VaVa 〜トラック制作からリミックスまで幅広く手掛けるビート・メイカー/ラッパー

VaVa

今回登場するのはBIM、KID FRESINO、kZmといったラッパー勢のトラックから、平井堅、木村カエラなどのリミックスまで幅広く手掛けるビート・メイカー/ラッパーのVaVa。彼が6月にリリースした3rdアルバム『VVARP』は、tofubeatsや変態紳士クラブのVIGORMAN、mabanua、JJJなどが参加して話題を呼んでいる。

Interview:Susumu Nakagawa Photo:AmonRyu

【Profile】東京を拠点に活動するビート・メイカー/ラッパー。2022年6月に3rdアルバム『VVARPi』をリリース。そのほかにもBIMやKID FRESINO、kZmなどのヒップホップ・アーティストやAI、木村カエラなどの楽曲を手掛けている。

 Release 

『VVARP』
VaVa
(SUMMIT)

ROLAND TR-808系のキック・ベースを朝の4時に爆音で鳴らせるんです(笑)

DAWとオーディオ・インターフェース

 APPLE iMacにABLETON Liveを立ち上げて曲を作っています。Liveを選んだ理由は、尊敬するtofubeatsさんにTwitterで“DAWは何ですか?”と質問したら“Liveだよ”と答えてくださったからです。まさか本人からレスが返ってくるとは思ってもいなかったので、めちゃくちゃテンションが上がりましたね(笑)。オーディオ・インターフェースはRME Babyface Pro FS。UNIVERSAL AUDIOのApolloシリーズとかなり迷ったのですが、個人的にはBabyface Pro FSの方が録り音がよりクリアな印象だったのでこちらにしました。以前使っていたオーディオ・インターフェースと比べると、音質は雲泥の差。自分のボーカルのだらしない部分が全部丸裸にされたような感じで最初は戸惑いましたが、言ってみればそれが本当の意味で良いことだと気付きましたね。

オーディオ・インターフェースのRME Babyface Pro FS

オーディオ・インターフェースのRME Babyface Pro FS

プライベート・スタジオ

 スタジオはマンションの一室で、地下にあるので24時間音出しが可能です。近隣の住人は音大生が多いので、騒音に対する苦情については全く心配することなく作業ができています。朝の4時にROLAND TR-808系キック・ベースを爆音で鳴らせるんですよ(笑)。ここにはもう2年くらい住んでいて、『VVARP』もこのスタジオで作りました。

マンションの地下に設けられたVaVaのプライベート・スタジオ。メイン・マシンはAPPLE iMacで、DAWはABLETON Live、モニター・スピーカーはYAMAHA MSP5 Studioを使用している。スタジオには簡易的なボーカル・ブースが併設されているため、ボーカル・レコーディングも可能だ

マンションの地下に設けられたVaVaのプライベート・スタジオ。メイン・マシンはAPPLE iMacで、DAWはABLETON Live、モニター・スピーカーはYAMAHA MSP5 Studioを使用している。スタジオには簡易的なボーカル・ブースが併設されているため、ボーカル・レコーディングも可能だ

モニター環境

 モニター・スピーカーはYAMAHA MSP5 Studio。自分が所属するクリエイティブ・チーム、CreativeDrugStoreのスタジオではYAMAHA HS5をずっと使っていたんですが、このスタジオでも同じYAMAHAのモニターがいいと思ってMSP5 Studioを購入したんです。YAMAHAのモニターは音を素直に出してくれる感じがするから好きですね。ヘッドフォンはAUSTRIAN AUDIO HI-X55を所持しています。とある機材屋さんでさまざまなヘッドフォンを聴き比べしたところ、一番好みだったのがこのHI-X55だったんです。音がくっきり聴こえるので、音を冷静にジャッジできるヘッドフォンだと思いました。遮音性に優れているのもポイントで、高いノイズ・キャンセリング機能を誇るAPPLE AirPods Proを初めて使用したときと同じくらい驚きましたね! ミックスの最終チェックは一般のリスニング環境に合わせて、APPLE iPhoneの内蔵スピーカーやAirPods Proなどで行っています。それぞれで気になる周波数帯域が違うので、併用してミックス・バランスを調整しているんです。

ヘッドフォンはAUSTRIAN AUDIO HI-X55を使用している

ヘッドフォンはAUSTRIAN AUDIO HI-X55を使用している

MACKIE.のモニター・コントローラー、Big Knob Studio

MACKIE.のモニター・コントローラー、Big Knob Studio

マイクについて

 マイクはいろいろなものをレンタルして比較した結果、NEUMANN TLM 103が自分の声に一番合っていたので購入しました。自分の声は、想像以上に抜けが悪いように感じているので、高域をしっかり捉えてくれるTLM 103がピッタリかなと。マイクの価格はさまざまですが、結局は自分の声に合っているかどうかが大事だと思うんです。

