Beat Makers Laboratory Japanese Edition Vol.25 - NAOtheLAIZA 〜それぞれの個性がダイレクトに反映される共同制作は“音楽の可能性”が広がるからすごく楽しい

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 DOBERMAN INFINITYやNORIKIYO、韻踏合組合、WILYWNKAなど国内ヒップホップ勢〜Jポップ/Kポップ・アーティストまで幅広く手掛けるプロデューサー/エンジニアのNAOtheLAIZA。バウンシーなビートは、彼の一番の得意技だろう。今回は彼が制作拠点として利用するスタジオの一つ、Make Hits Labにて話を聞いた。

Text:Susumu Nakagawa Photo:Chika Suzuki

FOCAL Shape Twinは
ちゃんと音作りしないと鳴らせないスピーカー

キャリアのスタート

 小中学校のころまではJポップを聴いていました。高校に入ると市内にレコード・ショップができ、友達の影響でソウルなどのレコードを買いに行くようになったんです。初めてDJセットを買ったのは、高校2年生のとき。DJ KRUSHさんのアルバム『Meiso』を聴いて、“こんな格好良いヒップホップがあるんだ!”ってめちゃくちゃ感動したんです。それでより本格的にDJにのめり込んでいきました。大学ではWOLF PACKというラップ・グループの一員としてバックDJをすることになり、大阪のアメリカ村を中心に活動していたんです。同時期にはDOBERMAN INC(現在のDOBERMAN INFINITY)や韻踏合組合、SHINGO★西成さんなどが居ました。そんな中DOBERMAN INCがCDデビューし、彼らの音源を聴いて、そのトラックの完成度に衝撃を受けたんです。そのころのWOLF PACKは、レコードに収録されたインストゥルメンタル・トラックを使ってライブしていたので、自分たちもオリジナル・トラックを作るべきだ!と決意したんですよ。そこでサンプラーのAKAI PROFESSIONAL MPC2000XLを触り始めたのが、ビート・メイカーとしての第一歩でした。それから毎日朝から晩までビート・メイキング……イメージ通りの楽曲が作れるようになったのは、1年後くらいでしたね。

 

ターニング・ポイント

 韻踏合組合の「一網打尽」(2014年)だと思います。大阪を拠点にしているときに制作した楽曲で、サンプリングを軸としたヒップホップ・トラック。思った以上にいろいろな場所で反響を呼んだようで、自分のキャリアの“名刺代わり”となった作品です。それからEMI MARIAやJAGGLAのアルバム・プロデュースなどを経て、東京でも徐々に幅広いアーティストの方々へ楽曲提供ができるようになりました。

 

機材の変遷

 DAWを中心とした制作環境を整え始めたのは、2004〜5年辺りから。最初はSTEINBERG CubaseやEDIROLのオーディオI/O、FOSTEXのモニター・スピーカーなどを購入しました。モニターは、今日までEVE AUDIO SC305をはじめ、GENELEC 8030、HEDD Type20、FOCAL Solo6 BEやShape 50などさまざまなモデルを使ってきましたね。中でもType20は出音が速く、ADAM AUDIOと似たパワーのあるサウンド。スタジオに来たミュージシャンからは、“とてもテンションが上がる音”と喜ばれたこともあります。

 

モニター環境

 拠点の一つであるMake Hits Labは、いつも期待に応えてくれるスタジオ。音楽家向けの物件なので完全防音です。メイン・モニターはFOCAL Shape Twinで、サブウーファーはFOCAL Sub6。Shape Twinは色付けも少なくシビアに鳴る印象です。ちゃんと音作りしないと鳴らせないスピーカーなので、ミックスにもぴったりだと思います。つい最近、エンジニアの小森雅仁さんにルーム・アコースティックを見てもらったばかりなのですが、吸音材と拡散材をうまく使ってデッド過ぎずライブ過ぎず、出音を判断しやすい空間になっています。

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NAOtheLAIZAのデモとアーティスト/A&Rをつなぐソング・プラガー=谷正太郎氏が所有するMake Hits Lab。窓は3重、扉は2重という本格的な防音設計で、最大106dBまで音出しが可能だ。メイン・マシンはAPPLE MacBook Proで、デスク手前にはNATIVE INSTRUMENTS Maschine Mikro MK3がスタンバイ。写真左端には、パッシブの密閉型スピーカーAURATONE 5C Super Sound Cubeが設置されている。スピーカー・スタンドは、すべてACOUSTIC REVIVE製

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NATIVE INSTRUMENTS Komplete Kontrol S49 MK2を装備

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マイク・スタンドには、2枚のダイアフラムの音を個別に出力可能なコンデンサー・マイクTOWNSEND LABS Sphere L22を備える。専用プラグインでさまざまなマイクの特性を再現することができる

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オーディオI/OはUNIVERSAL AUDIO Apollo Twin X。「Apollo Twin Xは、Apollo Twin MK2と比べて解像度が格段に良くなっています」とNAOtheLAIZAは語る

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同軸スピーカーのTANNOY Gold 7(写真左)は、谷氏がその出音とコスト・パフォーマンスをとても気に入ったので導入。FOCAL Shape Twin(同右)は、メイン・モニターとして使用している

プロデュース・チームでは
アイディアの良いところ取りをした制作が行える

使用ソフト音源/プラグインなど

 ビート・メイキングにはPRESONUS Studio One、ミックスにはAVID Pro Toolsを使用することもあり、セッションによって使い分けます。ドラムにはサンプルを使い、NATIVE INSTRUMENTS Maschineソフトウェアで打ち込んでいます。ROLAND TR-808系キック・ベースにはFUTURE AUDIO WORKS Sublabがお薦め。上モノで好きなのは、ブラスに特化したNATIVE INSTRUMENTS KontaktインストゥルメントのSession Horns Proです。ビンテージ系のプリセットが魅力的で、ジェイZやチャンス・ザ・ラッパーの楽曲を連想させるような音色があります。

