Naive Super 〜客演に野宮真貴を迎えるなど話題のシンセ・ポップ・アーティスト

Naive Super 〜客演に野宮真貴を迎えるなど話題のシンセ・ポップ・アーティスト

今回登場するのは、Yushi Ibukiのソロ・プロジェクトNaive Super。自身で作曲からアレンジ、ミックスまで手掛け、ニューウェーブやテクノ、インディ・ロック、シティ・ポップを軸とした楽曲を制作する。2020年4月からは、毎月1〜2曲というハイペースで楽曲をリリースし続けており、客演に野宮真貴を迎えるなどして話題を呼んでいる。

Text:Susumu Nakagawa Photo:AmonRyu

Naive Super【Profile】ニューウェーブ/インディ・ロック/シティ・ポップ/チルアウトなどを軸に、エキゾチックな雰囲気も漂わせるシンセ・ポップ・アーティスト。2019年にカセット・テープ/レコードにてリリースした『Pacific Sketches』は即完売。2020年の4月より、デジタルにて連続リリースを続けている。

 Release 

『Eventide 2049』
Naive Super
(スペースシャワー)

オーディオ・インターフェースはそれぞれ個性があるので奥が深いですよね

DAW

 コンピューターはAPPLE Mac Miniで、DAWはAPPLE Logic Pro Xです。最初にDAWを始めたのは学生のとき。当時Logic Pro XはEMAGIC Logicという名称で、約2年後にAPPLEがEMAGICを買収したのを覚えています。今でこそ複数のソフト音源やプラグイン・エフェクトがDAWに付属していますが、昔は決してそんなことはなく……今の若い方たちはうらやましいなと思います(笑)。

Naive Superの制作スタジオ。多数のシンセやリズム・マシンが並べられているところから、ハードウェアへの造形の深さが伺える。メイン・マシンはAPPLE Mac Miniで、DAWはAPPLE Logic Pro Xを愛用。写真右手には、YAMAHA Montage(上段)やKORG Grandstage(下段)の姿が見える

Naive Superの制作スタジオ。多数のシンセやリズム・マシンが並べられているところから、ハードウェアへの造形の深さが伺える。メイン・マシンはAPPLE Mac Miniで、DAWはAPPLE Logic Pro Xを愛用。写真右手には、YAMAHA Montage(上段)やKORG Grandstage(下段)の姿が見える

オーディオ・インターフェース

 オーディオ・インターフェースは2台あり、一つはPRISM SOUND Lyra2。サンレコの記事がきっかけでPRISM SOUNDに興味を持ち、その後Lyraシリーズにブラック・カラーが登場した時点で購入しました。Lyra2はPRISM SOUNDの上位機種、AtlasやTitanと差の無い高品質な音が魅力的で、現在もメインとして活用しています。よくシンセやリズム・マシン、ギターなどを録るのですが、脚色無いナチュラルなサウンドが気に入っていますね。もう一つはAPOGEE Symphony Desktop。これは外部スタジオでレコーディングするときによく使っていて、今後はライブの現場でも活躍する機会が増えたらいいなと思います。以前はAPOGEE Duetを使用していたこともあり、APOGEEの音質も好きです。色を付けるためにSymphony Desktopで録って、それをさらにLyra2で録るなんてことも楽しそうですね(笑)。マイクプリだけじゃなく、オーディオ・インターフェース自体にもそれぞれのサウンドに個性があるので奥が深いです。

上からオーディオ・インターフェースのAPOGEE Symphony DesktopとPRISM SOUND Lyra2、API 500シリーズ互換モジュール

上からオーディオ・インターフェースのAPOGEE Symphony DesktopとPRISM SOUND Lyra2、API 500シリーズ互換モジュール

モニター・スピーカー

 スタジオはごく普通のマンションの一室で、ゲスト・ボーカルだけ外部のスタジオで録りますが、それ以外のほとんどの作業はこのスタジオで行っています。モニター・スピーカーは、以前はYAMAHA HS5でしたが今はHS8です。HS5だと低域が若干見えづらいことがあったのですが、HS8に変えてからはローエンドまでしっかりモニタリングできるようになりました。ヘッドフォンで作業する時間も減りましたね。最初は、この部屋のサイズに対して少し大き過ぎるかなと思ったのですが、余裕のあるサウンドでモニタリングできるので良かったです。ホワイト・カラーがあるのもポイントでした(笑)。

ディスプレイ下には、左にSEQUENTIAL Prophet-5 Module、右にDAVE SMITH INSTRUMENTS OB-6 Module、その下にはARTURIA KeyLab MK2、さらにその下には左にROLAND VP-03、右にSE-02がスタンバイ

ディスプレイ下には、左にSEQUENTIAL Prophet-5 Module、右にDAVE SMITH INSTRUMENTS OB-6 Module、その下にはARTURIA KeyLab MK2、さらにその下には左にROLAND VP-03、右にSE-02がスタンバイ

