特集の最後は、VRサウンド制作プラグインを一挙紹介。ここまででブランドによってバイノーラル・プロセッシングのHRTFや精度に特徴があることが分かった。バイノーラルを基本にイマーシブからサラウンドまで、さまざまなVRサウンドの制作に役立つプラグインをセレクトしてみたので、自身のお気に入りを見つけてみてほしい。
PLUGIN ALLIANCE Dear Reality DearVR Pro
46種類のリバーブ・プリセットを内蔵するバイノーラル・プロセッサー
349.00ドル
バイノーラル・プロセッサー/3Dパンナー/リバーブを一つにまとめたプラグイン。バイノーラルやAmbisonicsだけでなく、5.0から13.1chまで合計26形式のマルチチャンネル・プロセッシングが行える。また46種類ものリバーブ・プリセットを内蔵し、REFLECTIONSセクションで空間の大きさや初期反射などを設定できるため、細かい音作りも行える。Mac/Windows、AAX/AU/VST対応。
WAVE ARTS Panorama 5
クロストーク・キャンセル機能搭載のバイノーラル・プロセッサー/3Dパンナー
18,000円
ダミー・ヘッドや人体を使って収集された複数のHRTFを内蔵するバイノーラル・プロセッサー/3Dパンナー・プラグイン。リバーブやリフレクションを採用している。高度なクロストーク・キャンセル技術を搭載し、ヘッドフォンだけでなく、スピーカーでもVRサウンドを実現することができる。また、部屋の大きさをフィート/メートル単位で設定でき、上下前後左右の壁の素材を選べる空間モデリング機能も備える。Mac/Windows対応で、AAX/AU/MAS/RTAS/VSTに準拠。
AUDIOFB Natasha
シンプルな操作性が特徴のバイノーラル・プロセッサー
29.00ドル
任意のオーディオ・データをバイノーラル・プロセッシングして再生/調整することができるプラグイン。360°パンニングや−40°/40°で高さを設定するelevation、空間サイズを変更するroom size、部屋の反響をコントロールするreflex、ハイパス・フィルターなどを搭載する。MacはAAX/AU/VST、WindowsはVSTに対応。
AUDIO EASE 360Pan Suite 3
AmbisonicsのVRサウンド制作用プラグイン・バンドル
オープン・プライス(市場予想価格:31,000円前後)
360Pan
VRコンテンツで利用されているAmbisonicsでの音響制作向けプラグイン・バンドル。ムービーと重ねてのパンや距離感、360Reverb(後述)を設定できる360Panのほか、映像と音声を視聴角度に合わせてプレビューでき、1〜2次Ambisonicsをバイノーラルに変換可能な360Monitor、Ambisonics用IRリバーブの360Reverb、同じくAmbisonics用のリミッター360Limiter、音響情報の存在と位置を示す360Rader、これと併用しながらAmbisonics音声と映像の角度ずれを補正する360Turnerを備えている。AVID Pro Tools|HD/Ultimate、STEINBERG Nuendo/Cubase、COCKOS Reaperに対応。
左から360Monitor、360Reverb、360Rader
360Limiter、360Turner
WAVES NX - Virtual Mix Room Over Headphones
音響空間をヘッドフォンで再現するモニタリング・ツール
12,000円
スピーカーでモニタリングしているかのような自然な奥行き、反射、広がりをヘッドフォン上に再現するというプラグイン。制作やミキシングの際、スピーカーからどう聴こえているのかをイメージしながら作業することができる。5.0/5.1/7.1chのサラウンド・システムや、Ambisonics B-formatをステレオ・ヘッドフォンでバイノーラルモニターすることも可能だ。WAVES独自技術により、コンピューターの内蔵カメラや同社NX Trackerを使ってユーザーの頭の向きと傾きを正確にトラッキングし、ヘッド・ポジションによるサウンドの変化まで反映できる。Mac/Windows、AAX/AU/VSTに対応。
FACEBOOK 360 Spatial Workstation
FACEBOOKが無償提供するVRサウンド制作プラグイン集
無償
Spatialiser
AVID Pro Tools|HD 12.8.2 Software以降にも付属する、VRサウンド制作プラグイン・バンドル。画面はそのうちの一つであるSpatialiserで、定位や距離をコントロールする。このほか映像と音声を同時にプレビューできるVideo Player、AmbisonicsやバイノーラルへプロセッシングできるConverter、ラウドネス・メーターなど全5種類を収録している。Mac/Windows、AAX/VST対応。
SENNHEISER Ambeo Orbit
老舗マイク・ブランドによるバイノーラル・パンナー
無償
SENNHEISERが無償提供しているバイノーラル・パンナー・プラグイン。3D空間での定位や広がりに加え、特許取得済みのClarityコントロールも搭載する。さらにバイノーラル空間の室内反響をシミュレートする機能も備えている。Mac/Windows、AAX/AU/VSTに対応。
STEINBERG VST AmbiDecoder/VST MultiPanner
STEINBERG Cubase/Nuendoに付属するプロセッサー/3Dパンナー
STEINBERG Cubase Pro / Nuendoに付属
VST AmbiDecoder、VST MultiPanner
VST AmbiDecoderは、Ambisonicsをヘッドフォンでのバイノーラル再生またはステレオおよびマルチチャンネル・スピーカー・システムでの再生用に変換するプロセッサー・プラグイン。ヘッドフォン・モードでは、YouTubeやFacebookなど4種類のHRTFアルゴリズムを選択できる。VST MultiPannerは、空間内における任意の場所に音源を配置できる3Dパンナー・プラグイン。これでAmbisonics出力した立体音場を、VST AmbiDecoderを経由してモニターするという流れとなる。
DSPATIAL Reality 2.0
最大48.2ch出力対応の3D音声コンテンツ制作パッケージ
オープン・プライス(市場予想価格:63,000円前後〜)
28種類のAAXプラグイン(AVID Pro Tools|HD/Ultimate対応)から成る没入型(イマーシブ)3D音声コンテンツ制作パッケージ。モデリングIRリバーブと物理モデリング技術を軸に開発されており、映像の背景に合わせた音空間をシミュレーションしながら登場人物などの動きに合わせた音像定位を実現することができる。 最大48.2chに対応するReality Builderから、ステレオ〜バイノーラル対応のReality VRまで4つのグレードが用意されているが、いずれもバイノーラル出力に対応。前バージョンでは3タイプだったHRTFが9タイプから選択可能となっている。
【特集】バイノーラルで作る音楽の未来