubes 3」を発売

 SLATE DIGITAL Virtual Microphone System(オープン・プライス:市場予想価格125,000円前後/以下、VMS)は専用の単一指向性コンデンサー・マイク、プリアンプ、プラグインから成るシステム。プラグインの内容はマイク・モデル(ビンテージ・マイクなどのシミュレーター)で、録音後に選んで好みのサウンドを得られます。このたび新たに5種類のマイク・モデルを含むClassic Tubes 3が発売されたので、レビューしていきましょう。

VMSには8つのマイク・モデルが標準搭載
ビンテージ・プリアンプのモデル2種も付属

Virtual Microphone Systemのハードウェア。写真左のプリアンプがVMS-0neで、右のコンデンサー・マイクがML-1。どちらも汎用のプリアンプ/マイクとしても使用可能。8つのマイク・モデルと2つのプリアンプ・モデルを収録したパッケージはオープン・プライス(市場予想価格:125,000円前後)

Virtual Microphone Systemのハードウェア。写真左のプリアンプがVMS-Oneで、右のコンデンサー・マイクがML-1。どちらも汎用のプリアンプ/マイクとしても使用可能。8つのマイク・モデルと2つのプリアンプ・モデルを収録したパッケージはオープン・プライス(市場予想価格:125,000円前後)

 モデリング・マイクの定番の一つ、VMS。専用コンデンサー・マイクは、ラージ・ダイアフラムのML-1とスモール・ダイアフラムのML-2をラインナップし、いずれもフラットな周波数特性とワイドなダイナミック・レンジを特徴としています。専用プリアンプは、マイク・モデルの効果が正確に出るようリニアでクリーンな音に設計されたというVMS-One。マイク・インとインスト・インを備え、汎用性のある一台です。プラグインは、世界的に有名な8本のマイクのモデルを標準搭載。以下は各モデルの名称とモデリング元のマイク名です。

  • FG-47:NEUMANN U47 Tube
  • FG-800:SONY C-800G
  • FG-251:TELEFUNKEN Ela M 251
  • FG-67:NEUMANN U67
  • FG-269:NEUMANN M269
  • FG-M7:SHURE SM7を基にし、U47 Tubeの真空管回路を擬似的にブレンドしたSLATE DIGITALのオリジナル
  • FG-800M:上記FG-800にさらなる芯の太さを持たせ、若干ダークなキャラクターへと寄せたオリジナル
  • FG-12:AKG C12

 これらに加え、FG-73およびFG-76という2種類のプリアンプ・モデルも付属。名称の通り、FG-73はNEVE1073のプリアンプ部、FG-76はTELEFUNKEN V76のシミュレーターとなっています。

 VMSに標準搭載されているプリアンプ・モデル。画面左はNEVE 1073のプリアンプ部を再現したFG-73で、右はTELEFUNKEN V76のシミュレーターFG-76。いずれも完成度の高いサウンドで、サチュレーションも素晴らしい

VMSに標準搭載されているプリアンプ・モデル。画面左はNEVE 1073のプリアンプ部を再現したFG-73で、右はTELEFUNKEN V76のシミュレーターFG-76。いずれも完成度の高いサウンドで、サチュレーションも素晴らしい

RCAやSONYのオールド機モデリングを収録
効果を強めたときに実機の音へ近付く傾向

 それではClassic Tubes 3のマイク・モデルを見ていきます。今回はスタジオに常設の実機(オリジナルのマイク)と比べてみました。VMSで使用したマイクはML-1。また、VMSOneとSSL SL4000Gのヘッド・アンプの比較も行いました。なお、VMSのプラグインにはINTENSITYなるパラメーターがあり、モデリングの強さを100%〜150%で調整できます。

●FG-47 MK II

 U47 Tubeのモデル。基本的には標準搭載のFG-47と似ていますが、こちらの方が中低域が多めです。比較用のU47 Tubeには、MK IIの音色の方が似ていると思いました。

●FG-67 MK II

 U67のモデル。標準搭載のFG-67はモデファイされたU67をモデリングしているそうで、標準的な実機よりも低域の少ない、明るい音色です。対して、このMK IIはU67特有の密度の濃い中低域が似ています。また、U67で日本語の歌を録ると少し母音成分が多く、補正のためにEQでハイエンドを持ち上げるのですが、その持ち上げたときの感触もFG-67より実機と似ていると感じました。私なら、女性ボーカルにはFG-67よりもMK IIを採用すると思います。

●FG-44

 モデルとなったRCA Type 44BXは双指向ですが、ML-1は単一指向なので、マイク全体を覆うサウンドは収められません。また、デッドな部屋ではマイクの指向性による音色変化は少ないので、オンマイク時はML-1とは大きな差が出ません。歌で比較したところ、INTENSITYを140%くらいにしたときに実機と非常に似た音色になりました。

●FG-37A

 テレビの音声収録でよく見るSONY C-38Bの前身となる真空管マイク(1958年製造)のモデル。中域の密度が高く、声の帯域をしっかりと表現します。

●FG-49

 NEUMANN M49のモデル。私は、日本でよく歌に使用されるU67を使ってみて、もう少し張りが欲しいと感じたときにM49を選びます。実機にはA〜Cという3種類のリビジョンがありますが、今回はBおよびCと比較。INTENSITY100%では、使用した実機の個体よりも少し軽めの音。110%くらいまで上げると、かなり似てきました。

 

 2種類のプリアンプ・モデルFG-73とFG-76も非常によくできています。ゲインを上げていったときのサチュレーション具合も素晴らしく、マイク・モデルにキャラクターをプラスできます。専用プリアンプのVMS-Oneは、SL4000Gのヘッド・アンプよりも色付けの少ないフラットな音色です。

 

 数百万円分のマイクのモデルとコンデンサー・マイク&プリアンプのセットで125,000円前後というVMSは、非常に効果的な投資だと思います。性能を100%得るには専用マイクとプリアンプを使うのが良いのですが、ほかの機材で録音されたトラックにVMSのプラグインを使えば、音色の幅が広がります。積極的な音作りの一つの方法として有効でしょう。

 

森元浩二.
【Profile】レコーディング・スタジオprime sound studio formのチーフ・エンジニア。浜崎あゆみ、三代目J Soul Brothers、甲斐バンド、AAA、E-girlsなどの作品に携わる。

 

SLATE DIGITAL Classic Tubes 3

オープン・プライス(市場予想価格:36,000円前後)

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SPECIFICATIONS ▪Mac:macOS 10.12〜10.14、INTEL製プロセッサー、AAX/AU/VSTに対応した64ビット・ホスト・アプリケーション ▪Windows:Windows 7/8/10、 INTELまたはAMD製プロセッサー、AAX/VSTに対応した64ビット・ホスト・アプリケーション ▪共通: 4GB RAM

Classic Tubes 3の製品情報

www.miyaji.co.jp

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