第4回 ボーカルにリバーブをかけてみよう 〜“歌ってみたMIX”を作るための環境とスキル

 第4回のテーマは、ボーカル処理にかかせないリバーブです。数多あるエフェクトの中でも効果がわかりやすく、どなたでも簡単にボーカルを彩ることができます。ここではリバーブの基本的な使い方について紹介します。

リバーブをかけるとは、響きを後付けすること

 リバーブとは、音に響きを付け加えるエフェクトです。部屋で録音したボーカルを大きなホールで歌っているようなサウンドに仕上げるなど、異なる空間で歌ったように仕上げることができます。ほとんどのボーカル楽曲にはリバーブが使われていると考えて良いでしょう。リバーブで響きを付加することを「リバーブをかける」といい、その量を“深い/浅い”で表現します。

 筆者はSONNOX Oxford ReverbやWAVES H-Reverbなど、主に3〜4種類のリバーブを使用していますが、DAWに標準搭載されているリバーブもよく使用します。よく使うプリセットを絞り込んでしまうと使いやすいでしょう。最初はDAW標準のもので十分ですが、だんだん種類を増やすと楽しいですよ。

筆者がよく使用するリバーブ :①SONNOX Oxford Reverb(左)おすすめプリセットはLarge Vocal。②WAVES H-Reverb(右)

エフェクトには2種類のかけ方がある

 エフェクトには2種類のかけ方があります。基本的な知識としてぜひ覚えておいてください。

センド/リターン

 原音から分岐された信号(センド)に、エフェクト処理して再び戻す(リターン)方法です。エフェクトは新規に作ったAUXトラック(エフェクトトラックなどとも呼ばれています)に挿入します。センド/リターンは、一つのエフェクトを複数のトラックで使用できることが特徴です。

センド/リターンのイメージ

 センド/リターンを使うときのポイントは、エフェクト音100%に設定して使用することです。ちなみにエフェクト音をウェット、エフェクトがかかっていない原音をドライと呼び、ドライ/ウェットの割合はエフェクト内のパラメーターで調節することができます。

エフェクトのドライ/ウェット(プラグインによってはミックスと表示されている場合もある)。AUXトラックのエフェクトはウェットを100%に設定する

インサート

 トラックの直接エフェクトを挿入する使い方です。主にコンプやマイクプリなど、音声信号すべてにエフェクトをかけたい時に使用しますが、エフェクト内のドライ/ウェットの調節すれば原音も混ぜることも可能です。

インサートのイメージ

リバーブはセンド/リターン? それともインサート?

 リバーブは、一つのリバーブを複数のトラックで共有できるセンド/リターンが多く使われます。その理由の一つは、同じ楽曲で異なる響きを使用しすぎると音がまとまりにくいため。もう一つは、リバーブをインサートでたくさん使用するとパソコンに負荷を多くかけてしまうためです。

 しかしながら歌ってみたMIXの場合は、リバーブの対象がボーカルトラックのみというケースも多いので、インサートでも使用できます。インサートでリバーブを使用する場合、エフェクト内のドライ/ウエットの設定割合はウェットが数%〜20%の値で使用すると良いでしょう。

ボーカルにはプレートリバーブを使おう

 リバーブにはホール、ルーム、プレートなどの種類がありますが、ボーカルにはプレートリバーブを使うのが定番です。プレートリバーブはもともと鉄板を用いて響きを得ていましたが、鉄板の見た目通り明るく抜けの良い音が得られ、ほかのリバーブよりもボーカルが引き立ちます。

プラグインエフェクトの中から、「プレート(Plate)」という名称のリバーブを選んでみましょう。「Vocal Plate」などのプリセットがあればなお良いです。

STEINBERG Cubaseを使って実践!

 それではさっそくSTEINBERG Cubaseを使ってボーカルトラックにセンド/リターンでリバーブをかけてみましょう。

  1. FXトラックにプレートリバーブを立ち上げる

    RoomWorks(Cubaseに付属するリバーブエフェクト)を立ち上げ、プリセットの中からSurr.Vocal.Plateを選びます。

  2.  センドの量を上げる

    ボーカルトラックのセンド量(リバーブへの音の送り量)を上げていきます。リバーブが付加されるので気持ち良いと感じるところまで調節してみましょう。このときドライ/ウェットがウェットのみになっているか確認してください。

  3. リバーブタイムを調整する
    リバーブの響きが楽曲に合った長さになるように調整しましょう。再生している楽曲を停止したときに残っている残響が1〜2小節分くらいが目安です。

 いかがでしたか? リバーブは効果がわかりやすいため、エフェクトをかける面白さを体感していただけると思います。リバーブをかけるだけでボーカルが艶っぽく、うまく聴こえやすくなるのはなんとも不思議ですね。これから先に出てくるエフェクトでも効果が感じられるかどうかは、目ではなく耳で判断しながら設定することが大切です。リバーブをかけて「おっ!」と思った感覚を忘れないようにしてください。

第4回のまとめ

  • リバーブは響きを後付けできるエフェクト。
  • エフェクトのかけ方は2種類(センド/リターンとインサート)がある。
  • リバーブはインサートで複数のトラックで使用すると多くのCPUパワーが必要になる。
  • エフェクトをセンド/リターンで使用する場合、エフェクト内のドライ/ウェットのバランスはウェット100%に。
  • 歌ってみたミックスの場合、リバーブを使用するトラックはボーカルのみに限られるため、センド/リターン、インサートどちらを使ってもよい。

小泉こいた。貴裕

【Profile】ミキシング・レコーディングを手がけるマルチクリエイター。一般社団法人日本歌ってみたMIX師協会代表理事。NoGoD、小比類巻かほる、口笛世界チャンピオンYOKOの作品などを担当。TASCAMのマーケティング、音楽コラボアプリnanaのマーケティングユニットマネージャーを経て音響機器メーカーなどのマーケティングコンサルタントも行っている。2022年には歌ってみた文化の活性化を図るため、一般社団法人日本歌ってみたMIX師協会を設立。自身のYouTubeチャンネルSWKミキシング講座とともに、若いクリエイターへのスキルアップや機会提供に奔走する。

SoundWorksK Website https://soundworksk.net/
一般社団法人日本歌ってみたMIX師協会 https://www.mix-shi.org/

関連記事