ミックス・バランスがフラットになるのは初めての経験
“このクオリティまでならできる”という自信にもなりました
Photo:Hiroki Obara
40年の歴史を誇るGENELECは、2006年にリスニング環境の問題を補正する技術としてSAM(Smart Active Monitoring)を提唱した。そのSAMを内蔵したモデルでも特に人気なのは、同軸構造による点音源を実現した3ウェイ・スピーカーのThe Onesシリーズだ。この連載では、The Onesを関心のあるクリエイターに一定期間預け、その実力を試してもらう。今回はDATSのフロントマンにして楽曲提供などでも活躍しているMONJOEに、The Onesの最小モデル8331Aを1カ月使ってもらった感想を聞いた。
ミックスの基準になるボーカルの出方
8331Aと向き合った1カ月の間、DATSの新作に加え楽曲提供、さらにはWeb CM用音楽など、多岐にわたる制作を手掛けていたというMONJOE。最初に設置&測定した状態が良好だったようで、特に8331Aのセッティングを変えることなく使っていたという。
「特にCM音楽の制作は自分でミックスまで行うのですが、ミックスを終えた段階でアナライザーで見るとミックス・バランスがフラットになっていました。これまではその段階で低域が出過ぎていることが多かったので、初めての経験でした。フラットな状態でミックスできているから、そこから高域を持ち上げたり低域を足したりといった作業がスタートできるわけです」
好奇心で、時折あえてGLM補正をオフにしてリスニングもしてみたそうだ。
「GLM補正を入れて曲を聴くとボーカルが前に出てくる……もちろんこのバランスが正しい状態なわけですが、そう聴こえました。それがミックスするときの基準になるというか、“こういう出方にしよう”という目論見になりますね」
もう一つ、MONJOEが8331Aについて気に入ったのは、同軸ならではの定位の良さだそうだ。
「僕はサビ前のリバース音などの定位感を、ステレオ・イメージャーをランダムにいじったりして際立たせることをよくしています。これまでは、プラグイン画面の表示を見て“この通りになっているんだろうな”とイメージしていただけでした。でも8331Aだと、画面のグラフ通りの定位と動きが、出音から体感できました」
ミックスしながら制作するスタイルに最適
こうしたクリエイター自身の作業では、トラック・メイクとミックスは不可分であることも多い。フラットなミックスになったという理由は、その点も関係しているようだ。
「ミックスしながら作るというか、同時にできるようになった気がします。今打ち込んでいるキックの低域が足りているかいないのかの判断も、8331Aの出音で判断できるからこそ、過剰にしていくこともできるんですよ」
MONJOEに限らず、近年はクリエイター自身がミックスして納品する形態が増えている。その中で信頼できるモニターの存在は大きいと彼は語る。
「クライアント・ワークが増え、自分でミックスまでするようになったのは最近なんです。その意味では、8331Aのおかげで勉強がはかどったというか、“このクオリティまでなら自分でもできる”という自信にもなったと思います」
今回のテスト・モデル
GENELEC 8331A
オープン・プライス
(ダーク・グレー:市場予想価格278,000円前後+税/1基、ブラック/ホワイト:市場予想価格298,000円前後+税/1基)
同軸ツィーター+ミッドレンジ・ドライバーに、2基の楕円形ウーファーを加えた3ウェイ・ポイントソース構成のThe Onesシリーズのうち、最も小型のモデル。SAMテクノロジーにより、設置環境に合わせた自動補正が可能。大型ウェーブガイドの採用で、スウィート・スポットの拡大にも成功している
MONJOE
4人組バンドDATSの中心人物であり、作曲/ボーカル/シンセを担当。R&Bからダンス・ミュージック、インディー・ロックまで幅広い楽曲センスを併せ持つ、気鋭アーティストとして注目を集めている
■GENELEC製品に関する問合せ:ジェネレックジャパン