草間 敬が使うLive 〜第3回:Live 11でも多数追加! Max for Liveデバイスの楽しみ方

ABLETONのDAW「Live」の使い方を草間 敬が解説する

 今回はMax for Liveについて書くことにしたが、3回の連載で一番悩んだ。Max関連ってどうしてもユルさがなくなっちゃうんだよね。でも多くの人にMax for Liveの楽しさを知ってもらいたくて頑張りました。最後まで読んでね!

世界中で開発された集合知を提供
“新しいプラグイン”のように付き合う

 Live 11で追加されたデバイス(プラグイン)を並べると、その多くがMax for Live(以下M4L)のもの。せっかくなので、あらためて“M4Lとは何か?”を説明しよう。

f:id:rittor_snrec:20210226114953j:plain

Live 11で追加&アップデートされたデバイス。黄枠内のCollision、Electricは分かりやすくデザインが刷新された(絵がかわいい)。緑枠内がMax for Liveで作られたデバイス群だ。これらの多くは以前“Max for Live Essentials”というPackに含まれていたが、Live 11では、M4Lと統合された環境を象徴するかのごとく、Liveデバイスと同じ場所にリストされる。見分け方は、デバイスのタイトル・バーに虫のようなアイコンのボタンがあるかどうか(ブラウザでもこのアイコンで表示される)。このボタンを押すとMaxが起動し、そちらで中身を見たり、作り変えることが可能だ

 CYCLING '74 Maxというアプリがある。音声やマルチメディアに特化したプログラミング環境、つまり“音源&エフェクト・ツクール”みたいなものだ。で、M4LはMaxで作ったものをLiveのプラグインとして使えるようにする技術のことである。

 

 Live 10 SuiteからはMaxのアプリがLiveに内包されているので、M4Lデバイスを使うためにMaxをインストールする必要も無い。ABLETONが多大なリソースを割いた甲斐あって、処理の重さや、動作の安定性の心配も全く無い。

f:id:rittor_snrec:20210225213424j:plain

macOSでLiveの中身を見ると、Maxが内包されている(青枠)。M4LデバイスのM4Lボタン(タイトル・バーのアイコン)をクリックすると、このMaxが起動する。CYCLING '74 Maxユーザーはそちらを開くことも可能。基本は同じだが、微妙にバージョンが違っていたりするときもある

 今回追加されたM4Lデバイスは、世界中のプログラマーが開発し、従来はPackでの提供やネット販売されていたものも多い。こんな集合知を全Suiteユーザーに提供してくれる環境は、Liveの唯一無二の特色。M4L未体験の人も“新しいプラグインだ!”という感じで普通に付き合う方が良い。参考までに“これは絶対使うべき!”というものを紹介しよう。

 

LFO、Shaper

f:id:rittor_snrec:20210225213506j:plain

 オートメーションできるパラメーターを勝手に揺らすもの。Mapボタンで簡単にアサインできて本当に便利。“マッピングしてほかのデバイスのパラメーターを操作する”系のM4Lは数多く、一ジャンルを形成している。

 

MIDI Monitor

f:id:rittor_snrec:20210225213555j:plain

 入力されたMIDIデータを確認できるMIDIプラグイン。最新版ではコード・ネームも表示。後述するMIDI関連のM4Lデバイスを動作チェックしたいときにも必須だ。

 

オリジナルのMaxデバイス制作
Live Suiteユーザーは初期投資ゼロ

 “自分でもMaxでオリジナルのデバイスを作ってみたい”という人に向けて、良い機会だからここでM4Lの作り方のポイントを紹介しよう。最近はYouTubeなどでMaxのビギナー向け解説は散見されるので(僕も何個かアップしてます)、ここではM4Lに特化。ほかではあまり見ない話を重点的に書こう。

 

 まずはMaxについて。Live内蔵MaxとCYCLING '74 Maxの違いは幾つかあるが、M4Lを作り始める上で不便を感じるような差異はほぼ無い。本家Maxの購入は、その違いに気付いてからでも全然遅くない(たまにアップグレード・セールもしているし)。というわけで、Live Suiteユーザーは初期投資ゼロでM4Lプログラミングを始められる。

f:id:rittor_snrec:20210225214015j:plain

Live内蔵Maxは、単体では音が出ない。通常のMaxとLive内Maxで最初に気付くと思われる違いがこれだ。Liveで空のM4Lデバイスを作るとdac~からの音(Max自身からの音)は出ない。オーディオはplugout〜(紫枠)を通ってLiveに送られ、デバイスがインサートされたトラックから音が鳴る

 次に“何を作ればよいの?”と思うかもしれない。特に必要なものが無かったり、ネット上で目的のM4Lデバイスが見付かったりする。Liveには元から素晴らしいデバイスがいろいろあるし、それらをマクロで組み合わせたりしたら無敵だ。“今さら自分がM4Lで何かを作っても、自己満足にしかならないんじゃないか?”と思うのは当然かもしれない。しかし、これは“言葉を覚え始めた人がいきなり小説を完成できるわけがない”のと同じ。最初は簡単なデバイスを作り、次第に言葉を理解すれば、“こういうのを作ったら良いな!”と自然に思い付く。

 

