Photo:Hiroki Obara
8331Aはリバーブの奥行きが目に見えるようです
優秀なエンジニアが良い環境で処理してる感覚だと思いました
40年の歴史を誇るGENELECは、リスニング環境の問題を解決するシステムとしてSAM(Smart Active Monitoring)を提唱した。その中でも特に人気なのは、同軸構造による点音源を実現したThe Onesシリーズだ。この連載では、The Onesに対して関心を持つクリエイターに一定期間預け、SAMの注目機能であるGML補正とともにその実力を試してもらう。今回はnever young beachのギタリスト、阿南智史の自宅スタジオに、The Onesで最もコンパクトな8331Aを持ち込んでみた。
キックのアタックがスピード感ある音に
さまざまなアウトボードが用意された阿南の自宅スタジオ。以前はリビング・ルームに作業スペースを設けていたが、5畳ほどの部屋に移転したという。普段使っているモニター・スピーカーは3年ほど前に初めて買った7インチ・ウーファーの2ウェイ・モデルだ。
「どれを買ったらいいか全く分からなかったので、PAELLASで一緒に活動していたbisshi (b)のお薦めで、彼と同じものを買ったんです。でも、ほかのスピーカーでどう聴こえるのかは興味がありました。GENELECも旧モデルを探していたことがあって……サウンドをきちんと聴いたことはなかったのですが、カニエ・ウェストなど好きなアーティストが使っていたこともあり、気になっていたんです」
そんな阿南にとって、最新の8331Aはまさに未体験の音だったようだ。
「自分のスピーカーと比べて派手めで、リバーブなどが華やかに聴こえるというのが第一印象。それがGLM補正によって、まさに“リファレンス・モニター”という感じになりますね。キックのアタックが分かりやすい……エレクトロニック・ミュージックのクリエイターで愛用者が多いのも分かる気がします。普段使っているスピーカーだともう少しぬるっとした感じのアタックですが、それと比べてスピード感がある。それに、リバーブの奥行きが目に見えるようです。僕自身、リバーブ処理はそんなに得意じゃないと思っていましたが、優秀なエンジニアが良い環境を作って処理している感覚はこういうものなんだろうなと思いました」
部屋のチューニングと同様のことがGLMで行える
阿南は、自身が制作しているコンテンポラリー・ファンク系のトラックを聴きながら、さらにこう続けてくれた。
「GLMの補正を切って聴くと、エレキベースの150〜200Hzの膨らみが誇張されて聴こえましたが、補正を入れるとすっきり感じられました。GLM補正の効果を感じますね。本来、スピーカーの良さを引き出すには部屋のチューニングが重要で、高いスピーカーを買っても生かしきれないともったいない。そんなチューニングと同じような効果がGLMで得られるのは便利ですね」
そのほか、定位感についても気付いた点があったと阿南は語る。
「自分のこのトラックは、ステレオ感をワイドに振っていたんですが、そのワイドさを保ったまま、わざとらしくない感じで音が真っすぐ来ますね」
この点は、The Onesの同軸構造も関係しているだろう。今後1カ月で阿南がどんな発見をしていくのかも楽しみだ。
今回のテスト・モデル
GENELEC 8331A
オープン・プライス
(ダーク・グレー:市場予想価格278,000円前後+税/1基、ブラック/ホワイト:市場予想価格298,000円前後+税/1基)
同軸ツィーター+ミッドレンジ・ドライバーに、2基の楕円形ウーファーを加えた3ウェイ・ポイントソース構成のThe Onesシリーズのうち、最も小型のモデル。SAMテクノロジーにより、設置環境に合わせた自動補正が可能。大型ウェーブガイドの採用で、スウィート・スポットの拡大にも成功している
阿南智史
2014年からnever young beachのギタリストとして活躍。これまでに4枚のアルバムをリリース。最近作は5月リリースのシングル『サイダーのように言葉が湧き上がる』。以前はPAELLAS(2019年解散)にも参加。
■GENELEC製品に関する問合せ:ジェネレックジャパン
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