DAWの普及、インディペンデントな制作スタイルの隆盛、SNSでのコンテンツ公開などで、さまざまなクリエイターが取り組んでいる“自宅でのボーカル録り”。コロナ・ウィルス以降、その必要性がますます高まっていると言えます。今回は、プロ・アーティスト20組の自宅ボーカルREC術を使用機材とともに一挙公開。ホーム・レコーディング初心者からアップデートを考えている人まで、Tips集として活用していただけると幸いです。
奥田民生
ノブが少なくてシンプルな機材が好き
歌録りでも何でも録音は速い方がいいから
宅録ではデモ用の歌録りから本チャン、ネット向けの音声収録まで全部やっています。エンジニアと共同作業することもあれば自分だけで完結させるときもあるんですが、もともと“一人多重録音”は趣味だったりもするし、機材にも関心を持ってきました。その機材については、見た目で選びます。例えば最近買ったのはUNIVERSAL AUDIOのチャンネル・ストリップLA-610 MKIIで、購入動機は“ノブの数が少ないから”。それは自分にとって重要で、あまりいろいろでき過ぎる機材は扱いがややこしいし、回路もシンプルな方が良いだろうと。前身と言えるUREIの1176や1178といったコンプも使っているから、好みも関係しているんでしょうけどね。
機材のシンプルさに通じる話として、歌録りでも何でも、録音は速い方がいいです。アイディアを即実行できないと次にしたいことを忘れてしまうし、やる気も無くなってしまうから(笑)。それに今は後から直せる部分が増えたので、録音は素早く、エディットやミックスには時間をかける、という方がいい。へたに聴こえても、ひずんでいても、曲に合っていて自分が気に入ればOKです。DAW内のデジタル・クリップはいただけませんが、アウトボードで少々ひずむくらいなら嫌な感じにはならないからね。
機材紹介
Dynamic Mic
SHURE SM58
長年、録音とライブの両方に使っています。中域メインの音質で、ハイエンドやローエンドが伸びているわけではありませんが、オケに入ったときに抜けてくるし、やっぱり聴こえ方が良い。高級マイクで歌を録って単体で聴くと“わぁ、すごく良い音!”とか“再現性が高い”と感じるでしょうけど、オケ中で欲しい帯域が抜けてくるかどうかは機種によりけりで、その点SM58は自分の声に合っています。またリーズナブルな価格も魅力で、耐久性が高いから故障しにくい。ビンテージ・マイクのような個体差は無いので、万一壊れても買い替えやすいです。
【デジマートで探す】
Compressor
UREI 1178
写真のラックの最上段にマウントしたシルバー・パネルのコンプ。最近買ったLA-610 MKIIと同じく、ノブが少なくて良いんです。昔からレコーディング・スタジオにあった機材で、使い慣れているから“こういう音にしたいときは大体こういうセッティング”というのが分かるし、プラグインと違って大雑把に使えるところが好きですね。サッと設定できて、“かけ過ぎた”と思っても破たんしない。使いやすい音が得られるんです。
録り音のトリートメント
UNIVERSAL AUDIO UAD-2のSSL 4000 E Channel Strip Collectionは、レコーディング・スタジオで使い続けてきたSSL SL4000Eシリーズのアナログ卓とそっくりなので、初めて見るプラグインよりもフットワーク軽く使えるんです。実機の再現性が高いかどうかは分からないけど、見た目的に慣れているってのがデカい。ボーカルにはEQセクションをよく使います。
奥田民生
ユニコーンを経て1994年にソロ活動を開始。数々のヒットを送り出すほか、井上陽水とのコラボ、PUFFYのプロデュースなど活躍。オンラインでゲストとつながりトークや演奏を繰り広げる“カンタンテレタビレ”やバーチャル背景で演奏する“カンタンバーチャビレ”などをYouTubeで公開中
【Recent Work】
プロ20組の歌録り機材&テクニック! 自宅ボーカルREC術