DFT - Beat Makers Laboratory Japanese Edition Vol.31 〜DJにあこがれる女性はだいぶ増えてきたので次はビート・メイカーの番だと思うんです

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 今回登場するのは、作曲からアレンジ、ミックスまですべて自分たちで手掛ける大阪出身のMIMI(写真左)とVIVI(同右)によるプロデューサー/DJデュオ=DFT(Don't Fxxkin' Touch)。自ら開拓したワールドワイドなコネクションを生かして、これまでに3枚の作品を発表している。ここでは最新アルバム『HOTEL CLOUD』についての制作内容を中心に、普段彼女たちが音楽制作について考えていることなどを深く掘り下げてみたいと思う。

Text:Susumu Nakagawa Photo:Chika Suzuki

 

 

有名無名は関係無く
“声だけ”を聴いてコラボ相手を選択した

最新アルバム『HOTEL CLOUD』について

VIVI これまでの作品は、年に4〜5回アトランタやLAに行って制作していたのですが、コロナ禍で渡航できなくなってしまい……。そこで今回はアジアのアーティストたちとのコラボを軸に置き、すべてオンラインでやりとりして仕上げたんです。最初にトラックを送って、そこにボーカルを乗せてもらうというやり方ですね。今回はありがたいことにコラボするアーティストたちを選ばせてもらえる場面があったので、有名無名は関係無く“声だけ”を聴いてトラックとマッチしそうな人を選ばせていただきました。よく人の声を聴くと、周波数グラフを思い浮かべることが多いんです(笑)。

MIMI 全体を通しては、“質感を表現すること”を最初から考えていました。砂漠の砂を取り寄せて、その砂が落ちるときの音や、サイダーの“シュワシュワ”という音、お皿を割ったときの音などをAPPLE iPhoneで録音し、楽曲に使用しています。またリバーブなどを使って“湿度”を表現したりするなど、空間処理におけるミックスにも気を使っていますね。

 

現在のモニター環境について

VIVI スタジオにはニアフィールドのADAM AUDIO A7Xがありますが、主にセッションの際などに使うことが多く、一人で作業するときやトップ・ラインを作るときなどはヘッドフォンのAKG K712 Proでモニタリングしています。

MIMI DFTのビートはほとんど私が担当しているのですが、気分を変えて制作したいのでAPPLE MacBook片手にソファの上などいろいろな場所でやっています。モニタリングについても、MacBookのスピーカーやヘッドフォン、イアフォンなどあらゆる環境で行っていますね。以前ROLAND TR-808系キック・ベースがスマートフォンのスピーカーでは鳴らなくて悩んだことがあったので、それ以来必ず多種多様な環境でチェックするようにしているんです。

 

使用するソフト音源やプラグイン・エフェクト

MIMI ダンスホール・レゲエ調の「Red」(『HOTEL CLOUD』収録)のベースには、NATIVE INSTRUMENTS Massiveで音作りしたシンセにトランジェントをコントロールするWAVES Trans-Xを用いています。キックとベースのアタック/リリースにはかなりこだわっていて、サイド・チェイン・コンプを使ってビートにグルーブが出るようにしているんです。また4つ打ち曲の「PINK」(『HOTEL CLOUD』収録)のサビに登場する派手なリード・シンセには、MassiveやLETHAL AUDIO Lethal、STUDIOLINKED Trap Boomをレイヤーし、バスにディストーションのCAMEL AUDIO CamelCrusherなどを使用しています。EQはよくAPI 560をミックスで使っていて、マスターにも挿すことがありますね。

 

お気に入りのTR-808系キック・ベース音源

MIMI 基本的にサンプル素材は使わず、ソフト・シンセで作るようにしています。あるとき、ロザリアというスペイン人シンガー・ソングライターの曲を聴いていたら、とても格好良いTR-808系キック・ベースの音を見つけたので、これをリファレンスにSTUDIOLINKED 808 Super Subでオリジナル・プリセットを作ったんです。それを「ORANGE」(『HOTEL CLOUD』収録)に使っています。プラグインでは、ギター・アンプやエフェクトをシミュレートしたWAVES GTRでひずませて、EQのBRAINWORX BX_Digital V2で微調整したという感じです。ちなみにBX_Digital V2はマスタリング向けのプラグインですが、私は個々のトラックにも用います。

 

お気に入りのリバーブ・プラグイン

VIVI 最近APPLE Logic Pro Xに付属のリバーブ・プラグインChromaVerbにとてもハマっていて、どのパートにも多用しています。14のリバーブ・タイプを搭載していて、初期反射やディケイといったよくあるリバーブのパラメーターだけでなく、モジュレーションもありますが、一番のポイントは視覚的な分かりやすさです。リバーブ成分の動きが各周波数帯域別に色分けされ、画面にビジュアライズされるため、リバーブの残響や密度を目で確認することができます。非常にインスピレーションを与えてくれるリバーブです。

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DFTの制作スタジオ。仮歌のレコーディングなどもここで行っており、DAWはAPPLE Logic Pro X、オーディオI/OはRME Fireface UCX、モニターはADAM AUDIO A7Xを備える。デスク手前に設置されたキーボードは、NATIVE INSTRUMENTS Komplete Kontrol S49だ

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DFTのストリーミング配信専用スタジオにあるDJブース。写真両端に見えるモニターはADAM AUDIO A7Xで、写真中央に見えるのはサンプラーのROLAND SP-404SXだ。その右手にあるのは、コンパクト・ミキサーのYAMAHA MG10XU。DJコントローラーには、VESTAX VCI-380を使用している