 良い例が僕の作ったMIDI CCデータを送るだけのMIDIプラグインだ。超シンプルでニッチなものだが、通常のMIDIクリップエンベロープからだけでなく、オートメーションにも書き込めるようになるので、意外と役立っている。こんな感じですぐに自作できるのは実用的だし、とても楽しい。僕は日常的にMaxプログラミングをするわけじゃないけど、“こういうものを作りたい!”と始まると曲作りよりも楽しくなっちゃったりする。コロナ禍の自宅待機時は延々いじっていた(笑)。

f:id:rittor_snrec:20210225214057j:plain
f:id:rittor_snrec:20210225214107j:plain
MIDI CCをオートメーションしやすくするM4LデバイスをMaxで開いた(http://bit.ly/dawavenue_kusama_2021よりダウンロード可能)。オブジェクトごとに細かくコメントを入れているので参考にしてほしい。このパッチのポイントはlive.dialのTypeをFloatに設定しているところ(赤枠)。こうすると通常のオートメーションと同様にMIDI CCデータを扱える。Intにすると縦に長いオートメーション・レーンになってしまい、縮小はできない

Maxプログラミングは実験の繰り返し
ヘルプやリファレンスを活用しよう

 この先は、実際にMaxを使ってM4Lを作るときの重要なポイントを幾つか書いておこう。

出力されるデータをチェックしよう

 Maxプログラミングは、“これをこうしたらどうなる?”という実験の繰り返し。どのモードでもパッチは常に動いているので最高に便利だ。“このオブジェクトはどんなデータを出している?”と思ったら、データが見られるmessageオブジェクトをつないだり、printオブジェクトをつないでMaxコンソールに表示させて確認しよう。僕は、素早くデータを見たいときはmessageオブジェクト、時系列も確認したいときはMaxコンソールで見る。オーディオはscope~で見ると分かりやすい。

f:id:rittor_snrec:20210225214807j:plain

プログラミングではトライ&エラーが基本。こういったビルダーは大抵、プログラムと実行のモードが分かれているため検証が面倒なのだが、Maxは、ロック/アンロック、エディット/プレゼンテーションなど、どのモードでもパッチが常に動いているのが素晴らしい。データを確認できるオブジェクトを仮で接続しながらプログラミングを進めよう

MIDIプログラムから入ろう

 最初に作るのにお薦めのM4Lデバイスは、MIDIデータを処理するもの。先述のようなMIDI CCデータの処理や、ノート・データをいじって音程変更もできる。そして、MIDIデータ自体が0~127の整数だけを扱うことが多いので、プログラムの取り回しが楽なのだ。ああデジタルってとっつきやすい。梯さん&デイブさん、ありがとう!と30年近くたっても思う(笑)。

ヘルプとリファレンスを活用しよう

 Maxはヘルプ、リファレンス共にすごく詳しい。またヘルプ自体がMaxのパッチ・ファイルだから、実際に試したり、コピペして自分のファイルで使うことも可能だ。英語だが、難解な文章ではないので頑張って読もう(僕は和訳を見る暇があればダメ元でパッチ作りを進める派)。

f:id:rittor_snrec:20210225214939j:plain
f:id:rittor_snrec:20210225214949j:plain
“このオブジェクトはどうやって使うの?”というときは右クリックでヘルプやリファレンスを開こう。ヘルプは実際のパッチ・ファイルなので、動かしたりコピペも可能。リファレンスは、さらに細かい情報も参照できる。右画面のLOM(Live Object Model)はLive自体をいろいろいじるlive.apiのプログラミングで必須のページ。これらはcycling74.comにも公開されているので、ブラウザーでも閲覧可能

パッチ・ファイルは別画面で開くことも可能

 M4Lデバイスは縦169ピクセルに収める必要がある。もっと広い領域が欲しいときはカプセル化したパッチを別ウィンドウで開くようなデバイスを作れば良い。Maxで作ったパッチ・ファイルをM4Lに流用するときにも便利だ。

f:id:rittor_snrec:20210225215135j:plain

縦169ピクセルに収まらないデザインの場合、パッチに入れ込んで別ウィンドウとして開こう。中を見ると“p replaceMaxPat”というパッチ内に別ウィンドウ分のオブジェクトがある。pcontrolオブジェクトはパッチの動きなどをコントロールするもので、open、closeメッセージを送るとウィンドウが開閉(橙枠)。Maxで作り込んだパッチをM4Lで動かすときに使うと画面デザインの変更無く移植できる(パッチはhttp://bit.ly/dawavenue_kusama_2021からダウンロード可能)

 Liveを使うと“こんなことができるんだ!”とワクワクする瞬間がよくあると連載の初回に書いたが、M4Lも同じ。特にLiveの操作体系を自由にいじれるLOMなど、本当に可能性が詰まっている。自由度が高く、とても楽しいのでトライしてみよう。

 

 というわけで、僕の回はこれで終わり。この連載が奥深いLiveの世界を知る一助になれば幸いです。

 

草間 敬

【Profile】25年以上に渡り、作編曲やエンジニアとして数多くのアルバム制作に参加。豊富な知識と経験による独自の手法は、ミュージシャン達からの信頼も厚い。近年はライブオペレーション活動も多く手がけ、AA=、SEKAI NO OWARIなどのライヴでマニピュレートを担当。現在は今井慎太郎とのユニット=mode-rateで精力的に作品をリリースしつつ、金子ノブアキらとRED ORCAの活動を繰り広げている。

【Recent work】

Wild Tokyo

Wild Tokyo

  • RED ORCA
  • ロック
  • ¥1833

 

製品情報

www.ableton.com

 

関連記事

www.snrec.jp

www.snrec.jp

www.snrec.jp

www.snrec.jp