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ROLAND TR-808系キック・ベースに特化したソフト音源、FUTURE AUDIO WORKS Sublab。ディストーションやコンプレッサーなどのエフェクトも内蔵する、NAOtheLAIZAお薦めのツール

ビート・メイクの秘けつ

 各セクションごとに、“ボーカル以外で何を一番聴かせたいのか”をとても意識しています。あと、ドラムの各パーツのキーを合わせることにもこだわっていますね。こうすると、ドラムが楽曲全体にうまく収まるのです。また、自分が一番心地良いと思うキーにパーツごとに変えて調整することもあります。

 

コラボレーション/コライトの醍醐味

 以前は1人で制作していましたが、最近はキーボーディストやギタリストを迎えることもあります。最初は自分の思い通りに演奏してほしいという気持ちが強かったのですが、回数を重ねるうちに、個々の発想を取り入れた音楽を作る方が良い結果になると感じるようになりました。信頼をおけるミュージシャンとのコラボレーション/コライトは、各々の個性がダイレクトに反映されるのでとても魅力的。単純に“音楽の可能性”が広がるのがすごく楽しいですね。

 

プロデュース・ユニットとしての活動

 2015年にDOBERMAN INFINITYのP-CHOから、プロデュース・ユニットを組みたいと話があり、ビート・メイカーは自分、トップ・ライナーにはJAY'EDを迎え、3人でO.M.Wというプロデュース・ユニットを結成しました。手掛けた楽曲は、EXILE ATSUSHIさんと倖田來未さんのコラボ曲「オーサカトーキョー」やBALLISTIK BOYZ from EXILE TRIBEさんの「PASION」など。このプロデュース・チームは良い意味で“地元の友達”と組んでいるような感覚なので、言いたいことを言い合える理想の環境とも呼べます。例えば“あのアーティストはダンスをするので、ここにダンス・セクションを入れよう”とか、“ライブのことを考えたらこのアレンジが良い”など。それぞれ活動してきた分野が違うので、3人のアイディアの良いところ取りをした楽曲制作が行えるのです。このメンバーと一緒に音楽を作れるのは刺激的ですし、シンプルに楽しいです。

 

ソング・ライティング・キャンプ体験

 エイベックス・ミュージック・パブリッシングが主催する韓国でのソング・ライティング・キャンプに参加したのですが、それがとても勉強になりました。一番衝撃的だったのは制作スピード。ある程度作ったビートを土台にセッションを行うのですが、メロディやハモリ、リリックまで含めても1曲3時間でトップ・ラインがほぼ完成します。自分がこれまで体験したことのない速さで楽曲が生まれていく様子は圧巻の一言。日本では適当な言葉でメロディを作ってからリリックを考えるという手順が多いと思いますが、キャンプに参加していた現地のメンバーは、メロディと同時にリリックも書いていくので完成が速いのでしょう。

 

最新作『CLASICK』について

 10年前に作り貯めていたビートを、DJ IZOHと組み立て直した作品です。もともとアブストラクト・ヒップホップが好きだったので、そこに原点回帰したようなトラックが収録されています。全曲を通して“一つの物語”となっている作品です!

 

自分を形成する3枚

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『迷走 Another Maze』
D.J. KRUSH
(ソニー)

 「人生を大きく変えたレコード。高校のときにレコード屋の店員さんに薦められたのがきっかけです。それまでソウルが好きでしたが、一気にヒップホップに転向しました」

 

Full Clip: A Decade of Gang Starr

Full Clip: A Decade of Gang Starr

  • ギャング・スター
  • ヒップホップ/ラップ

 「自分の音楽制作の礎であるDJプレミアのトラックが詰まった作品。グールーのラップとの相性もバッチリで、ギャング・スターは唯一無二のグループだと思っています」

 

No Pressure

No Pressure

  • ロジック
  • ヒップホップ/ラップ
  • ¥2241

  「ロジックが、ラッパーとしての引退を宣言してリリースしたアルバム。最近の新譜の中ではとても好きな作品。90'sブーンバップ系の音ですが、処理は現代風です」

 

自分のNo.1プロデューサー
ティンバランド

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 1990年代中盤以降のヒップホップ/R&Bシーンに多大な影響をおよぼしてきたスーパー・プロデューサー。彼のパーカッシブでトライバルなフィーリングのビートには、とても衝撃を受けました。どのアーティストの作品においても、リズムやフレーズ、音色などから彼の個性的なサウンドが伝わってきます。毎回彼のアルバムを聴くたびに新しい発見があるので、自分はビート・メイキングに行き詰まると必ず聴くようにしていますね。

Shock Value

Shock Value

  • ティンバランド
  • ポップ
  • ¥1935

 

NAOtheLAIZA

【Profile】山形市出身のヒップホップ・プロデューサー/エンジニア。2012年に大阪から東京へ拠点を移し、DOBERMAN INFINITY、韻踏合組合、SHINGO★西成、般若、NORIKIYO、JAGGLAなど数多くの楽曲を手掛けている。海外アーティストとのコライトにも積極的に参加。

【Release】

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『CLASICK』(12月中旬発売)
DJ IZOH × NAOtheLAIZA × DIR YUKI MORI
(starplayers)

 

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