第1回 MIX師とは? 〜“歌ってみたMIX”を作るための環境とスキル

 みなさんこんにちは。レコーディング/ミキシング・エンジニアの“小泉こいた。貴裕”と申します。MIX師……名前は聞くけどよくわからないという方も多いのではないでしょうか。音楽制作に興味があれば気軽に楽しめる世界ですので、どうぞお付き合いください!

“歌ってみた”とMIX師との関係性

 “歌ってみた”とは、既存の曲に歌声を載せてニコニコ動画やYouTubeなど動画サイトへ投稿する行為の総称です。その動画制作において、歌とカラオケ音源をバランス良くミックスする人のことをMIX師と呼びます。そして、MIX師によってミキシングされた音が “歌ってみたMIX”というわけです。

 “歌ってみた”には、単に歌うだけでなく、レコーディング、ミックス、映像制作、アップロード、プロデュースなど、さまざまな制作が含まれています。これらは“歌い手”と呼ばれるボーカリストがすべて1人で行う場合もありますが、歌い手がそれぞれのクリエイターに依頼する場合も多く、その中の一人がMIX師です。歌い手にとってMIX師は必要不可欠な存在であるため、多くのMIX師が“歌ってみた”の制作をサポートしているのです。

“歌ってみた”の主な制作フロー

ミキシングエンジニアとMIX師はどう違う?

 きっちりと定義されているわけではありませんが、活動拠点と制作対象が違うと考えておけば良いと思います。

 MIX師の多くは自宅スタジオを拠点とし、インターネット上のやり取りのみで完成までサポートしています。歌ってみたMIX以外の制作を行う場合もありますが、特に歌ってみたMIXを扱う場合にMIX師という呼称を使うと考えて良いでしょう。

 また、歌ってみたMIXではステレオのカラオケ(オフボーカル=オフボとも呼びます)とボーカルをミキシングすることがほとんどで、通常の各楽器が別トラックになったマルチトラックミキシング(パラミックス)はあまりありません。パラミックスができるMIX師はプロフィール等でアピールしています。

MIX師が使用する素材はボーカルとカラオケがほとんど

 そして、MIX師に必要なスキルがもうひとつ……それは“ボーカル編集”です。具体的にはピッチ修正やタイミング修正、ノイズ除去、場合によってはハモリの生成を依頼されることが多いので、自信がつくまではこれに倣うのが良いでしょう。

MIX師はどこで活動している?

 “歌ってみたMIX”の依頼は、Twitterダイレクトメッセージが多く、次いでココナラなどのスキルシェアサービス、自身のWebページなどでやり取りされています。価格設定は無償から数万円までMIX師によってさまざま。専業で活動するMIX師もいれば、副業として、または趣味の一環として活動しているMIX師もいます。一定の受注が得られるまでは無償で経験を積んでいくのもよいでしょう。

“歌ってみた”の依頼はTwitterのDMやココナラなどでやりとりされている

MIX師をはじめてみよう!

 MIX師は資格があるわけではないので誰でもMIX師になることができますが、他人から依頼を受けて活動する以上、依頼者の期待に応えるスキルと覚悟は必要です。これはMIX師だからというわけではなく、他人の依頼を受ける上で一般論として必要な心構えでしょう。

 チャレンジしたいという方は、まずご自身で“歌ってみた”を制作することをおすすめします。制作フローを理解し、自信が持てるところまでスキルを磨いてみてください。ご自身で歌える環境がない場合は、配布されている歌ってみたMIXの練習用音源を利用するのもよいですね。

 そして、現在活躍されているMIX師の音源を聴くことも参考になります。まずはTwitterで歌い手さんやMIX師さんのアカウントをフォローし、活動をのぞいてみてはいかがでしょうか。「お好きな曲名+歌ってみた」で検索すると、いろんな人が“歌ってみた”を楽しんでいるのがわかります。これらを聴いているだけでもうれしい気分になりますよ!

人気MIX師のの制作環境。ねる氏(左)とkoya氏(右)

 次回はMIX師に必要な機材、音楽制作環境について解説します!

第1回のまとめ

  • MIX師とは歌ってみた動画のためのボーカルミキシングを行う人のこと
  • MIX師はボーカルの編集も担当する
  • 歌い手とMIX師のやりとりはTwitterを通して行われることが多い
  • 活動のスタンスや金額、受注方法などはMIX師によってさまざま

小泉こいた。貴裕

【Profile】ミキシング・レコーディングを手がけるマルチクリエイター。一般社団法人日本歌ってみたMIX師協会代表理事。NoGoD、小比類巻かほる、口笛世界チャンピオンYOKOの作品などを担当。TASCAMのマーケティング、音楽コラボアプリnanaのマーケティングユニットマネージャーを経て音響機器メーカーなどのマーケティングコンサルタントも行っている。2022年には歌ってみた文化の活性化を図るため、一般社団法人日本歌ってみたMIX師協会を設立。自身のYouTubeチャンネルSWKミキシング講座とともに、若いクリエイターへのスキルアップや機会提供に奔走する。

SoundWorksK Website https://soundworksk.net/
一般社団法人日本歌ってみたMIX師協会 https://www.mix-shi.org/

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