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サブの制作デスク。モニターはGENELEC 8020Dを装備し、コンパクト・ミキサーにはDJブースと同じMG10XUがスタンバイ。この手前に置いてあるのは、USBオーディオI/OのTOOLMSC V8

服をコーディネートをするように
音楽を制作していきたい

チームで制作するメリット

MIMI 所有するソフト音源やプラグインがお互い違うため、これらを共有して制作できるのが強みです。よくやるのが、APPLEデバイス同士でデータをやり取りできるAirDropでMIDIデータを送り合い、求めるソフト音源やプラグイン・エフェクトが見つかったらそのままオーディオ・データに書き出し、それをまたAirDropで送り返すということ。例えば「GREEN」(『HOTEL CLOUD』収録)では、良いシタールのソフト音源が見つからなかったので、VIVIとMIDIデータを共有して一緒に探しました。最終的にはVIVIの持つ中東音楽の楽器に特化したソフト音源のNATIVE INSTRUMENTS Discovery Series: Middle Eastがぴったりだったので、オーディオ・データに書き出してAirDropで送り返してもらい、私の使うABLETON Liveに取り込んだという感じです。

 

ビート・メイキングの心得

MIMI ファッションで言う“コーディネート”のように、音楽を制作していきたいと思うんです。アレンジやミックスは奇麗にまとめることが必ずしも良いと思っているわけではなく、ピーキーな周波数帯域を逆にうまみとして聴かせるなど“あえてはずして”みたり、素材や質感なども含めて、これまでに無かった新しい組み合わせを冒険してみたいと考えています。

VIVI 私は丁寧な音作りというのを心掛けたいです。以前、成功した先輩方と話す機会があったのですが、こんなに細かいところまでやるの?っていうことを何度も感じたんですよ。“神々がここまでやっているのか”というのを痛感した瞬間でした。それ以来、ごまに字を書くつもりで自分たちもミックスやボーカル処理をパーフェクトにやっていこうと決めたんです。

 

今後の展望

VIVIMIMI 国内の音楽プロデューサー/ビート・メイカー人口の中で、女性は2%しか居ないと言われています。なので、女性にも“プロデューサー/ビート・メイカーになりたい”と言わせるきっかけにDFTがなれたらいいなと考えていますね。DJのシーンではだいぶ女性が増えてきたじゃないですか。だから、次は女性ビート・メイカーの番だと思うんです。また最近はコロナ禍もあり、ライブ配信アプリのBIGO LIVEでの活動にも力を入れていて、毎日3時間近くDJ配信などを行っているのでのぞいてみてください。将来的には自分たちでマスタリングもできるようになったり、ハリウッド映画のサントラを書いたりするのが夢なので、座右の銘である“栄光に近道無し”を心に刻んで日々頑張っていきたいと思います!

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制作スタジオに設置されたモニターは、DJブースの両サイドにあるものと同じA7Xだ。VIVIいわく「アメリカのスタジオには、ADAM AUDIOを置いてあるところが多かったので購入しました。中低域がブーストされやすい傾向にあるので、この特性を知った上でミックスするといいと思います。ダンス・ミュージックのクリエイターにはお薦めです」とのこと

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制作スタジオ内に設置されたコンデンサー・マイクのAKG C214。VIVIは「以前使っていたハイエンド・モデルのものと比べても、引けを取らないクオリティ。ボーカルだけじゃなく、バイオリンなどの収録にも使えます」と話す

DFTを形成する3枚

『クレイジーセクシークール』
TLC
(ソニー)

 「T-ボズ、レフト・アイ、チリによるボーカル・トリオが1994年にリリースしたアルバム。ブラック・ミュージックにハマるきっかけとなりました。理屈抜きにしびれた!」

 

『ピース・イズ・ザ・ミッション』
メジャー・レイザー 
(ワーナーミュージック・ジャパン)

 「こびないサウンド、圧倒的なポピュラリティ、迫力のある音作り。そのすべてを兼ね備えた作品です。ミックスに一層磨きをかけたいと思いました」

 

『Someday Somewhere』
ムラ・マサ
(JAKARTA)

 「極上のシンプリシティ。引き算の大切さ、いかに素材が大切かということを学びました。あらためて、いつまでも聴き続けられる音楽を作りたいと思った作品です」

 

DFTのNo.1プロデューサー
N.E.R.D

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『フライ・オア・ダイ』N.E.R.D(ユニバーサル)

 ファレル・ウィリアムス、チャド・ヒューゴ、シェイ・ヘイリーの3名による、ミュージシャン/プロデューサー/シンガー・ソングライターのユニットです。3人が織りなす斬新なサウンドはもちろん、コライトの文化を彼らから学びました。海外でのセッションを始めるきっかけを与えてくれ、DFTというチームの在り方を考えさせられるきっかけとなった作品でもあります。

 

 

DFT

【Profile】大阪出身のプロデューサー/DJデュオ。自分たちで作曲からアレンジ/ミックスまでを手掛け、個々のフィールドでも活動する。これまでに3枚のアルバムを発表し、近年はライブ配信アプリのBIGO LIVEでの活動にも力を入れている(アカウント:dfttokyovivimimi)。

【Release】

『HOTEL CLOUD』
DFT
(bpm tokyo / bpm plus asia)