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「SLATE DIGITAL Infinity EQ」製品レビュー:ポイント別にM/S処理やカーブ選択が可能な多機能EQプラグイン

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 今までSLATE DIGITAL製品と言えば、アナログ機器をシミュレートして、豊かな倍音や音の太さを与える印象でした。しかし今回登場したInfinity EQは、これまでと方向性の大きく異なる全く新しい製品です。僕も既に現場でかなり使っています。ほかのEQに手が行かないくらい気に入っているのです。早速紹介しましょう。

 

ポイントごとにL/RとM/Sで調整可能
スロープは120dB/octまで変化

 Infinity EQはMac/Windows対応でAAX/AU/VST2&3に準拠。これまで同社製品に多かったアナログ的なパネル・デザインとは真逆の、非常に未来的でシンプルなデザインです。この画面をマウスでクリックするだけで、すべての先進的な機能をいとも簡単に操作できてしまいます。

 

 EQポイントはコンピューターの処理能力が許す限り無限に作成可能。ポイントごとにEQカーブの設定ができ、ベル・カーブ、ローカット、ハイカット、ローシェルフ、ハイシェルフの5種類から選べます。また、それぞれのカーブでスロープを12dB/octから最大120dB/octという超急峻な設定にすることまで可能です。ざっくりハサミで切り落としたような周波数カットもできますし、ベル・カーブでは、直角的でマンホールのようなEQカーブが作れるのです。

 

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スロープを120dB/octに設定すると直角的なEQカーブを作ることができる

 

 そして、ポイントごとにL/RもしくはM/Sモードを設定できます。例えば、シンセ・パッドなどステレオ幅の広い音で、ボーカルに干渉しないようにミッド成分のボーカル帯域のみを下げるといった技が使えるのです。

 

 音作りをナビゲートする便利な機能も搭載。周波数アナライザーにリアルタイムと平均の両波形が常に表示されるので、一瞬のピークや全体的な音色を視覚的にとらえながらEQポイントを探すことができます。効率的に音作りが行えるのです。音質はとてもクリーンで、プラグイン自体が音に癖を与えないので、個人的にはマスタリングなどにも向いた製品だと思います。 

 

ステレオ・モード選択やグルーピングなど
機能を集約したコントロール・パネル

 では実際に操作してみましょう。プラグインを立ち上げて曲を流すと、アナライザーの平均とピークがバックに表示されます。調整したい周波数帯域でダブル・クリックするだけでEQポイントの作成は完了。ポイントにマウスを近付けると自動的にコントロール・パネルが表示されます。これがまたすごく機能的なのです。まずポイントが二重丸で表示され、その四方に操作子が現れます。下のヘッドフォン・アイコンはソロで、左の電源アイコンはポイントのオン/オフです。

 

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コントロール・パネル上で、ポイントのオン/オフ、ソロ試聴もワンタッチで行える。スライダーでEQカーブの角度、Q幅も調整可能だ。右上のツール・ボタンは、パラメーター固定、グルーピング、ステレオ・モードの変更、Qカーブ選択、ポイント削除が行える

 

 右と上のスライダーはEQカーブの帯域幅とスロープ角度の調整ができます。右のスライダーを使えば、Q幅を広くして自然な音色のためのEQが行えたり、逆に狭くすれば特定のノイズをカットすることも可能です。上のスライダーはスロープの角度調整用で、前述の通り120dB/octまで変化するので、急激なカーブ設定にして、低域の30Hz以下をバッサリとカットするときなどにものすごく役に立っています。

 

 続いて、ポイントの右上に表示されるツール・ボタンを見ていきましょう。左端の鍵マークはLockで、オンにするとパラメーターを固定できます。その隣のアイコンはグルーピングです。複数のポイントをマウスで選択してこのボタンを押すだけで、グループ化することができます。中央のボタンはステレオ・モード選択。L/RとM/Sを切替えられ、M/Sを選ぶと上にスライダーが出現してバランスを整えることができます。ツール・ボタン右端のバツ印はポイントの削除です。

 

 右から2番目に位置するのは、EQカーブの選択ボタン。クリックするとEQカーブの選択メニューが出現します。ローシェルフまたはハイシェルフを選択するとダブルQとなり、スライダー横に2つの操作子が現れます。一方の操作子でQ角度の調整をし、もう一方を上げることでQカーブがいったん上がって下がる(または逆の)カーブが作れるのです。これを使うと、かなり過激に上げ下げしても音の不自然さを改善してくれるという効果が得られました。

 

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ローシェルフまたはハイシェルフを選択すると、スライダー脇に2つの操作子が現れ、2段階のEQカーブを作り出せる

 

 そのほか、画面下部のスライダーで全体的なL/RバランスやM/Sバランスの調整、画面右下のノブでマスターのゲイン調整が可能です。地味にうれしいのは、EQポイントを作成しようとマウスを動かしていると、中域ではピーク・カーブ、高域と低域ではシェルビングに自動的に変わること。本当に効率的な操作を目指してよく作られたプラグインだと思います。

 

 昔、先輩エンジニアから“目でEQするな、耳でEQするんだ”と教え込まれましたが、このアナライザーで気になる周波数の出っ張りや引っ込みを探して、さらに耳で調節するのが一番速いです。末長くヘビーに使っていきたいと思います。

 

■製品情報

miyaji.co.jp

 

SLATE DIGITAL Infinity EQ

オープン・プライス

(市場予想価格:18,500円前後)

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REQUIREMENTS ▪Mac:OS X 10.11以降、INTELプロセッサー、AAX/AU/VST2/VST3対応のDAWソフト ▪Windows:Windows 8/10、INTELまたはAMDプロセッサー、AAX/VST2/VST3対応のDAWソフト ▪共通:4GB以上のRAM、64ビット・ホスト・アプリケーション環境、iLokアカウント、iLok 2/iLok3

 

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