ベルリン生まれのAbleton Liveは、その直感的な操作性からダンス・ミュージックやロックなど、国内外の幅広い音楽シーンのクリエイターに愛されているDAWソフトウェア。2018年にはバージョン10へとメジャー・アップデートし、現在はIntro/Standard/Suiteの3つのエディションが存在する。それぞれ機能や付属のソフト音源、プラグイン・エフェクト、Packと呼ばれるサウンド・ライブラリーなどが異なるのだが、この企画ではその中でも最上位に位置するLive 10 Suiteの魅力についてより深く掘り下げてみよう。案内してくれるのは、アレンジャー/エンジニアの草間 敬氏。また後半にはプロ・クリエイター4人によるLive 10 Suiteのおすすめツールも紹介しているので、ぜひ参考にしてみてほしい。
監修/解説:草間 敬
Live 10 Suite付属Pack
Live 10 Suiteに付属するPackは全部で26個。ここではその中でもLive 10 Suiteのみにしか付属しないPackにフォーカスしてご紹介しましょう。個人的にLive 10 Suiteの価値の半分以上はこのPackにあると思っていますので、Live 10 Suiteユーザーなのにまだ使ったことがない人は、ぜひ試してみてください。
Beat Tools
ビート・メイキングに特化したPack。ヒップホップのトラックに向いたサウンドが多く、ドラム・パターンのMIDIクリップも同梱されています。エフェクトに関しては、コンプをしっかりかけた質感のもののほか、曲展開のアイディアとして使えそうなものが多いです。
Drum Booth
生ドラム・サウンドのPack。とても素直な音色なので、エフェクトで加工しやすいと思います。16/32/64パッド用キットもあるので、Live専用コントローラーAbleton Push 2での演奏も可能となるでしょう。
Session Drums Studio / Session Drums Multimic / Session Drums Club
アコースティック・ドラム関連のPack3種類。Session Drums Studioは、“Drum Booth”のように素直なオン・マイクのドラム・サウンドを収録しています。Session Drums Multimicは、マルチマイクでドラムを録音したPack。各パーツごとにアンビエンスの調整が行えます。Session Drums Clubは、その名の通りイケイケな感じの音が魅力的です。
Latin Percussion
南米やアフリカのパーカッションのコレクション。MIDIクリップも豊富に入っているため、さくさくと手軽にパーカッションが作れてしまうでしょう。
Build and Drop
EDM/ダンス・ミュージック全般で使えるアッパー・チューンの音色がメインに詰まっている印象。面白い音色が欲しいと思ったときに、まず試してみるPackです。
Drive and Glow
ひずんだ音を中心に集めたPack。あまりひずみ過ぎていると使いにくいので、ほどほどに加工してある印象です。インディー感を演出するのには持ってこい。
Punch and Tilt
上段の“Build and Drop”よりも全体的にダークな音が多いダンス・ミュージック向けPack。リズム・マシンやシンセ・ベース、テクスチャー、ノイズなどを収録。
Glitch and Wash
グリッチ系音色が多く、変態的/刺激的なサウンドPack。オーソドックスなリズム・パターンは、ほとんど無く、変わった音色やビートが欲しいときに便利でしょう。
Orchestral Brass
ソロおよびアンサンブルのフレンチ・ホルンやトロンボーン、トランペット、チューバといった金管楽器の音を収録したPack。オーケストラ向けのブラス・サウンド。
Orchestral Mallets
音階のある打楽器に特化したPack。ビブラフォン、マリンバ、シロフォン、クロタレス、グロッケンシュピール、ティンパニなどのサウンドを中心に収録しています。
Orchestral Woodwinds
ソロおよびアンサンブルのフルート、クラリネット、オーボエ、ホルンなどの木管楽器系Packです。容量は、Orchestralシリーズでは最大の7.5GBもあります。
Orchestral Strings
バイオリン、ビオラ、チェロ、ダブル・ベース、全体のストリングス・アンサンブルの5つを収録したPack。劇伴でも十分使えるでしょう。SONIVOXとの共同開発。
Retro Synths
4,000以上のサンプルを中心としたビンテージ・シンセのPack。MOOG Minimoog Model DやROLAND TB-303、CASIO CZシリーズなどのサウンドを収録。
Synth Essentials
シンセのPack。Live 10 Suite付属のソフト音源=Analog、Collision、Operator、Tension、Wavetableを駆使して作られたプリセット集となっています。
Electric Keyboards
FENDER RHODES Suitcase、WURLITZER 200A、HAMMOND C3を綿密にサンプリングしたPack。エレピやオルガンのリアルなサウンドが魅力的です。
Column:Ableton Live Packを使ってみよう
そもそもPackって何?
Packとはその名の通り、ソフト音源/プラグイン・エフェクト/オーディオ・データ/MIDIクリップなどが、あるコンセプトに基づいて1つのフォルダーにパックされたもの。Live 10 SuiteにはPackが26個付属しますが、Live 10 Standardでは8個なので、その差は18個あります。すべてインストールすると、容量は60GB以上。最近は大容量のコンピューターも多いので、気になったものからどんどん使ってみるのもよいでしょう。
インストール方法は?
Live 10 Suiteをインストールすると、付属のソフト音源やプラグイン・エフェクトなども同時にインストールされますが、Packは自分でダウンロード&インストールしなければなりません。
まずセッション画面左端にある“ブラウザーサイドバー”から“Pack”を選択すると、“使用可能なPack × 数”という項目が出現します。それをクリックすると、ユーザーが使用できるPackが一覧で表示されるので、ダウンロードを開始しましょう。終了後、自動的に表示されるインストール・ボタンをクリックすればインストールの完了です。
どうやって使うの?
Packの使い方ですが、ここでは“Beat Tools”を用いて説明していきましょう。Packによって多少の違いはありますが、インストールしたPackのフォルダーを展開すると、Drums、Effect Racks、MIDI Clips、Samples、Sets、Soundsといったカテゴリー別にフォルダーが格納されています。
フォルダーに格納されたファイルをクリックすると、自動的にサウンドがプレビューされます。気に入った音を見つけたらダブル・クリック、またはアレンジメントビューやセッションビューなどへ直接ドラッグ&ドロップすれば、そのサウンドをロードすることが可能です。
試しにSoundsやDrumsフォルダからどれか一つをロードしてみましょう。すると画面最下段にあるクリップビューに、“マクロコントロール”と呼ばれる8つのパラメーターを搭載したデバイスとそれに伴うソフト音源やプラグイン・エフェクトが表示されます。マクロコントロールでは、これらのソフト音源やプラグイン・エフェクトのパラメーターを自由にアサインして制御することが可能です。まずは、開発者が気合いを入れて作り込んだプログラムを楽しんでみてください。
監修/解説
草間 敬
【Profile】アレンジャー/エンジニア/シンセ・プログラマー。AA=、RED ORCA、SEKAI NO OWARI、BIGMAMA、MAN WITH A MISSIONなどの作品やライブに携わる。Ableton認定トレーナー。
【Recent Work】
Live 10 Suite 製品情報
ABLETON Live 10 Suite
80,800円(税込)
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