モニター・ヘッドフォン

 ヘッドフォンはSONY MDR-CD900STやMDR-7506を持っています。国内ではMDR-CD900STがスタンダードな印象ですが、自分は海外でよく見るMDR-7506をメインとして用いています。MDR-CD900STは細かい作業に向いていますがその分耳が少し疲れやすく、一方のMDR-7506は音が柔らかいので長時間使っても耳が全然疲れません。ヘッドフォン・アンプはRUPERT NEVE DESIGNS RNHPで、NEVEらしい音楽的なサウンドが気に入っています。

録りの段階でしっかり音作りするようになったのでミックス時の手間が減りました

インスピレーションとビート・メイキングの手順

 ソロ・プロジェクト名である“Naive Super”は、ノルウェー人作家のアーレン・ローが執筆した小説のタイトルから取っているように、音楽も小説や映画からインスピレーションを得ることが多いです。良いフレーズやメロディを思い浮かんだら、それをLogic Pro X上で再現してコードを付け、ドラムやベースを肉付けしていくという感じですね。もし、これらの作業中に新しいアイディアをひらめいたら試してみますし、うまく音に再現できなかったところは“味”として取り入れたりもします。

ビート・メイキングのこだわり

 往年の名機や、それを再現した音源を使うといったところになります。特にリスナーが一聴して“あのシンセの音だ!”と分かるようなものを曲に取り入れるのがこだわりです。例えばアナログ・シンセの名機ARP Odysseyを復刻したKORG Arp Odyssey Module Rev1をはじめ、デジタル・シンセのYAMAHA DX7やMELLOTRON Microなどのサウンドをよく用います。音の作り込みが不得手な自覚もあり、プリセットを選んで微調整するくらいがちょうど良いと考えています。

上からMOOG Subsequent 37、KORG Arp Odyssey Module Rev1

上からMOOG Subsequent 37、KORG Arp Odyssey Module Rev1

復刻版の音源におけるこだわり

 特に近年は、往年のシンセやリズム・マシンの復刻モデルが多数存在していますが、いずれにおいても自分はオリジナルとなるブランドと共同開発されたものをできるだけ使用したいんです。理由は、やはりそのブランドが好きであるから。そして、音への信頼感があるからです。オリジナル・ブランドへのリスペクトを持ってその音を自分の作品へと落とし込むことで、当時の雰囲気が曲へ反映されているような気持ちになれます。

お気に入りのソフト音源/プラグイン・エフェクト

 ソフト音源やプラグイン・エフェクトにおいてもこれは共通で、例えばボブ・クリアマウンテン氏のエフェクト・チェインを再現できるAPOGEE Clearmountain's Domainや、アル・シュミット氏監修のドラム専用ソフト音源TOONTRACK SuperiorDrummer 3対応のSDXライブラリー、SDX-DECADESなどを愛用しているのですが、まさに憧れのエンジニア/プロデューサーたちと共同作業している気分になることができます。

各パートに使用する音源とマイクプリ

 ドラムには、サンプラーのAKAI PROFESSIONAL MPC Oneやリズム・マシンのROLAND TR-8Sも用います。特にキックとスネアはAPI 312を通して録りますね。ベースは自分で弾くことが多く、これにはAPI 505 DIを通して野太い音にしているんです。一方シンセなどの上モノは、RUPERT NEVEDESIGNS Portico 511やAMS NEVE 88RLBへ入力します。好きなシンセはMOOG Subsequent 37やSEQUENTIAL Prophet-5 Module、DAVE SMITH INSTRUMENTS OB-6 Moduleなどで、音の太さ、操作感、フィルターの効き具合などがポイントです。最近は録りの段階でしっかり音作りするようになったため、ミックスする際の手間が減り、全体の作業効率が上がったように思います。

上からリズム・マシンのROLAND TR-8S、Jupiter-XM、RUPERT NEVE DESIGNS 5057 Orbit

上からリズム・マシンのROLAND TR-8S、Jupiter-XM、RUPERT NEVE DESIGNS 5057 Orbit

読者へのメッセージ

 2020年よりデジタル配信を続けてきましたが、こうしてサンレコに取り上げてもらえるくらい世界が開けました。もちろん曲の完成度は大事ですが、ある程度の締め切りを設けて世界に発信すること、そしてそれを継続することも大切です。0と1の違いは大きいと感じています。

Naive Superを形成する3枚

『レッツ・ダンス』
デヴィッド・ボウイ
(ワーナーミュージック・ジャパン)

 「ナイル・ロジャースとボブ・クリアマウンテンが、この作品の制作に関わっていることから選びました。変化することを恐れないボウイの姿勢には励まされています」

 

『ムーン・サファリ』
エール
(ワーナーミュージック・ジャパン)

 「自分が理想とする“モダン・ビンテージ”を体現しているデュオ。1曲目のMVではKORG MS-20などをただ演奏しているだけのなのに、ズルいくらい格好良い(笑)」

 

『beautiful.』
Fantastic Plastic Machine
(エイベックス)

 「自分にとってプログレッシブ・ロックのイメージだったMellotronを、クラブ・ミュージックに取り入れた2曲目が衝撃的でした。今も色あせない一枚だと思います」

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