VaVaが「自分の声質にフィットするマイクです」と語るのは、コンデンサー・マイクのNEUMANN TLM 103

VaVaが「自分の声質にフィットするマイクです」と語るのは、コンデンサー・マイクのNEUMANN TLM 103

タイラー・ザ・クリエイターのようにラップとビートの両方を自分で作る人が好き

ビート・メイキングの手順とソロ作品へのこだわり

 基本的にはモチーフとなるリフやメロディを作り、そこにビートを重ねて展開していきます。ほかのアーティストへ提供するときは、その要望をしっかり聞いてから曲を作りますが、ソロ名義の作品作りのときはシンプルに“自分が良い”と思った曲を作るようにしているんです。なぜなら、世にありふれた音楽をなるべく作りたくないと思っているから。自分はタイラー・ザ・クリエイターのように、ラップとビートのどちらも作れるアーティストが好きなんです。その方が音楽に本人の世界観が色濃く反映されている気がするからですね。なので自分もVaVa名義で作品を出すときは、“VaVaでしか聴けない音楽”を作りたいとずっと思っていて、今回の『VVARP』は今までよりも自分らしい作品に仕上げられた気がしています。

最新アルバム『VVARP』の収録曲について

 「Mugen」では後半にボーカロイドのCRYPTON 初音ミク NTのソロ・パートを挿入して、ヒップホップとボーカロイド両方の良さを引き出せた曲ができました。「In My Sight」は、普段自分と遊んでくれているJJJ君とSCRATCH NICE氏、Satori(Kobayashi)君の3名で作った曲です。「イノセントエクスプレス」は、自分が好きな音ゲー(音楽ゲーム)を制作しているあるふぁさんと共作した曲。このように、『VVARP』には自分が好きなクリエイターやヒップホップ畑ではない人とのコラボに挑戦した楽曲が収録されています。もちろんZOTさん(ZOT on the WAVE)やmabanuaさん、tofubeatsさん、変態紳士クラブのVIGORMANさんなど、一緒に曲を作りたいとずっと願っていた人とのコラボも叶ったのでとてもうれしいです。

各パートに使用する音源

 これまでに集めたサンプル素材コレクションがあるので、これをドラムに用います。Liveのアレンジメントビューにサンプル素材を直接張り付けて組み立てていくんです。ベースも同様に、ベース用のサンプル素材を集めたフォルダーがあるので、これらをFUTURE AUDIO WORKSHOP SubLabに読み込ませて使っています。SubLabはベースに特化したソフト音源なのですが、サンプラー機能もあるのでこれを活用しているんですよ。好きなソフト・シンセはXFER RECORDS Serum。オケ中でも埋もれないサウンドが好きなんです。ハードウェアではMOOG Subsequent 37やSONICWARE Liven 8Bit Warpsを持っています。特にSubsequent 37は、ソフト・シンセと比べて音が太いので気に入っていますね。『VVARP』でもベースによく用いました。シンセは音作りが楽しいですよね。

アナログ・シンセのMOOG Subsequent 37

アナログ・シンセのMOOG Subsequent 37

デジタル・シンセのSONICWARE Liven 8Bit Warps。チップ・チューン・サウンドの生成に特化している

デジタル・シンセのSONICWARE Liven 8Bit Warps。チップ・チューン・サウンドの生成に特化している

マスターに挿すプラグイン

 マスター用のプラグインについてはずっと研究していて、最近はPLUGIN ALLIANCE Shadow Hills Mastering Compressorで軽く整え、IK MULTIMEDIA Classic T-Racks Clipperで音圧を上げるような設定にしています。この組み合わせだと、自分が理想とするサウンドになるんです。

読者へのメッセージ

 僕が思うに、ヒップホップが素晴らしいのは、音楽理論を知らなくても曲を感覚的に作れるところ。それがまた、この世の中にない、新しい音楽を生み出すんだと思います。だからみんなもゲームをやる感覚で、楽しんでビート・メイキングしてほしいです!

VaVaを形成する3枚

『No.1』(『No.1』収録)
tofubeats
(自主配信)

 「学生のころ、Bandcampに上がっていたこの曲を永遠にリピートしていました。G.RINAさんがフィーチャリングされているバージョンも、もちろん大好きです!」

 

『おおぞらをとぶ』(『交響組曲「ドラゴンクエストVIII」空と海と大地と呪われし姫君』収録)
すぎやまこういち
(キングレコード)

 「歌詞がなくても他人を感動させられるところが、ゲームなどの劇伴音楽の強みかなと思うんです。この曲を聴くたびに音楽の素晴らしさを感じますね」

 

『ザナルカンドにて』(『FINAL FANTASY X Original Soundtrack』収録)
植松 伸夫
(SQUARE ENIX MUSIC)

 「一人のときに感傷的になれるような音楽を好んで聴いていまして、これはまさにその代表曲。ゲーム上で映像と一緒にこの曲が流れ、大泣きしたことを覚えてます」

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