昨年も何台かノート・パソコンを買いまして。出た瞬間に購入したM1 MaxのAPPLE MacBook Proはとにかく完成度が高くて快適に動いております。AMD Ryzen7 5850U搭載のLENOBO ThinkPadも本当に良いです。低電圧低発熱なのにパワフルでポート類も豊富。グラフィック・ボードは統合型ですが、そこそこゲームも動きます。ABLETON Liveもばっちり動作するので、仕事でもバリバリ使えます。昨今の半導体不足の影響で納期が少々エグイですが、興味のある方はチェックしてみてください。
各パート33種の音色が設定されたビート・メイクにお薦めのドラム・ラック
さて、私の担当最終回となる今回は、お薦めのPackやMax for Liveのデバイスを紹介したいと思います。
●Magic Racks
“Rackはこう使うんや!”というお手本のようなデバイス集。特にエフェクト・デバイスは、トラックにインサートして適当にマクロ・ノブを触ればテキメンに面白い効果が得られます! エフェクト・デバイスのチェインの仕方、パラメーターのアサインの仕方や名付け方、すべてが参考になるでしょう。即戦力のチャンネル・ストリップからぶっ飛んだクリエイティブ系のエフェクト、ツボを押さえたインストゥルメント・デバイスまでセットになっているので、全Liveユーザーにお薦めします!
ビート・メイクを行う場合はMagic Drum RackというRackをロードします。キック、スネアなど8つのパートがパッドに並んだ状態で読み込まれ、それぞれのマクロ・ノブに各音色のバリエーションが33種割り当てられているのです。ビートを打ち込んでからマクロ・ノブを回すだけで、各ドラム・パーツの音色を切り替えつつ、さらにパラメーターを追い込むようなスピーディなワークフローが実現できます!
そうやって組んだビートにはエフェクトのSM Drum Stripがお薦めです。特に難しいことを考えず“それっぽい名前”のマクロ・ノブを触るだけでさらに本格的な音へと変化します。筆者のお薦めはSM_Synth Modulator。シンセにどんなエフェクトをかけるか悩んだときには取りあえずこちらをインサートして当たりを付けることが多いです。で、そのまま最後まで残っちゃいます(笑)。
即戦力かつ長く使えるハイクオリティな付属Pack
●Mood Reel
Live 11 Standard、Suiteに付属するABLETONのサウンド・デザイン能力のすべてが詰まったようなハイクオリティなソフト音源集です。インストゥルメントのフォルダ一覧を見るだけで、めっちゃ想像力がかき立てられませんか? 筆者はBroken KeysやTense Pulsesのプリセットが大好きです。
仕事でよく使うのがBroken Piano (Multisampled)。とてもはかなげながら若干の狂気を感じるデバイスで、ゲーム内で感傷的なシーンを支配するようなBGMで即戦力でした。Live 11の新機能マクロバリエーションにも対応。プリセットも多く用意されているので併せてチェックしてみてください。
●Drum Essentials、Latin Percussion
Drum EssentialsはLive 11 StandardとSuite、Latin PercussionはSuiteに付属します。そのクオリティとLiveとの親和性の高さゆえ、一向に使用頻度が下がりません。このままだと僕は一生Latin Percussionに含まれるタンバリンを使い続けることになりそうです(笑)。パーカッションはMIDIデータの作成が難しいことも多いですが、Clipとしてフレーズも収録されているので迷わず使いこなせると思います。
モジュレーション・データを生成する新規追加デバイスShaper MIDI
●Shaper MIDI
先日リリースされたLive 11.1で追加されたモジュレーション・データを生成するデバイスです。今までShaperというデバイスは存在したのですが、Shaper MIDIは“MIDIノート・オンでトリガー”というところがポイントで、シンセのパラメーター拡張に使えます!
しかもLoop機能もあり、自由度の高いLFOとしても利用可能です。筆者はシンセの後段に挿したリバーブをコントロールすることが多いです。リバーブ込みでサウンド・デザインしたい場合、リバーブのパラメーターに時間変化を与えることでより立体的なデザインが可能になります。シンセだけでなくエフェクトのパラメーターもコントロール可能。全体がモジュラー・ラックのように動かせる設計になっているところにもLiveの圧倒的な自由度を感じます。
●CC64killer
最後に拙作のMax for Liveデバイスを紹介します。こちらは、Liveでシーケンスの再生を停止したときに強制的にCC64の0を送るデバイスです。CC64はサスティン・ペダルの情報で、0というのはサステイン・ペダルをオフにする命令になります。Liveはステージ用途のDAWという側面もあり、停止の際にコントロール・データのリセットを行わないのですが、この仕様、制作時には“停止したのに音が止まらない”“停止後再び再生するとピアノ音源が暴走したように音が重なる”などの状態にもつながります。こんなとき毎回サステイン・ペダルを踏み直さなくてはならなかったのでこちらを作ってみました。
仕組みはいたってシンプルです。まずMIDIMonitorをインストゥルメント・トラックにインサートして様子を見ると、Liveは再生を停止した際に全MIDIトラックにオール・ノート・オフ(CC123の0)を送信していました。ですので、Max for Liveのエディターで“CC123の0を受け取ったらCC64の0を送信する”というパッチを組みます。画像も配置できるので、いらすとやさんから借りた画像を配置しました。
ここまで0から勉強しつつ2時間ぐらいで作ったのですが、あるプロデューサーの方が、ピッチ・ベンドをリセットする“PitchBendkiller”に改造して使用されていると伺い、とてもうれしかった記憶があります。ユーザー同士のコミュニケーションが生まれる文化があるのもLiveやMax for Liveの楽しいところですね。
さて、3カ月にわたった私の執筆担当回も、今回が最後になります。具体的な音作りよりも効率化やLiveの拡張性がテーマでしたが、いかがでしたか? 引き続きSNSではこんな発信も行っていきたいと思いますので、よろしければお気軽にフォローいただければと思います。ありがとうございました!
オカモトタカシ
【Profile】12sound合同会社代表社員/作編曲家/ゲーム・サウンド・クリエイター/Ableton認定トレーナー。開発会社のインハウス・クリエイターを経て独立。近年は『オバケイドロ』『こちら、母なる星より』『彼女、お借りします ヒロインオールスターズ』『五等分の花嫁 五つ子ちゃんはパズルを五等分できない。』『Re:ゼロから始める異世界生活 偽りの王選候補』などのゲーム音楽を手掛けてきた。
【Recent work】
『オバケイドロ』
©️Freestyle,inc.
ABLETON Live
LINE UP
Live 11 Lite(対象製品にシリアル付属)|Live 11 Intro:10,800円|Live 11 Standard:48,800円|Live 11 Suite:80,800円
*オープン・プライス(記載は市場予想価格)
REQUIREMENTS
▪Mac:macOS X 10.13以降、INTEL Core I5以上のプロセッサー
▪Windows:Windows 10 Ver.1909以降、INTEL Core I5以上またはAMDのマルチコア・プロセッサー
▪共通:8GBのRAM、オーソライズに使用するインターネット接続環境